礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

想へ皇国の大理想(大南洋唱歌)

2014-10-26 05:32:08 | コラムと名言

◎想へ皇国の大理想(大南洋唱歌)

 昨日の続きである。藤原草郎編『日本青少年歌曲集』(東邦音楽書房、一九四三)に載っている「大南洋〈ダイナンヨウ〉唱歌」は、二二番まである。本日は、その後半、一二番から二二番までを紹介する。

 大南洋唱歌(ツヅキ)
十二 米とチークの ラングーン
 仏教国の 名も高き
 ビルマの友よ 手をとりて
 共栄圏を うち建てん
十三 燃ゆる赤道 帯にして
 鉱脈の島 スマトラの
 油田はメナド パレンバン
 初陣雄々し 落下傘
十四 ジャワは常夏 花の島
 インドネシアの 民集ひ
 コーヒー 砂糖 ゴムにキナ
 港にひびく 船の歌
十五 水の都の バタビヤや
 ボイテンゾルグの 植物園
 沐浴涼し 川風に
 夕日も落ちて 影芝居
十六 旅はバリ島 チモル
 大小スンダ列島に
 みいつの光 輝きて
 見よオランダの 影はなし
十七 富める資源の ボルネオは
 石炭、石油、金、コプラ
 力を合はせ 開発の
 よろこび満つる 新天地
十八 高瀬貝採る セレベスの
 人手に似たる 面白さ
 姿はやさし メナド富士
 銀翼映ゆる 空の道
十九 世にも名高き 香料の
 モルッカ群島 おとづれて
 アラフラ海の 真珠採り
 船脚のばせ パプア島
二十 希望明かるき 島島を
 巡りてここに なつかしき
 大南洋の 学び舎に
 「君が代」歌ふ 少国民
二十一 グァム、大島を いちはやく
 傘下に置きて 皇軍の
 いよいよ強き 大布陣
 堂堂進む 軍艦旗
二十二 想へ皇国〈ミクニ〉の 大理想
 今こそ遂げて 新しき
 秩序のもとに 努むべし
 大南洋の 建設を  (ビクターレコード 四三三一-二番) 

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鴎のうたに送られて大南洋の船の旅

2014-10-25 06:17:12 | コラムと名言

◎鴎のうたに送られて大南洋の船の旅

 本日も、藤原草郎編『日本青少年歌曲集』(東邦音楽書房、一九四三)から。本日、紹介するのは、「大南洋唱歌」。この歌は、二二番まであるが、本日は、一番から一一番までを紹介。大南洋は、〈ダイナンヨウ〉とよむ。すでに死語である。

 文部省検定済 大南洋唱歌  くろがね会制定
一、富士よ桜よ 朝風に
 港を出でて 幾浬〈イクカイリ〉
 鴎のうたに 送られて
 大南洋の 船の旅
二、やがて香港 過ぎゆけば
 雲かと浮かぶ フィリッピン
 興亜の風に よみがへり
 緑もあらた 大マニラ
三、麻よ煙草よ 砂糖黎
 ダバオに拓く 農園に
 我がはらからの 意気たかし
 日の丸たてて 馬車はゆく
四、堅き護りの 海南島
 波間にのこる 思ひ出は
 御朱印船か 八幡船〈バハンセン〉
 祖先の雄図 しのぶなり
五、すぎし日露の 戦役に
 敵艦隊の ひそみたる
 カムラン湾の 仇浪も
 和みて米の サイゴンや
六、山田長政 名は朽ちず
 アユチヤに旧き 寺々や
 新興タイの 鐘の音に
 花新しき バンコック
七、ともに東亜を 守らんと
 盟約かたき 国ゆたか
 正義の念に 燃えて想つ
 若人タイぞ 頼もしき
八、輸送船団 粛々と
 征きしを想ふ 波の上
 マレー半島 コタバルの
 血染めの熱砂 風なきぬ
九、ゴムの林よ 錫の山
 砲煙絶えし 密林に
 今宵も清き 月の影
 まどかに結ぶ 民の夢
十、不沈誇りし 戦艦を
 藻屑と化せし タワンタンや
 いさをは薫る こゝかしこ
 ジョホール・バハル 空青し
十一、屍山血河の 激戦地
 ブキテマの丘 越えゆけば
 昭南港の日章旗
 厳然圧す 二大洋 【以下、次回】

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戦争する気で襷もきりゝ(日本盆踊り)

2014-10-24 04:30:22 | コラムと名言

◎戦争する気で襷もきりゝ(日本盆踊り)

