カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

とある蒐集家の棚より・哀しい恋の物語

2018-01-30 23:25:06 | とある蒐集家の棚
たかあきは『白い貝殻』と『マグロのぬいぐるみ』に関する物語を創作してください。

 新しい枕に今までどうしてランプの中にいたのかと尋ねたところ、彼がまだ本物のマグロだった頃に恋をした相手が白い貝殻だったと答えが返ってきた。どんなに思っても届かない相手を彼は哀しみと共に噛み砕いて飲み込み、息絶える直前に、今度はもっと柔らかいものに変わりたいと願ったのだと言う。ちなみに、結局ランプにいた理由は謎のままだ。
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とある蒐集家の棚より・願い事は何ですか?

2018-01-29 21:18:06 | とある蒐集家の棚
たかあきは『ランプ』と『マグロのぬいぐるみ』に関する物語を創作してください。

 古いランプを磨いていたら煙と共にマグロのぬいぐるみが現れて、自分に出来る限りでなら願い事を叶えてくれると言った。取りあえずマグロなので金目のものは用意できず、ぬいぐるみなので食用にもならないと分かったので、仕方なく枕になってもらうことにした。そんなわけで現在、僕の使っている枕は妙に長太くて口数が多い。
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とある蒐集家の棚より・響く音色

2018-01-28 21:59:25 | とある蒐集家の棚
たかあきは『金属製のハンドベル』と『お守り』に関する物語を創作してください。

 祖父は生前から鈴の音は魔除けになるのだと言って、出自の分からない金属製のハンドベルを大事にしていた。やがて祖父の葬式が行われたとき、ハンドベルは誰も触れないまま絶え間なく鳴り響き、祖母は何かを諦めた表情で祖父の骸にそれを握らせた。
 祖父にハンドベルを贈ったのが、若くして死んだ祖母の双子の姉だと僕が知ったのは、ずっと後になってからだ。
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とある蒐集家の棚より・断つもの、綴るもの

2018-01-27 21:53:05 | とある蒐集家の棚
たかあきは『糸切り鋏』と『万年筆』に関する物語を創作してください。

 裁縫が趣味の友人にアンティークレプリカの糸切り鋏をプレゼントした。刃物は縁を断ち切る意味があるので贈りものには良くないと言われるが、友人はお礼にと私の誕生日に万年筆をプレゼントしてくれた。そんなわけで、私と友人の仲は今まで何かに断ち切られる事もなく平穏無事な物語を綴ってきている。
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とある蒐集家の棚より・葉っぱが散るときは一瞬

2018-01-26 22:11:52 | とある蒐集家の棚
たかあきは『糸切り鋏』と『観葉植物』に関する物語を創作してください。

 手先の器用な彼女は布地から沢山の葉っぱを切り抜き、糸で連ねて形を整えたミニ観葉鉢をいくつも作っていた。手間が掛かった丁寧な造りなのは見て判ったがハンドメイドには興味がないので一度も褒めない僕に、やがて彼女は寂しそうな顔から表情を消し去って一度だけ糸切り鋏を使い、その結果、今までの全てが一瞬でバラバラになった。
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とある蒐集家の棚より・思い出のしるし

2018-01-24 22:59:08 | とある蒐集家の棚
たかあきは『テレホンカード』と『お香』に関する物語を創作してください。

 昔の記憶を甦らせる効果があるという香を試しに焚いてみたら、脳裏に浮かんだのは一枚のテレホンカードだった。故郷を遠く離れた街で、ふと寂しさから使ったカード。あれから何枚のカードを使って寂しさを紛らわせたかは覚えていないが、あの頃と変わったことと言えば若干の人間関係の更新、そして通信環境の向上だけのような気もする。
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とある蒐集家の棚より・返さないよ

2018-01-23 21:03:22 | とある蒐集家の棚
たかあきは『ガリレオ式温度計』と『黒電話』に関する物語を創作してください。

 廃屋からガリレオ式温度計を持ち帰ったら、スマホから登録した覚えのない古風なベル音が鳴ったので出てみた。
 「温度計、返して」と言われ、猛烈に腹が立ったので、「あれは僕のものだ」と答えて即座に通話を終えた。先輩が僕の部屋から勝手に持ち出して与えた温度計を、生前、先輩の妹は随分と気に入っていたらしいが知ったことではない。
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とある蒐集家の棚より・狂った運命が示すのは、きっと新しい道

2018-01-19 23:55:31 | とある蒐集家の棚
 そのハンドベルは地球に落ちてきた隕鉄を材料に作ったせいか、しょっちゅう方位磁針を狂わせていた。きっと方位磁針にとってハンドベルは地上にある金属のどれとも違う魔可不思議な存在だったのだろう。そして、発狂して回転の止まらなくなった方位磁針は、方位磁針の意味も役割も知らない幼い甥っ子に、ただ回転するだけのオブジェとして引き取られていった。
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とある蒐集家の棚より・欠けてしまった、かけがえのない物

2018-01-18 22:30:31 | とある蒐集家の棚
たかあきは『消しゴム付き鉛筆』と『白い貝殻』に関する物語を創作してください。

 壊してしまった白い貝殻の欠片を並べ、せめて壊れる前の姿をスケッチしようと白い紙に鉛筆でスケッチを始めたが、何枚描いても思うような絵にはならず、鉛筆の線で汚れた白い紙の書き損じと壊してしまった白い貝殻をまとめて捨ててしまうことにした。こうやって僕は何度もかけがえのない物を失うのだ。
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とある蒐集家の棚より・刻まれ、流れ去った記憶

2018-01-17 23:31:53 | とある蒐集家の棚
たかあきは『メトロノーム』と『あの日の写真』に関する物語を創作してください。

 あの日の光景が切り取られた写真を、あの日のリズムを刻んでくれるメトロノームを奏でながら眺めていたら、いつの間にか写真の中で動き出した光景があの日を再現しはじめた。いつも一緒で楽しかった筈のグループがそれぞれの方向に向かって歩き出し、やがてはバラバラとなって二度と見えなくなるまでの光景だった。
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