「…… 大体、叔父さんは点けることが出来るの?」
魔法使いを名乗るくらいなら、それ位出来ても不思議はないよね。などと棘を隠せない僕の口調に、叔父さんは飄々とした態度のまま答える。
「蝋燭の火を点けるくらい、簡単だろう」
言うなり叔父さんは即座に蝋燭を点けて見せた。ただし、ポケットから取り出した金属製のライターの蓋を手慣れた動作で使って。
「どうだ?」
得意顔の叔父さんに僕が何と返して良いのか悩んでいると、叔父さんは少しだけ表情を引き締める。
「結局、火を灯せる自体は大したことじゃないのさ。道具さえあれば一瞬で出来る程度のことでしかない」
真の問題は火種そのものではなく、そこから燃え広がった炎が周囲を焼き尽くす危険を孕んでいることだと、叔父さんの言葉は更に続く。
「そして、実はお前自身も既にその危険を知っている。だから、お前が幾ら睨み付けても蝋燭は灯らなかった。そんな危険を冒す必要はないからだ」
自分の力に怯えるのは当然だ、しかし、その怯えを忘れたとき、お前は人間でなくなる。そう言葉を締め括り、叔父さんは小さな子どもにするように僕の頭に掌を乗せ、優しく撫でてくれた。
この人は、仲間だ。
実の両親にすら怯えた目を向けられた僕だが、この人だけは仲間だ。
そんなことを考えていると、叔父さんはふと何かを思い付いたように蝋燭の炎に向き直った。
「とは言え、これだけじゃ芸がないな。そもそもオレは点火よりもむしろ、こちらの方が得意なんだ」
そのまま叔父さんが炎の上に手をかざすと、瞬く間にオレンジ色だった炎が蒼白く変化して球体を形作る。文字通り目を丸くして見入った僕の前で、球体は暫くの間、形を全く崩さぬままに柔らかく輝いていた。熱を持つ蛍火を思わせるその光球は、僕が今まで見たこともないほどに綺麗で、けれど、とても哀しい色合いをしていた。
ファイアースターター・終
魔法使いを名乗るくらいなら、それ位出来ても不思議はないよね。などと棘を隠せない僕の口調に、叔父さんは飄々とした態度のまま答える。
「蝋燭の火を点けるくらい、簡単だろう」
言うなり叔父さんは即座に蝋燭を点けて見せた。ただし、ポケットから取り出した金属製のライターの蓋を手慣れた動作で使って。
「どうだ?」
得意顔の叔父さんに僕が何と返して良いのか悩んでいると、叔父さんは少しだけ表情を引き締める。
「結局、火を灯せる自体は大したことじゃないのさ。道具さえあれば一瞬で出来る程度のことでしかない」
真の問題は火種そのものではなく、そこから燃え広がった炎が周囲を焼き尽くす危険を孕んでいることだと、叔父さんの言葉は更に続く。
「そして、実はお前自身も既にその危険を知っている。だから、お前が幾ら睨み付けても蝋燭は灯らなかった。そんな危険を冒す必要はないからだ」
自分の力に怯えるのは当然だ、しかし、その怯えを忘れたとき、お前は人間でなくなる。そう言葉を締め括り、叔父さんは小さな子どもにするように僕の頭に掌を乗せ、優しく撫でてくれた。
この人は、仲間だ。
実の両親にすら怯えた目を向けられた僕だが、この人だけは仲間だ。
そんなことを考えていると、叔父さんはふと何かを思い付いたように蝋燭の炎に向き直った。
「とは言え、これだけじゃ芸がないな。そもそもオレは点火よりもむしろ、こちらの方が得意なんだ」
そのまま叔父さんが炎の上に手をかざすと、瞬く間にオレンジ色だった炎が蒼白く変化して球体を形作る。文字通り目を丸くして見入った僕の前で、球体は暫くの間、形を全く崩さぬままに柔らかく輝いていた。熱を持つ蛍火を思わせるその光球は、僕が今まで見たこともないほどに綺麗で、けれど、とても哀しい色合いをしていた。
ファイアースターター・終