ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』-ライブ配信(3)
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2021年2月7日(日)、東京国際フォーラム12時30分~ライブ配信を視聴しました。生演奏、開演前音合わせの音色が劇場内に流れている臨場感、みりおちゃんエドガーが振り返ったとき、いっちゃん(一路真輝さん)に舞台で再会した時のように、勝手に一方的に懐かしい人に会ったような安心感。今自分のいる場所から1時間40分ぐらいのところでリアルタイムに上演されているといると思うだけで嬉しいです。遠からず家賃の安いところを求めてまた移動しなければ生きていけないという現実を今はまだ横において視聴しました。
カンパニーのみなさん、ものすごく元気で、みりおちゃんの言葉通り、1月16日の梅田芸術劇場公演よりもさらにパワーアップ。何役も演じているアンサンブルメンバーの身体能力の高さと歌のうまさも素晴らしくてあっという間に終わりました。みりおちゃんの、疲れるどころかさらに艶をまし魂がこもった歌声は声量豊かで素晴らしかったです。こちらの方をDVD収録で販売してほしいぐらい。カーテンコールはゆるゆるのみりお節が今日も健在。「こんなご時世に劇場まで足をお運びくださいありがとうございます。そして今日はライブ配信が行われています。画面の向こうのみなさま~」の呼びかけに客席が拍手すると、「みなさんじゃないですよ」とばっさり言うところがみりおちゃんらし過ぎました。「劇場でもまたお会いしたいです」と。
フィナーレないかわりに、恒例となった?みりちばタイム。一人で登場したみりおちゃんが「千葉くんを呼びたいと思います」で客席からなぜか笑い。「なんで笑うんですか?」から「アラン~」の声が絶妙にやさしくて可愛い。千葉くん、緊張しながら「ライブ配信のいいところを話しましょう」と一生懸命なところが好感もてました。毎回何を話そうかとテーマを考えているのかな。ちょっと間ができつつ、ポーツネル男爵夫妻が現れるとマダム・ブラヴァツキーの「水晶が曇った」のところ、どういう仕掛けになっているんでしょうかねとか、降霊術会の場面で出ていないので、みりおちゃんは配信でみてみたいテーブルが揺れるところどうなっているのか気になるとか、千葉くんも袖からいつもみているんですけどどうなっているんでしょうねなどの話。「おかわりされたい方は次回エドガーアングルバージョンとアランバージョン~」というところをみりおちゃん間違えて言い直しから、最後はふたりで「本日はありがとうございました」で締めくくり。ずっと続いていくわけではないのがさみしいですがずっと続いていかないから今が大切に思えるのかな。
望んでヴァンパネラになったわけではない、親に捨てられ、たった一人の家族である妹のメリーベルを守るため一族に加わったたのに、メリーベルを守ることができず、永遠の時を一人で生きていかなければならなくなったエドガーの孤独に今の自分で共鳴して涙なりました。リアル男子の中ではみりおちゃんの細さがより際立っているのもあるかもと思いますが、小西さんのポーツネル男爵に抵抗する姿が痛々しく思えました。
一幕の終わりのエドガー、
「光ある未来に背を向け
愛の無い世界に生きる
凍てついた風にさらされ
一人 孤独を抱きしめて
人は愛が無くてはいきてはいけない
誰かを愛し 愛される日々に
焦がれ 求めて 彷徨う」
そして、二幕の終盤、クリフォードに銃を向けられたあーちゃんメリーベルの「エドガー!」と呼ぶ叫び声に駆け付けた時メリーベルは撃たれて消滅していました。
エドガー「僕は間に合わなかった」
クリフォード「消え去れ!悪霊!(十字架を突き立てる)」
エドガー「そんなものは怖くない。妹は弱かったんだ」
クリフォード「お前たちは実在しない」
