◎社会全体の空気が反左翼になっている(菅野完)
一昨日からの続きである。『週刊朝日』の二〇一六年六月二四日号に載った、「日本会議」関連の記事は、分析が十分でないという印象を持った。しかし、参考までに、この記事の最後の部分を、引用しておくことにしよう。
日本会議の影響力が及んでいるのは、単に政権に対してだけではない。前出の菅野〔完〕氏は、日本青年協議会の機関誌である月刊誌「祖国と青年」の内容を検証した結果、こんなことに気がついたという。
「『祖国と青年』のバックナンバーをつぶさに読んでいくと、毎年定期的に必ず扱っていた北方領土の話をある時期に突然やらなくなった。同じころ、世間が竹島や尖閣諸島の問題で騒ぎだしますが、『祖国と青年』がどこよりも早く火をつけていました。冷戦が終わってソ運を敵と言えなくなったら、今度は韓国や中国を持ち出してくる。『祖国と青年』に載った話が、数カ月後の『正論』や産経新聞に出てくる。いわば、ネタ本になっているのです」
源流の「生長の家」時代錯誤と批判
つまり、日本会議の中核である日本青年協議会の設定したアジェンダが保守陣営の論調を形成してきたというのである。
ただ、日本会議が実際に安倍政権に対してどれほどの力を持っているのかは、目下のところ意見が分かれる。【中略】
日本会議が安倍政権を陰から操っているという指摘もある。だが、菅野氏はそんな見方には異を唱える。
「安倍首相の側もどうすれば有権者の支持が得られるかを計算して、主体的に政策を選んでいる面がある。民主党に政権を奪われていた時代、安倍氏が売りにするテーマは経済政策に加え、民主党政権への有権者の反感を背景とした『反左翼』があった。それが日本会議の路線とぴたりと一致したことで、現在のような蜜月の関係になっているのでしょう。今の日本社会全体の空気が『反左翼』になっていることが背景にある」
日本会議との関わりを取り沙汰されている生長の家は、日本会議の主張する改憲右派路線は、現在の同会の信念とは全く異質であり、7月の参院選でも「与党とその候補者を支持しない」と表明。次のように警鐘を鳴らした。
〈公明党以上に、同会議は安倍首相の政権運営に強大な影響を及ぼしている可能性があります。(略)元生長の家信者たちが、冷戦後の現代でも、冷戦時代に創始者によって説かれ、すでに歴史的役割を終わった主張に固執して、(略)隠密的活動をおこなっていることに対し、誠に慚愧〈ザンキ〉に耐えない思い抱くものです。(略)はっきり言えば時代錯誤的です〉
安倍政権は日本をどこへ導うとしているのか……。
菅野完〈スガノ・タモツ〉氏のコメントと、生長の家の声明の引用を綴り合わせ、最後は、「安倍政権は日本をどこへ導うとしているのか」というありがちな問題提起で締めているが、感心しない。記者独自の分析、記者独自の主張を、もっと打ち出すべきではないのか。
それはともかくとしても、ここで紹介されている菅野氏の「今の日本社会全体の空気が『反左翼』になっている」というコメントは興味深い。
ところで、同記事の最後のところに、今月二七日に、「日本会議の真実」と題した「緊急復刊朝日ジャーナル」が発売されるという広告があった。一応、買っておくべきだと思った。
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