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カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

幽霊その20・シニガミゴロシ

2021-08-29 12:33:15 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは失恋した日、病院で、生きてる人間と変わらない猫の幽霊に出会い、一緒に逝きませんかと微笑まれました。

 闘病の末に亡くなった彼を病院で見送った日、人間の言葉を流暢に話す猫が窓辺に立っていた。猫が言うには自分は死神で、今なら彼の魂と一緒に私の魂も連れて逝けるがどうする?と尋ねてきたので、多分無駄だと思いつつも猫に近付き、窓の外に突き飛ばしてから下を覗いてみると、意外にも潰れて中身がはみ出ていた。
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骨董品に関する物語・"VERITE"フランス語で「真理」の印章

2021-08-28 21:33:47 | 突発お題

 彼は人間よりも真理を愛した。人間は裏切るが真理は裏切らないと言うのがその理由だ。やがて彼は真理を振りかざして他人を傷つけて憚らなくなり、それ故に人々は彼の元から去って行った。さらに他人を顧みなくなった彼は、やがて真理と刻まれた印章を押印した手紙の前で刺殺された。
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骨董品に関する物語・竪琴と"ALL'S WELL"「万事順調」の文字が彫られている印章

2021-08-28 21:32:07 | 突発お題

 健康で商才があり多芸で友人も多く家族愛に溢れた父だが、唯一無二の欠点は絶望的に楽才のない身で竪琴の演奏をしたがる事だった。同じフレーズの同じ場所で何度も弦を弾き損ねる演奏は酷く耳障りだったが、父が商売の印章に竪琴の意匠を使うに至って家族を含む周囲は色々と諦めた。
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骨董品に関する物語・キルンハウスの印章

2021-08-28 21:30:06 | 突発お題

 ムーミン屋敷みたいねと、キルンハウスの刻印が刻まれた印章を見ながら彼女は言った。例え家主が不在でも全ての来訪者に扉が開かれる安息の地であり、それぞれが己を見詰め直す気付きの場でもあるという屋敷は、つまり現実には存在しない理想郷であり、それ故にひどく懐かしい。

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骨董品に関する物語・ペリドットグリーンのボンボニエー

2021-08-28 21:28:30 | 突発お題

 爽やかな夏の風を詰めて保存しておくガラス瓶が登場する物語に感銘を受けた彼は、自分の専攻学問である錬金術で初夏の草原を渡る風を封じ込めた菓子器を作り上げ私にプレゼントしてくれた。とても素敵な器なのだが、砂糖菓子を入れると漏れなく風味が青臭くなるのが唯一の悩みだ。
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骨董品に関する物語・エメラルドグリーンのボンボニエール

2021-08-28 21:26:21 | 突発お題

 入学のお祝いにと姪にボンボニエールをあげようとしたら大して喜んでくれなかったので彼女には早すぎる贈り物だろうかと悩んだら、義姉さんが大丈夫、絶対に喜ぶからと慰めてくれた。そして実際、渡されたボンボニエールに色とりどりのボンボンが沢山入っているのを確認した姪は大歓声を上げた。

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幽霊その19・受け取り不能の手紙

2021-08-28 12:36:00 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは失恋した日、教会で、ちょっと溶けた感じに見える洗濯ものの幽霊に出会い、コレを渡して下さいと泣かれました。

 付喪神という概念を考えればモノの幽霊っぽいものが存在してもおかしくはないと思うが、何で教会の神父様の着るカソックが化けて出るのだろうかと悩んでいだら一度濡れてから乾いた風の封筒を渡された。子供の字で神父様の名前が書かれたそれを見て大方の事態を理解した気になった私は、失恋したばかりの身で他人の恋路に頭を悩ませる。
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幽霊その18・死んだその日が誕生日

2021-08-27 23:22:03 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは生まれた日、駅で、いかにもな女性の幽霊に出会い、あなたに取り憑いていいですかと誘われました。

 最近付きまとっていたストーカーが、よりによって誕生日に私を階段から突き落とした。ああこれは死んだなと自分の身体を見下ろしながら考えていると、今の私と殆ど変わらない位に悲惨な姿をした女性が、あのクソ野郎を追い詰めるのに協力するから貴女の身体に間借りさせて欲しいと頼んできたので承諾した。
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幽霊その17・気付いては、いけない

2021-08-26 23:15:03 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは今この時、公園で、むっちゃ怖い子供の幽霊に出会い、恨みを晴らしてくれと号泣されました。

 幽霊というのはこの世に未練を残して地上に残ってしまった魂なので、大概は果たせぬ思いを抱いている。そして彼らの思いを叶えられる生者は殆ど存在しない。だから僕は今、ここで、僕に向かって泣きながら話しかけてくる首に痣のある女の子の声を聞かなかった振りをしながら公園を立ち去るしかない。
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幽霊その16・探索の代償

2021-08-25 19:43:45 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは昨日、廃墟で、嬉しそうな女性の幽霊に出会い、どうか連れて行ってくださいと聞かれました。

 私の廃墟巡りは終了して久しい人間の営みの残骸にロマンを感じに行くのであって、肝試しやホラー、あるいはサスペンス的な要素、つまり本物の骸や骸から抜け出した霊魂と呼ばれるものに興味はない。それなのに、本日訪れた廃墟では傷んだ骸の傍らに浮いた霊魂に、ああやっと人が来たこの状況をどうにかしてくれますよねと笑顔で言われ、仕方なく面倒の発生を覚悟しながら警察に電話して、当然ながら物凄く怒られた。
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