エドガー「実在している。あなた方よりずっと長い時間を!(銃を拾う)あなたがメリーベルを撃った銃だ。何か言い残すことは?」
クリフォードに銃を向けるエドガーの孤独と怒り、心の中で血が流れている表情が痛々しかった。
クリフォード「お前たちは何のために・・・何故生きてそこにいるのだ」
エドガー「何故いきているのか?それがわかれば」
クリフォード「この悪魔!」
エドガー、クリフォードを撃つ。
エドガー「創るものもなく
生み出すものもなく
移る次の世代に託す遺産もなく
長い時を 何故こうして生きているのか
少なくとも 僕は
ああ 少なくとも僕は・・・♪」
ポーツネル男爵夫妻も撃たれ命尽きて、老ハンナと大老ポーが迎えにくると消滅してしまいました。気がついたときエドガーはひとりぼっちになってしまいました。
エドガー「幕だ
全ては終わった
愛する家族は もう誰もいない
もうメリーベルのために
あの子を守るために 生きる必要もない
僕は自由 僕はこの世でただひとり
僕に残されたもの それは・・・♪」
エドガーが永遠の時を共に生きる相手として選んだのはこの世で行き場をなくしたアラン。ポーの一族になることを決意した千葉くんアランの孤独もより伝わってきて、二人の魂が共鳴していくに至るプロセスがわかりやすくなったと思いました。
ねねちゃんシーラとみりおちゃんエドガーの、ヴァンパネラとして生きていかなければならない茨の道を歩んでいる感に満ちた表情と、獲物を狙い定めた時の血に飢えた、生きていくために逃すまいとする表情との切り替えがよりリアルでぞくっとしました。シーラの人生、よく聞いていると10代で愛のない結婚して男爵に見初められて駆け落ちしてとけっこう壮絶、その美しさでクリフォードをたぶらかそうとする人たらし的な雰囲気が見事でした。ねねちゃんシーラの首の細さと透き通るような白い肌の説得力よと思いました。それで幸せなの?と問いかけるエドガーに「なぜ?」って聞くときの、なんでそんなこと聞くの、わたしは男爵と一緒になれて幸せなのよ感が絶妙で素晴らしい。
1月16日のライブ配信で気になった田中なずなさん、幼いエドガー、スコッティの村の娘、花売り娘ディリーの演じ分け、見つけられました。一幕でスコッティの村の村長、村役人が二幕ではアランのおじさん、ジェインのお父さんになっていたのかな。カーテンコールでこれだけしかいらっしゃらないのかとびっくりするぐらい、何役もの演じ分け。ブラックプールのホテルの支配人、どなたかな。歌うま、存在感抜群。
かなめさん(涼風真世さん)の老ハンナのよりドスのきいた歌声と表情、マダム・ブラヴァツキーの怪演ぶりもさらにパワーアップ、涼風さんだと知らないでみたらほんとに怖いと思うかも。マダム・ブラヴァツキーの声色の使い分け、さすがすぎ。なりきりぶりがこれはかなめさん、すごく楽しみながらやっているんだろうなと思いました。かなめさんがトートを演じたらどうなっていたのだろうと時々思うことがあります。妖精タイプの男役と言われたかなめさんの人外感もまた永遠。福井晶一さんの大老ポーの見事な歌声と存在感、オルコット大佐との演じ分け、それぞれのなりきりぶりもとっても楽しそう。どちらの髭が長いかご自身の中で競っていらっしゃる感。
あーちゃんメリーベルの水車が「くるくる回る」の歌声とリボンたっぷりのピンクドレスに帽子がリアルフランス人形で可愛いらしすぎるとかも書きたいですが長くなったので今はこのへんで。
配信、お手頃価格とはいえ、何回もみるわけにはいかない。でもこの世にいる間だけだしという葛藤。明日に向けてまた気温急降下中? ちょっと寒気がするだけで恐怖感をもってしまいます。キキちゃんが昨日無事にやってきたし、『アナスタシア』の前に今週も仕事つらいですが明日はまだわたしの時間。まだ死ぬわけにはいかない、なんとか生き延びていくという強い気持ちを持って生き延びていかねばと思います。