 数日前、神田神保町の古書店で、藤原草郎〈フジワラ・ソウロウ〉編『日本青少年歌曲集』(東邦音楽書房、一九四三)という本を入手した。税込み二一六円だった。
 奥付がなく(というより、奥付の部分が糊付けされていて)、正確な発行年月日は不明。最終ページにある「覚書」の日付は、「昭和十八年一月六日」である。なお、同書は、国立国会図書館に収蔵されていない。
 この本には、全部で八二の歌の歌詞と楽譜が紹介されているが、本日は、「日本盆踊り」の歌詞を紹介してみよう。

 大日本青少年団撰定 
 日本盆踊り  竹野秋人作詞(大東亜レコード三〇八一番)
一、揃ろた揃ろたよ田植えの笠が
 お国奉公の
 お国奉公の 気も揃ろた
 ハヨイヨイヨイ ヨイトナ
二、戦争〈イクサ〉する気で襷〈タスキ〉もきりゝ
 鍬も鉄砲も
 鍬も鉄砲も 変りやせぬ
 ハヨイヨイヨイ ヨイトナ
三、風はそよ風稲穂はゆれる
 俺〈オラ〉が努力の
 俺が努力の 黄金波〈コガネナミ〉
 ハヨイヨイヨイ ヨイトナ
四、ひゞけ太鼓の音〈ネ〉も朗らかに
 唄へ皇国〈ミクニ〉の
 唄へ皇国の 豊〈トヨ〉の秋
 ハヨイヨイヨイ ヨイトナ

 インターネットを検索した限りでは、この歌の歌詞を紹介しているホームページあるいはブログはなかった。
 ただし、ホームページ「ポリドール狂時代」によって、この歌についての情報を入手できた。それによれば、この歌は、昭和一六年(一九四一)八月に発売されたポリドールレコードP-3081(黒レーベル)のA面に収録されている。作詞は竹野秋人、作曲は、飯田景応、演者は、関種子と波平恵弘、伴奏は、日本ポリドール管弦楽団、振付は、藤蔭静枝だったという。ちなみに、B面に収録されているのは、「みんな輪になれ」。この歌も『日本青少年歌曲集』に載っているが、歌詞から見て、やはり盆踊り唄のようである。
 上記引用中に、「大東亜レコード」とあるのは、株式会社日本ポリドール蓄音器商会が、一九四二年(昭和一七)に、社名を「大東亜蓄音機株式会社」に変更したのにともない、邦楽部門のブランド名を「大東亜レコード」に変更したからである。これは、ウィキペディアの記事に拠る。ただし、洋楽部門は、引き続きポリドールレコードのブランド名を使用したという。

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やらせる、納得させる、それが駄目なら強制する

2014-10-23 08:09:37 | コラムと名言

◎やらせる、納得させる、それが駄目なら強制する

 今月一九日の日本経済新聞の「リーダーの本棚」欄には、地方創生相の石破茂〈イシバ・シゲル〉氏が登場している。
 坂本英二編集委員の質問に答え、石破氏は、これまでの読書遍歴を語る。

 田中美知太郎の『人間であること』は、大学を出たころに読みました。うちの父親は私と49も年が離れ、鳥取県知事や参院議員を務めていたのであまりいろいろ教えてくれる人じゃなかった。でも田中美知太郎さんが本当に好きで「この本は面白いぞ。読んでおけ」と教えてくれました。
 例えばこういうくだりがある。
「日本では主権在民などと言いますが、一向に主権在民ではない。『生活が苦しい』とか『月給を上げろ』とかそんなことばかり言っている。こんなことを言うのは決して主権者ではない。臣下臣民、サブジェクト、家来の立場です」
 清水幾太郎さんの『戦後を疑う』も好きです。政治家の資格って何かというくだりがあって「国民が厭がっているもので、しかし、国家の将来にとって絶対に必要なもの、そういうものがあるでしょう。それを国民にやらせる、納得させる、それが駄目なら強制する、それが政治家の仕事だと思います」と書いてある。
 いずれも反発したくなるけど、実は本質じゃないか。自分が為政者ならどうするかを考えるのが主権者であって「消費税は上げないで」「道路は無料がいい」「子ども手当は配って」「法人税はまけてね」と、あれやって、これやってと言うのは主権者じゃないというのは本当だと思います。

