カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

幽霊その49・哀しき玩具

2022-04-23 13:15:17 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは大昔、友達の家で、ぼんやりした洗濯ものの幽霊に出会い、どうか連れて行ってくださいと号泣されました。

 母は子どもの頃、とても大事にしていたぬいぐるみを友達が勝手に持って帰り、親からも我慢しなさいと言われたことがある。もちろん昔から我の強かった母がそれを承知する筈もなく怒り心頭状態で友達の家に押し掛け、飽きて打ち捨てられ、見る影もない姿と成り果てたぬいぐるみを奪い返して自ら綻びを繕い、綺麗に洗濯した。翌日から親と友達一家は数日間、毎晩のように訳の分からない悪夢に魘され続けたそうだ。
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幽霊その48・取り遺されるモノ

2022-04-10 16:39:15 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは友人が亡くなった日、ショッピングモールで、どこかで見たことのある老人の幽霊に出会い、どうか連れて行ってくださいと言われました。

 友人の葬式に向かっている途中で奴の父親に遭遇した。妻と、まだ小さかった息子を捨てて別の女と逃げた男は、自分が死んだことにも気付かぬまま昔住んでいた家と家族を探し回っている様子だったが、もはやあの男にあの家に戻る権利はないし、周囲に悼まれ見送られる奴と同じ場所に逝く事も出来ない。
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幽霊その47・山のスイカ

2022-04-03 17:00:57 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは昨日、山奥で、血塗れの男性の幽霊に出会い、コレを渡して下さいと言われました。

 冬山で遭難した義弟とは仲が良かったので、春になってから現場を尋ねてみた。するとガレ場で光るものがあったので拾うと奴の名前が彫られた指輪だった。もしも、まだ義弟が此処にいるなら姿を見せて欲しいと一瞬だけ思ったが、山岳用語でスイカと呼ばれる無残な姿を晒したくないのだろうと思い直した。
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幽霊その46・佇む少年

2022-04-02 23:05:46 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは昨日、バス停で、かなりグロい少年の幽霊に出会い、あの人に伝えて欲しいとお願いされました。

 バス停近くの道端に菊の花束が置かれていたので嫌な予感がしたら、案の定ひどい怪我をしている半分透けた姿の少年に声を掛けられた。花を供えられている間はここから移動できないという少年の頼みで花束から菊を1輪抜き、少年の案内のまま一軒の家に辿り着いた私は菊の花を置いて、その場を後にした。
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幽霊その45・犬が啼く

2022-03-06 18:06:49 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは三日前、お墓で、知り合いの犬の幽霊に出会い、あなたに取り憑いていいですかと泣かれました。

 我が家の墓参を済ませた帰り、最近亡くなった隣人の墓前に老犬の幽霊が佇んでいた。隣人は生前にこの犬を溺愛していて最期まで行く末を心配していたが、隣人の奥さんはこの犬を嫌っていて、葬式の後に犬を何処かに譲ったと聞いた。何があったかは知らないが、主人を恋しがって鼻を鳴らす犬は只哀れだ。
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幽霊その44・通りすがりの守護者

2022-01-22 21:28:46 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは生まれた日、公園で、美しい老婆の幽霊に出会い、あなたに取り憑いていいですかとお願いされました。

 私は昔から上品な老婆の気配を身近に感じていて、母が言うには小さい頃は良く一緒に遊んでいたそうだ。とは言っても血の繋がりのない赤の他人で、単に彼女の孫と私が何となく似ていたという理由で一緒にいるらしい。もちろん、何故に本当の孫ではなく私に憑いているのかを確認しようとしたことはない。
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幽霊その43・わたしのまわりに、だあれもいない

2022-01-08 15:33:29 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは先程、山奥で、いかにもな大人の幽霊に出会い、あの人に伝えて欲しいと微笑まれました。

 若い頃、死に場所を探して山の奥まで入り込んだ事がある。だが、先客の遺した無残な姿から現実に引き戻された私の前にわざわざ生前の姿で現れた先客は、自分の死を遺族に伝えてくれるなら帰り道を教えてくれると約束して街に還る事が出来たのだが、先客は幼い頃に既に天涯孤独の身となっていたと後に知った。
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幽霊その42・うちのお姉さん

2022-01-04 23:25:48 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは先程、自宅で、哀しげな大人の幽霊に出会い、どうか連れて行ってくださいと微笑まれました。

 うちには昔から家族以外には見えないお姉さんがいて、小さい頃は遊び相手に、大きくなってからは話し相手になってくれた。だから引っ越しが決まった時は別れるのが淋しかったが、お姉さんは新居に移っても僕の前に現れた。つまりお姉さんは家ではなく家族の誰かに憑いているのだと今更ながら判明した。
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幽霊その41・魔女を生きる心得

2021-12-30 19:45:45 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは大昔、公園で、嬉しそうな老人の幽霊に出会い、何処に行けばいいのかと呪われました。

 ずっと昔、何処かの公園で魔女を名乗る老婆に声を掛けられたことがある。老婆は私の魂が自由を求める強い輝きを放っていて、それ故に周囲と巧くやっていくには難しいだろうと忠告してきた。やがて私が周囲との折り合いが付けられない現実は深刻なものとなり、それ故に私は魔女となる道を自ら選んだ。
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幽霊その40・誠意を見せて下さい

2021-12-25 15:42:30 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは昨日、自宅で、恨みがましい幼女の幽霊に出会い、あの人に伝えて欲しいと懇願されました。

 家賃格安の上に敷金も礼金も引継ぎで入居できると言われ、つい従兄が住んでいた物件に引っ越したら幼女の幽霊が憑いていた。しかも従兄にもう一度会いたいと懇願するので手近なキーホルダーに移って貰って従兄の新居に置いてきた。二人の間に何があったかは知らないが、あとは従兄の誠意ある対応に期待して一切の口出しはしないことに決めた。
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