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たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

『ウィーンの森の物語_中央の人々と生活』より-外国人労働者をめぐる問題

2024年04月06日 00時57分41秒 | 本あれこれ


「西ヨーロッパ諸国は、長い資本主義の歴史をもっている。それによって物質的に豊かになった。そのうえ、近世重商主義の時代から世界の富を西ヨーロッパに集めた。現代では、アメリカや日本を除いても、西ヨーロッパ諸国は賃金も俸給も高い。だから西ヨーロッパ諸国以外の人々は、経済生活で西ヨーロッにひきつけられる。それは、いわば必然である。こうして大量の労働力として彼らは西ヨーロッパに流入する。

 オーストリア人は事務所におり、よい職場には外国人はいない。例えば、銀行に外国人はいない。最近、薬局に数人の外国人が採用されたが、そこではいつも喧嘩が起きているという。オーストリア・ドイツ人はいい職場にいるし、外国人は逆に下の階層にいる。オーストリアでは、銀行員、薬剤師、医者、経営者、家主、教師、官僚、重役は、ほとんどドイツ人である。そして外国人を安く働かせる。例えば、道路掃除、雪かき、家事手伝い、子守、売子、道路工事、建築労働、スーパーのレジ、運転手、工場労働、レストラン、看護婦である。単純作業の工場労働は、8割が安い外国人労働者である。ヨーロッパではどこでもそうだ。

 日本人のM先生の家主は大きな家に住んでいる。そして息子がその家の管理人をして、コロンビア女性と結婚している。彼女が帰郷してから、コロンビア人をたくさんつれてきた。友人、親戚で、9人もである。彼らは一つの住居に住んでいる。オーストリアで稼げば、コロンビアで働くより賃金がずっといいからだった。彼女はそのうちの二人を就職させた。M先生は、「オーストリアは安い賃金で外国人を働かせている」と指摘する。

 ウィーンで、新聞売子のような肉体労働はオーストリア人はやらない。そうした職種につくのは、インド人が多い。昔は、例えば、『クーリエ』の売子は、3シリングの新聞を売って1シリングの収入をもらっていた。いまは7シリングになっているから、2シリングの収入かもしれない。彼ら外国人労働者は、だいたい月6000シリング(8万円)を稼いで、生活を切り詰め、安い部屋を借り、故国に3000シリングを送金しているそうだ。月3000シリングの生活は苦しい。 

 外国人はヤミ労働をする。市民権か労働許可証をもたないと、ヤミ労働になるわけである。それは一層、低賃金となる。そして、労働許可証や市民権を得るには大変である。これらのヤミ労働は経済統計には現れてこない。こうしてオーストリアでは、実際の肉体労働は外国人にやらせ、自国民はいい給料、長い休み、短時間労働を享受している。ヨーロッパの短縮で有名なのは、これが大きな原因である。外国人労働者がいなければ、ヨーロッパは経済的につぶれてしまう。それなのに、外国人を低く見ている。一方、オーストリアでは、ドイツ人だけは二重国籍をとれる。

 ヨーロッパは新しい移民時代を迎えている。アジア、アフリカ、ラテン・アメリカの第三世界から膨大な移民がやってくる。オーストリアには、旧ハプスブルク帝国には、もともと多くの外国人がいたのに、それに輪をかけている。第三世界には貧困が、ヨーロッパには富と文化があるので、強い力でヨーロッパは人をひきつける。そしてヨーロッパのその富と文化は、初めから第三世界の搾取でできあがっていたのだが。」

(倉田稔『ウィーンの森の物語-中央の人々と生活』NHKブックス、1997年4月25日第一刷発行、150-152頁より)

 

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