行雲流水

阿島征夫、一生活者として、自由に現代の世相を評す。時には旅の記録や郷土東京の郊外昭島を紹介する。

春闘、これまでまずまずの回答

2023-04-07 22:55:12 | 労働

連合が5日、これまでの春闘回答をまとめた。3月の集中回答で金属労協の電機、自動車では満額回答が続出して労組は喜んでいるが、電機などは4%程度の要求だったので、要求が低かったとの見方もできる。JALのように要求以上の回答が会社から出たという珍現象も、笑ってしまう。

連合の回答集計では平均賃金方式で回答を引き出した 2,484 組合の加重平均は 11,114 円・3.70%(昨年同時期比 4,795 円増・1.59 ポイント増)、うち組合員1000人以上の大企業は11,559円・3.74%(同5,033円1.61ポイント増)、組合員 300 人未満の中小組合 1,528 組合の加重平均は 8,554 円・3.42%(同 3,429 円増・1.36 ポイント増)となった。いずれも、比較可能な 2013 闘争以降で最も高い。

この結果を、最低賃金の上昇に繋げるかが今後の課題だ。今や働く人の4割は時間給を基本とする非正規雇用者で最賃が上がれば即影響する比率は21年度は16.2%と12年度から11ポイント超上がっている。雇用者数は約6000万人内約2400万人が時間給対象とすると、388万人の時間給が増えることになる。岸田首相も最低賃金の全国加重平均を22年度の961円から4%高い1000円に引き上げる目標に言及した。国内景気に与える影響は大きい。

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男女間賃金格差はちょっぴり改善

2023-04-05 22:06:44 | 労働

春闘の報道は多いが、厚労省が毎年実施している賃金構造統計調査2022についてはあまり見かけない。
同調査によるとフルタイマーの男女間の賃金格差は前年より0.5ポイント縮まり以下のように女性の賃金は男性の75.7%(前年は75.2)になった。女性の賃金は2011年にようやく男性賃金の7割になり、徐々に改善されてきた。
男性 342,000 円(前年比同 1.4%増)(年齢44.5 歳、勤続年数13.7 年)
女性 258,900 円(前年比同 2.1%増)(年齢42.3 歳、勤続年数 9.8 年)

企業規模での格差は拡大している。
大企業348,300円(=100)中企業303,000円(87.0、前年88.3)小企業284,500円(81.7、前年82.4)

雇用形態で見ると正社員と正社員以外との格差は縮小しているが、男女別では異なる。
正社員328,000円(=100)正社員以外221,300円(67.5、前年67.0)
正社員男性353,600円(=100)正社員以外247,500円(70.0、前年69.2)
正社員女性276,400円(=100)正社員以外198,900円(72.0、前年72.2)

 産業別に賃金をみると、男女計では、「電気・ガス・熱供給・水道業」(402.0 千円)が最も高く、次いで「学術研究,専門・技術サービス業」(385.5 千円)となっており、「宿泊業,飲食サービス業」(257.4 千円)が最も低くなっている。  

以上フルタイマーだが、パートタイマー(実働14.9日、1日あたり5.2時間)を見ると
時間給は1367円、前年比1.2%減、企業間格差は大企業1307円(=100)中企業1493円(114)小企業1339円(102.4)と中小企業の時間給は大企業より高い。

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どうする春闘 実質賃金4.1%減少

2023-03-07 14:25:13 | 労働

厚生労働省が7日発表した1月の毎月勤労統計調査によると、1人当たりの賃金は物価変動を考慮した実質で前年同月比4.1%減った。10カ月連続の減少で、1月としては遡れる1991年以降で過去最大の減少幅だった。物価上昇が歴史的な水準に達し、賃金の伸びが追いつかない状況が続いている。

政労使挙げて経済再生には賃金増が必要と言っているし、海外の投資家も賃金が充分上がらないかぎり日本株は買えないと史上初の言動だ。このブログでは1月24日、最低でも5%の賃上げが必要だと書いたが、当に現実味をおびてきた。連合の産別では交渉が最終局面に入っていると思うが、先行している会社の賃上げを参考に労使の努力に期待したい。これまで先行賃上げを表明した会社はホンダ、塩野義製薬、イオン5%、島津製作所5.7%、サントリー、SUMCO、ハウステンボスは6%、日本生命7%、森精機8%、日揮10%。

