19世紀末。北イタリア。
パティスティは、ドン・カルロ神父のたっての勧めで、息子のムネクを小学校にあがらせる決意をした。「子供を学校にやるなんて聞いたら、みんなが何て言うだろうか・・・?」
農村は貧しく、パティスティ一家が他の数家族と一緒に小作人として住みこんでいるこの農場の土地、住居、畜舎、道具、そして樹木の一本一本に至るまで、ほとんどすべて地主の所有に属し、小作人があげる収穫の2/3が地主の物となる。
秋になって最初の霧が出ると、冬支度がはじまる。とうもろこしの計量の日が来ると、けちのフィナールは、例年のように、馬車のひきだしにいっぱい小石をつめこんで計量をごまかした。その年の収穫は豊作だった。地主は蓄音器を買った。
ルンクの後家さんは、夫に先立たれた後、洗たく女をして6人の子供たちを養っている。牛の世話と耕作は長男のぺピアーノとアンセルモおじいちゃんがうけもち、上の女の子ふたりは村にいって洗たくの注文をうけてくる。ペピーノはまだ15歳だが、力がある。この冬から彼は、トウモロコシ製粉工場の力仕事をつとめ、家計を助けることにした。
けちのフィナーレが息子のウスティを叱りつけ、つかみあいの親子喧嘩をするのは日常茶飯事で、喧嘩するだけのたいした理由はないのだった。
ブレナー一家のマッダレーナは、美しい娘だった。紡績工場につとめている彼女は、ある夕方、工場で知り合ったステファノ青年に送られて家路を帰ってくる。これは彼女のひかえめな意志表示である。彼女の両親も、農場の人々も何も言わない。ふたりの交際は、みんなに認められたのである。
→まだ続きます。
パティスティは、ドン・カルロ神父のたっての勧めで、息子のムネクを小学校にあがらせる決意をした。「子供を学校にやるなんて聞いたら、みんなが何て言うだろうか・・・?」
農村は貧しく、パティスティ一家が他の数家族と一緒に小作人として住みこんでいるこの農場の土地、住居、畜舎、道具、そして樹木の一本一本に至るまで、ほとんどすべて地主の所有に属し、小作人があげる収穫の2/3が地主の物となる。
秋になって最初の霧が出ると、冬支度がはじまる。とうもろこしの計量の日が来ると、けちのフィナールは、例年のように、馬車のひきだしにいっぱい小石をつめこんで計量をごまかした。その年の収穫は豊作だった。地主は蓄音器を買った。
ルンクの後家さんは、夫に先立たれた後、洗たく女をして6人の子供たちを養っている。牛の世話と耕作は長男のぺピアーノとアンセルモおじいちゃんがうけもち、上の女の子ふたりは村にいって洗たくの注文をうけてくる。ペピーノはまだ15歳だが、力がある。この冬から彼は、トウモロコシ製粉工場の力仕事をつとめ、家計を助けることにした。
けちのフィナーレが息子のウスティを叱りつけ、つかみあいの親子喧嘩をするのは日常茶飯事で、喧嘩するだけのたいした理由はないのだった。
ブレナー一家のマッダレーナは、美しい娘だった。紡績工場につとめている彼女は、ある夕方、工場で知り合ったステファノ青年に送られて家路を帰ってくる。これは彼女のひかえめな意志表示である。彼女の両親も、農場の人々も何も言わない。ふたりの交際は、みんなに認められたのである。
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