経済産業省元審議官によるインサイダー取引事件で、東京地検特捜部に金融商品取引法違反容疑で逮捕された木村雅昭容疑者(53)、逮捕容疑となった半導体大手2社の株売買以外にも、その前後の時期に、職務で内部情報を知り得た複数の企業の株を買い付けていた。この株の売買で800万円余の利益を得てしかも、妻名義でという姑息さだ。 私が仕事関係でお付き合いのあったかつての通産官僚はまさに天下国家を考え、自分の知り得た情報をもとに稼ごうなどと考えるような人はいなかった。高級官僚も地に落ちたという感じだ。容疑者の年齢53歳といえばバブル時には若手官僚として第一線で活躍していた課長補佐クラス。金銭的な感覚が麻痺したまま出世コースを歩み、国家資金を注ぎ込み、再建させるという企業情報を利用することに何のためらいもなかったようだ。 強欲が身体の中に組み込まれた高級官僚が淘汰されずに残っていた訳だ。民主党政権になり、天下りを繰り返して退職金を稼ぐということが不可能になったので、最大の武器である情報を駆使して安全に稼いだということなのだろうか、本人には何ら罪悪感がないのが気になる。 新年パーティで出くわした現役官僚から聞いた民主党政権の政治主導に対する批判や怨嗟は凄まじく、内容は判るが聞いていて不快感を催した。官僚のやる気をなくさせた政治も問題だが、今度の事件はあくまでも個人の資質の問題と捉えたい。