頑張らなければいけない金属労協の中核電機連合の要求が日立が3.9%と4%未満、すでに実質賃金は回復できない。完全に情勢を誤った判断、指導部の資質が問われる。連合は3日、2023年の春季労使交渉で傘下の労働組合が要求した賃上げ率が平均4.49%だったと発表した。連合の5%要求基準は満たされてない。芳野会長の指導不足だ。

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米国ビッグテックの解雇、厳しい現実

2023-01-26 23:39:24 | 労働

このところ、マイクロソフト、メタ、アマゾン、セールスフォース、グーグルなど競って従業員大量解雇を発表している。グーグルの親会社であるアルファベットは景気減速への懸念から20日12,000人の雇用を削減し、「人工知能のように.将来に向けて中核となる製品とテクノロジーに再び焦点を合わせる必要がある」と最高経営責任者(CEO)のSundar Pichai氏は述べた。

今回の人員削減は同社にとって過去最大であり、世界の労働力の約6%に相当しする。デジタルサービスの需要が急増したパンデミックの間にアルファベットが急速に雇用を拡大しすぎたためともピチャイCEOは付け加えた。
業界を追跡するウェブサイトであるLayoffs.fyiによると、テクノロジー企業は19万人以上の雇用を削減している。この動きは、豪華な特典と高給で従業員獲得に動いたテクノロジー業界の急速な拡大の期間の終わりを示している。

それにしてもパンデミック中に雇いすぎた、今や景気後退に入ったので解雇するとは米国らしい。アルファベットは巨額の約1兆円の利益を上げているのにAI分野の競争力を更に高める人材投入原資のために解雇に踏みきった。1,100人の組合員を代表するアルファベット労働組合は、「何十億ドルもの利益と役員報酬が手つかずの状態で、従業員をまな板にのせることは許せない」と組合の執行委員長は声明で述べた。少数組合ではストを打つことも出来ない。しかも金曜深夜に解雇は決定され、対象従業員が眼を覚めたときにはグーグル職場へのアクセスはできなくなっていたという無情。

アルファベットによると、解雇への補償は米国の従業員は16週間の給与と、グーグルで働いていた年数分につき2週間の給与の退職金が支給される。また解雇された労働者は、6か月間の医療保険が適用される。その間に次の仕事を探せと言うこと。

日本の有名証券アナリストは「解雇されたらすぐ転職できる心配ない、転職紹介会社が儲かる」と評しているが、厳しい現実だ。

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春闘賃上げは最低でも5%

2023-01-24 14:44:28 | 労働

1月23日、連合と経団連のトップ会談が春闘について行われた。毎年の行事だが今年はいつもと違い、労使の見解がほぼ同じだった。連合の芳野友子会長は、賃上げについて「これまでの延長線上での議論にとどめることなく、労使が力を合わせて、日本の未来をつくりかえるターニングポイントとすべきだ」と強調。経団連の十倉雅和会長も「物価動向を特に重視しながら、企業の社会的責務として賃金引き上げのモメンタム(勢い)の維持、強化に向けた積極的な対応を呼びかけている」と言明した。

昨年12月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比4・0%増と、41年ぶりの上昇率となり、物価の影響を考慮した「実質賃金」は同11月まで8カ月連続で前年割れが続いている。一方岸田首相は国会での施政方針演説で賃上げに言及し、「物価上昇をこえる賃上げが必要と」表明、こうした状況を踏まえると、連合の賃上げ目標「5%程度」は歯止めに近い水準だ。
かつての春闘では物価上昇率+定期昇給が妥結歯止めであったことを考えると4%+定期昇給平均2%=計6%が望ましい水準で、すでにサントリー、SUMCO、ハウステンボスは6%、日本生命7%、森精機8%、日揮10%と高水準引き上げを発表している。これも春闘以前に異例の企業対応だ。

昨年の春闘での賃上げ率2.2%からは様変わりだが、インフレを克服するには最低でも5%の賃上げが必須だ。そして重要なのは最低賃金にこれが連動することだ。欧米では5%の賃上げはごく普通のことで、欧米やシンガポール、韓国に差がつけられないように知恵を絞ることが必要。

