◎A級戦犯の遺骨と三文字正平弁護士
先月二一日および二四日のコラムで、新東宝映画『大東亜戦争と国際裁判』(一九五九)について触れた。この映画には、三文字弁護人という人物が登場する。演じているのは、若き日の御木本伸介〈ミキモト・シンスケ〉である。
この「三文字」という名前には、わずかに聞き覚えがあった。数日前、塩田道夫氏の『天皇と東条英機の苦悩』(三笠書房、一九八九)を再読して、ようやく思い出した。東條英機ら、処刑された七名のA級戦犯の遺骨を、ひそかに火葬場から持ち出したのが、この三文字正平〈サンモンジ・ショウヘイ〉という人物であった。
三文字正平は弁護士で、東京裁判では、小磯国昭の弁護人を務めている。
さて、『天皇と東条英機の苦悩』によれば、三文字正平らは、この遺骨を、その後、「三文字正輔」の名義で熱海の興亜観音に葬ったという。
昨年の夏に、知人二名が、この興亜観音を訪ねたと語っていたことを思い出し、そのうちのひとりであるO氏に、A級戦犯の遺骨のことを尋ねてみた。O氏曰く、興亜観音には、ホームページというものがあり、そこには、三文字正平らが、遺骨を入手した経緯が載っているという。
A級戦犯七名の処刑の様子、火葬された場所、遺骨入手の経緯、興亜観音の由来などについては、明後日以降、あらためて紹介する予定である。