カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

作品その25・過ぎ行く定めの者たちへ

2018-08-31 22:34:49 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『水銀』と『十年物の春風』を材料に『輝き渡る炭焼き菓子』を錬成しました。用途は食用です。

 師匠はしばしば高価な錬成材料で見事な菓子を焼いているが、不思議にもそれを売りに出している様子はない。ご自分で召し上がるのですかと尋ねると、昔の仲間が菓子を好きだったのさと寂しそうに笑う。そしていずれは僕にも昔の仲間と、かつての師匠についての話を聞かせてやろうと約束してくれた。
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作品その24・切っても切れない関係

2018-08-30 23:55:28 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『オパール』と『十年物の春風』を材料に『悪夢の虹茶』を錬成しました。用途は戦闘用です。

 どうして錬金術師は武闘家とも繋がりがあるんですかと問うと、錬金術で錬成される薬や武具は武闘家の能力を著しく引き上げるものも含まれるからだそうだ。それでは師匠にも武術の心得があったりするのですかと戯れに尋ねると、私が相手を倒すときは確実を期すために毒か目眩ましを使うと笑ったが、普段の師匠を知る僕には笑えなかった。
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作品その23・超絶絡繰り対戦

2018-08-29 23:18:50 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『青銅』と『三十年物の光鼈甲』を材料に『吸血の一角獣』を錬成しました。用途は戦闘用です。

 たまにだが、明らかに戦闘用の絡繰りを錬成することがあるので思い切って何に使うのか尋ねると、戦闘用に決まっているだろうがと断言された。それでは僕も人殺しを手伝っているのかと落ち込むと、幸か不幸か錬成された絡繰りを操れるのは特殊な訓練を受けた戦士というよりは見世物的な格闘家で、戦うのも既定のルールに則った観戦試合のためだと言う。
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作品その22・製菓は化学

2018-08-28 18:50:29 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『陶器の破片』と『水砂糖』を材料に『可愛い苦味飴玉』を錬成しました。用途は滋養強壮です。

 僕が思うに、師匠が最も得意とする錬成物質は菓子及び菓子に準じる滋養食品だが、実は台所で作るような料理は全く出来ない。師匠自身の弁明によると、菓子作りと料理の工程は完全に似て非なるものであり、精密な検量及び攪拌、加熱冷却が必要な菓子作成は、師匠にとっては錬成実験と同義なのだそうだ。
 ちなみに料理は、その都度に異なる材料の成分対応に追われている間に炭か灰にしてしまうらしい。
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作品その21・破れた心の繕い方教えます

2018-08-27 20:22:31 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『星の砂』と『水砂糖』を材料に『きみを思うエーテル回復薬』を錬成しました。用途は薬用です。

 ときめきなんて感情は新鮮さが売りで、繰り返されるほどに薄まり弱まっていくものと相場が決まっている。だからどんな素晴らしい出会いも、いずれは単なる記憶と成り果てて熱を失うものだと師匠は言う。そして師匠の錬成した薬は一度だけ、かつてのときめきを甦らせてくれるかもしれない、しかし思い出せなかった場合はときめきに伴う記憶を失ってしまう、とても危険な劇薬なのだそうだ。
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作品その20・褐色の恋人

2018-08-24 20:21:25 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『土塊』と『絞りたて金山羊ミルク』を材料に『吸血の炭焼き菓子』を錬成しました。用途は食用です。

 師匠は滅多に錬成を行わないが、たまに珍しい材料が手に入ると決まって菓子作りを始める。土塊にしか見えない南国の果実を粉にしたものと砂糖、それにミルククリームを使って複雑極まりない工程の末に出来上がった板状の何かは、僕の目にはとても食べ物には見えないのだが、それを一人で少しずつ齧っている師匠の姿はとても嬉しそうだ。
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作品その19・小さな一角獣

2018-08-23 21:30:29 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『真珠』と『まがい火鼠の毛皮』を材料に『太古の一角獣』を錬成しました。用途は謎です。

 石の中で炎が煌めく「炎珠」という鉱石を錬成したら、いきなり石が砕けて中から掌サイズの一角獣が産まれた。師匠が言うには火鼠の毛皮が偽物だったせいらしく、もうアイツの品物は買わんと憤慨する。でも、一角獣はとても可愛かったので、標本にすれば売れるかもしれないと呟く師匠相手に、きちんと世話をするから飼いたいと僕が懇願したら、師匠は何故かとても嫌そうな表情で、飼うのは構わんが後悔しない程度にしておけよと言われた。

 それから一か月後、僕は錬成された擬似生命体が通常の空間で肉体を保っていられる期間が極めて短いことを嫌というほど思い知らされることになった。、
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作品その18・凍える外套

2018-08-22 23:53:48 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『紫水晶』と『三つ首獣の牙』を材料に『氷結の闇外套』を錬成しました。用途は謎です。

 大地の鳴動から生み出された紫水晶は、上手く土の属性の物質と錬成すると大地の強力な加護を付加する。一例としては寒暖の軽減が挙げられるが、かつて師匠が驚異的な技術で属性付加した布地で仕立てさせた立派な外套は、着用すると凍死寸前まで体感温度が下がるので使いものにはならなかったそうだ。
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作品その17・輝く夜桜の使い道

2018-08-21 23:56:23 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『真珠』と『虹孔雀の舌』を材料に『暗黒の発光桜』を錬成しました。用途は戦闘用です。

 たまには面白いところに連れて行ってやろうと師匠が僕を連れ出した日は、王都で行われる夏祭りだった。今年の目玉は松明を灯した闘技場で行われる夜間武道会で、試合開始と終了時の派手なセレモニーには僕が作った発光夜桜と花火が使われていて、元々は兵器でもこういう使い方もあると師匠は笑った。
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作品その16・天と地の秘伝書

2018-08-20 19:06:36 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『土塊』と『呪文を織り込んだレース編み』を材料に『天空の極意秘伝書』を錬成しました。用途は観賞用です。

 総てのモノが大地に還るのであれば、一握の土塊にすら様々な情報が含まれているのはむしろ当然で、それらの情報を自在に引き出して布地や紙に転写すれば、実に容易に古代の知識を手に入れられることが出来ると断言した師匠の言葉は、ただし古代文字を自力で読めるのが前提だと付け加えるのを忘れない。
 読めない文字を有難がる奴は意外に多いぞと笑う師匠の笑顔は、いつもながら邪悪だ。
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