 清水幾太郎の『戦後を疑う』は、一九八〇年刊(講談社)、田中美知太郎の『人間であること』は、一九八四年刊(文藝春秋)である。要するに、政治家「石破茂」の根底は、このころに形成されたと見てよいだろう。
 それにしても、清水幾太郎を挙げるとは。清水幾太郎は、戦前・戦中・戦後・一九七〇年代末以降と、その時々の時勢において、カメレオンのように思想を変え、そのことによってジャーナリズムの注目を浴びようとしてきた無節操な「思想家」である。
 たとえ人間として無節操であっても、その専門的領域(清水の場合は社会学)において、不滅の業績を残しているというのであれば、まだ救われるが、はたして彼に、そういう業績があるのか。もし清水が、後世にその名を残すとすれば、すぐれた社会学者としてではなく、世間を騒がせた無節操な「思想家」としてであろう。
 清水幾太郎の『戦後を疑う』は、彼の無節操を最もよく象徴する作品である。とはいえ、同書が世論や風潮に与えた影響は計りしれないものがあった。若き日の石破茂氏の愛読書となったというのも、そうした影響の一事象であったと言える。
 石破氏によれば、清水は同書で、「国家の将来にとって絶対に必要なもの、そういうものがあるでしょう。それを国民にやらせる、納得させる、それが駄目なら強制する、それが政治家の仕事だと思います」と書いているという。そういう考え方は、たしかにあるだろう。しかし、清水は、どういう学問に依拠して、これを言っているのか。あるいはどういう思想的遍歴を踏まえて、これを言っているのか。このあたりは、十分に検証されなくてはならない。
 石破氏が、個人として、清水幾太郎の考え方に賛同するのは自由だが、公人としての石破氏が、「リーダーの本棚」といった公の場で、清水幾太郎を援用するのであれば、その前に、清水幾太郎が援用するに足る「思想家」か否かについて、つまり清水幾太郎の人物と思想について、検証しておく必要があったのではないだろうか。
 なお、石破氏は、引用部分の最後のところで、「あれやって、これやってと言うのは主権者じゃない」と述べている。氏が、その「要求」の例として「消費税は上げないで」とともに、「法人税はまけてね」を挙げていることに注目したい。前者は国民・消費者の要求の例であり、後者は財界の要求の例である。つまり氏は、「国家の将来にとって絶対に必要なもの、そういうものがあるでしょう。それを国民にやらせる、納得させる、それが駄目なら強制する、それが政治家の仕事だと思います」という清水の発言を支持すると同時に、「国家の将来にとって絶対に必要なもの、そういうものがあるでしょう。それを財界にやらせる、納得させる、それが駄目なら強制する、それが政治家の仕事だと思います」ということも言おうとしているようだ。日本経済新聞を購読されている財界の諸氏は、この点に気づかれたかどうか。

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歴史は動き始めると早足になる

2014-10-22 07:37:05 | コラムと名言

◎歴史は動き始めると早足になる

 本日の日本経済新聞のコラム「大機小機」に注目した。見出しは「反シナトラ・ドクトリン」、署名は、(手毬)。
 コラムはまず、「ブレジネフ・ドクトリン」および「シナトラ・ドクトリン」という言葉について説明する。

 あの秋の東欧は、ざわついていた。ポーランドでは、独立自主管理労組「連帯」の自由選挙での圧勝を受け、9月に非共産党政権が誕生した。
 ハンガリー政府はオーストリアとの国境の有刺鉄線を撤去した。東ドイツ国民が休暇旅行を口実に大挙して押し寄せ、開放された国境から西側へ出国していった。
 この事態に東独のホー・ネッカー国家評議会議長ら東欧の守旧派は、ソ連の介入を求めた。68年にはチェコの「プラハの春」の改革をソ連の戦車が押しつぶした。社会主義陣営の利益のために一国の主権は制限できるという制限主権論は「ブレジネフ・ドクトリン」と呼ばれていた。
 ところがソ連国内の改革「ペレストロイカ」一で手いっぱいのゴルバチョフ政権は動かなかった。米国のテレビに出演したソ連のゲラシモフ外務省情報局長は、フランク・シナトラの大ヒット曲「マイ・ウェイ」を引き合いに出し、東欧諸国の「わが道」を容認する新方針を「シナトラ・ドクトリン」と呼んだ。25年前の10月25日のことだ。

 続いてコラムは、話題を今日の香港情勢に振り、中国政府は、マイ・ウェイを許さない「反シナトラ・ドクトリン」を貫くだろうと予想する。その一方で、中国が香港などの「わが道」を認めるときは、「共産党一党独裁体制の終幕も近い」と指摘する。
 こうした情報あるいは分析は貴重だが、今回、このコラムに注目したのは、その点ではない。このコラムの書き出しは、「閣僚の辞任ドミノは止まるのか」であった。また、最後は、「歴史は動き始めると早足になる」という言葉で締め括られている。
 すなわち、このコラムは、「反シナトラ・ドクトリン」を話題に掲げながらも、日本の政治情勢について、暗にひとつのメッセージを発しようとしたのではないか。すなわち、「自民党一党独裁体制の終幕も近い」というメッセージである。
 そう思って本日の同紙紙面をながめると、「沖縄知事選、公明は自主投票/自民、選挙戦厳しさ増す」、「派遣法改正審議に遅れ/2閣僚辞任で野党攻勢」などの見出しがある。
 日経を購読し始めて四、五年。最近ようやく、同紙を読むコツがつかめてきたような気がする。

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