OECD各国の平均賃金(2020年・ドル換算)日本は22位黄色

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リスキリング+副業で年収300万円

2022-12-13 17:31:19 | 労働

dodaのパーソルキャリアの調査によると、副業年収300万円以上稼ぐ副業者の約6割が「リスキリング」を実践している。同調査「副業者のリスキリング実態調査」によると、副業者に対して「リスキリングに取り組んでいるか」尋ねたところ、56.0%が取り組んでいると回答。リスキリング実践者は、副業年収300万円未満が48.0%、300万円以上が58.7%、副業年収によってリスキリングへの取り組みに一定の差があるとしている。リスキリングしている領域は、副業年収300万円未満は「マーケティング・PR」(25.0%)、副業年収800万円以上は「経営企画」(33.3%)を学んでいる。リスキリングへの取り組みによって副業年収に差がある。

リスキリングの先進国デンマークでは公共の職業訓練校でいつも3000以上の訓練が無料で受けられ、社会人の28%が過去1ヶ月以内に何らかのリスキリングを受けている。メニューはいつも見直されており、技術の進歩に追いつくようにプログラムされている。

日本もかつての労働省以来の組織が厚労省に受け継がれているので活性化し、何時失業してもリスキリングが可能になるようにし、賃金格差を縮めて貰いたい。かつて高度成長時代は世界に冠たる企業内訓練(注)が中心だったが、いまや合理化?で民間企業に任せていてはリスキリングは普及しない。政府の陣頭指揮が求められる。

注、1970後半~1980年代の日米通商摩擦で、長い交渉の結果構造協議を持って解決しようということになった。1990年11月私自身、日米構造協議の一環で労働省チームのメンバーとして、高梨晶教授や新日鐵の阿南副社長(いずれも当時)らとワシントンに乗り込み、日本の大企業の競争力の秘密は人材育成に有り、米国企業は見習えと圧力をかけた記憶がある。

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目に余るイーロン・マスクの労働法無視

2022-11-29 18:11:30 | 労働

経営者として天才的と評価されてきたテスラのイーロン・マスク、テスラをEVのトップメーカーに押し上げ、時価総額ではトヨタやGMを束にしても上まわる。スペースXでは、NASAができないコストカットでロケットをうちあげ、宇宙ステーションとのシャトル便も可能にした。これができなかったらロシアのソユーズしか宇宙ステーションに行けず、大変な事態になっていた。

また毎月のように通信衛星を打ち上げ、世界のどこからでも通信が可能にした。ウクライナはそのおかげでロシア軍の情勢が瞬時に把握でき、助かっている。また途上国でもスマホが利用できる。マスクの貢献は計り知れない。

しかし、ツイッターを買収してからのマスクの行動は目に余る。解雇制限など無いがごとく、長時間労働が嫌なら辞めろと迫り、フェイクニュースを監視する労働者を解雇している。既に1200人以上が辞めたと報道されている。かつて強力だったAFL-CIO全米労組は何ら抗争を起こそうとしていない。おそらく組織していないホワイトカラーの問題だと見て見ぬふりをしている。しかしブルーカラーの多いテスラの工場でも起こりうることだ。

日本では、米国ツイッター本社で行われている解雇し放題のようなことはできない。おそらく労組の力が強い欧州では不可能だろう。

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給与総額の格差、ほんの少し改善

2022-10-11 17:44:29 | 労働

国税庁の民間給与2021調査が先月発表された。給与所得者は5931万人、事業所規模で見ると、従事員が 100~499 人の事業所が21.7%、100 人未満の事業所が43.2%といわゆる中小企業で働く人が6割以上いる。

民間の事業所が支払った給与(賃金、賞与、手当て、時間外賃金)の総額は225兆4,195 億円で、前年から2.8%増加しているが、政府の目標3%には到達してない。

給与所得者の1人当たりの平均給与は443万円(対前年比 2.4%増)であり、これを男女別にみると、男性 545 万円(同 2.5%増)、女性 302 万円(同 3.2%増)となっている。男女間格差は女性の平均給与は男性の55.4%で前年の55%よりわずかに改善された。

これを正規社員、正規社員以外で見ると、正社員508万円、正規社員以外198万円となっている。正規社員以外の給与は正社員の38.9%で前年の35.5%より3%程度改善されている。

