行雲流水

阿島征夫、一生活者として、自由に現代の世相を評す。時には旅の記録や郷土東京の郊外昭島を紹介する。

クルーズ船大国イタリアでの悲劇

2012-01-21 21:54:44 | Weblog

意外と日本では知られていないが、クルーズ船については造船も運用もイタリアは世界のトップを走る国ということだ。今回の事故を起こしたコスタ社だけでも16の大型クルーズ船を有している。造船所はベネチア周辺にあり、列車でベネチア島に入る時、橋を渡った右側の車窓から望める。

かつて、造船王国日本が斜陽になり、クルーズ船建造に乗り出した時、イタリアのクルーズ造船技術を視察したいと申し入れたが現場だけは見せてくれなかった。他の船と違いクルーズ船は宮殿が走るようなものだから内装が決め手になり、日本にはそのデザイン技術が存在しなかった。

コスタ・コンコルディア号の売りは豪華な設備だけでなく、クルーズ船最大級のスパだった。フィットネスセンター、エステ、サウナ等とヘルシーメニューを提供するレストランで、穏やかな地中海航海を楽しむはずであった。信じられない人災での座礁とイタリア政府は発表しているがこの事故には船長だけの責任と言えない背景があると思う。

私は10年前ぐらいにバルト海をヘルシンキからストックホルムまで船上会議でクールーズした経験があるが、豪華客船ではなかったが、無税のバー、美味しいフランス料理を楽しんだ。内海なのでほとんど揺れず、夜もゆっくりと寝られた。バルト海はフィヨルドで深い内海とは言え、瀬戸内と同じく島が多く、島に近づくと座礁の危険はあった。

地中海は島が多く、それだけに景色がすばらしい。規定の航路を走らなければ危険だという事は素人でも判る。イタリア人らしくサービス精神旺盛な船長に魔が差したとしかいいようが無い。3800名の乗客定員に1100名の船員は豪華客船にしては定員が多い。一流の豪華客船は定員と船員の数が同一というのが常識だったが、10万トンをこえる超大型にになり、そうしたことでは採算が合わなくなったのだろう。

遭難時の経過を見ても、お客の証言を聞いても、1100名の船員の緊急時の訓練が不充分だったといえる。船長がいち早く下船したのは論外だが、避難時の救命ボートへの乗船が混乱したことは訓練不足からくるものだ。浅瀬だったことと島民の協力があったから被害は最小限に止まった。船長を含め船員の育成が超大型船の増加に追いつかなかったことが背景にあるのではないか。イタリアにとって国家財政危機の時に更に試練が訪れたようだ。

 

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