税務署のデータは源泉徴収というしっかりした裏付けがあるので、調査は正確だと思う。しかも賃金は低めに後は賞与でカバーという企業もあるので給与総支給額というデータはより現実に近い。それにしても正規社員とそれ以外の社員の給与総額は月例賃金以上に格差が目立つ。正規社員以外には賞与無しという企業が多いのではないか。

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NHKの特番「中流危機を越えて」解決策編

2022-09-29 22:19:20 | 労働

先週のブログで中産階級の没落と解説したNHK特番、今週は解決策を提示した。一つは賃金アップの処方箋として賃金アップに繋がる“リスキリング”、もう一つは非正規雇用への「同一労働、同一賃金」適用だ。

リスキリングとは聞き慣れない言葉だが、学び直しと説明してドイツでの実例、自動車部品を作っていた労働者がリスキリングによりIT産業へ再就職を紹介していた。費用は国の負担で、多くの労働者が失業することなく成長産業へ移っている。日本はかつて炭鉱労働者とか構造不況業種から出された失業者が職業訓練校で技能を学び取得することにより、高度成長時代をのりきった経験がある。DXとかAIといった新技術を有した中高年層は自治体や企業には少ない。各都道府県にリスキリング校を配置したらどうだろう。

中産階級の復活には働き方改革として、4割近くを占める非正規雇用者の底上げとして同一労働、同一賃金もしくは処遇が必要だ。放送では時間給でそれを実行しいるオランダの実例をあげ、生産性を上げている結果、1人当たりのGDPは日本の1.4倍になっていると紹介していた。賃金体系の問題もあるがイトーヨーカドーでは既にパートの管理職がいて、基本給(多分勤続年数による)は正社員と違うが管理職手当や賞与は同一と紹介されていた。オランダでは夫婦がパートタイムで、子育てを共有、「子供と過ごせる時間は一生で貴重なもの」と週4日とか短縮労働でも生活に困らないと、紹介された。

日本でも時間給で正社員と同じなら、一人で週5日働くより二人で週3日計6日働けば賃金は改善され、子供と過ごす時間も多くなる。意欲も高まり生産性も上がる。労使で知恵を絞り実現してもらいたい。

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10月からの最低賃金3.3%アップだが、先進国では最低水準

2022-08-27 21:38:05 | 労働

2022年度の最低賃金は全国平均で31円引き上げられ、時給961円になることが決まった。前年度に比べ3.3%アップで過去最大の伸び率と言ってるがOECD加盟国では韓国の1162円より低く、これまでの20年間デフレとことなり、インフレ気味の中、格差社会は解消できない。最も金額の高い東京都でも1072円、「1000円」超えは、他に神奈川と大阪のみだ。

世界レベルは、経済協力開発機構(OECD)の統計によると、2020年最低賃金(時給換算)が最も高額なのはルクセンブルクで1653円(1ドル=133円換算)次いで、オーストラリア(1651円)、フランス(1615円)、ドイツ(1568円)、ニュージーランド(1539円)、オランダ(1495円)、ベルギー(1459円)、英国(1459円)、スペイン(1414円)、カナダ(1391円)がトップ10だ。ドイツは今年7月に10.45ユーロに引き上げたばかりなのに、10月に12ユーロへ再度引き上げる。

米国では州によって異なるが、コロナ後は労働参加率が63%台から62%台に低下し、サービス業では人手不足が顕著、今や時給15ドル(1995円)が常識となっている。

尚最低賃金年収で比較すると、同じくOECD加盟国2020年統計では
トップ10はルクセンブルク(343万円)、オランダ(337万円)、オーストラリア(326万円)、ニュージーランド(320万円)、ドイツ(311万円)、ベルギー(305万円)、英国(303万円)、フランス(294万円)、韓国(292万円)、カナダ(289万円)だ。やはり日本は10位以下の218万円(1万6422ドル)

NHKのイタリア便りによると、イタリア人が毎日集うバールの閉鎖がコロナ後多くなったという、月給約18万円では働く人が少なくなったためで、継続しているバールでは外国人労働者が、もしくは経営そのものが中国系になったとのこと、イタリアでは最低生活補償給付が4人家族で約15万円あり、それとの比較で家でのんびりしていた方が良いとの選択が働いたのかもとコメントしていた。イタリアは賃金の低さで日本のライバル、日本ではどういう現象がこれから起こるのか

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