カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

銃声

2016-10-31 20:05:06 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『天国』を舞台に、『街灯』と『拳銃』と『落雷』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 異国より突然訪れた蒸気船によって開国を迫られ、維新を経て国際社会の仲間入りを果たした日埜本之国。
 やがて異国より伝わった蒸気機関に独自の絡繰り技術を加えて驚異的な発展を成し遂げた首都、帝都は真に平和と繁栄の只中に在った。

 だが、今、その平穏を引き裂く雷鳴の如き銃声が帝都に響き渡る。
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少女

2016-10-28 19:26:43 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『草原』を舞台に、『失敗』と『釣り』と『指輪』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 わあ!それ蒸気犬ですか、触っても大丈夫ですよね?などと声を掛けられた時、私は既に息人もの女学生達に取り囲まれていた。何故かは判らないが事務所付近に頻繁に出没する女学生達は、私の姿に気付くと意味不明の歓声を上げながら挨拶してくるのが常だった。無遠慮に触りまくる手に辟易するクロから彼女達を引き放し、急ぐからと無愛想に背を向けると再び上がる悲鳴に似た歓声。全く以て意味不明だ。
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珈琲

2016-10-27 21:42:21 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『草原』を舞台に、『コーヒー』と『楽譜』と『首飾り』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 ざあっ、と風が鳴った直後に鼻腔をくすぐる珈琲の香りに誘われたのか、私の記憶は不意に子供の頃の光景を脳裏に甦らせた。金色に輝く草原の中、手風琴で寂しげな音色を奏でていた、いつも物静かに微笑むあの人。でも、私は昔からあの人が理由も分からぬまま怖くて、だから、あの人が好きな珈琲も嫌いだった。
 そんな私の様子を不審に思ったのかクロが気遣わしげに鼻を鳴らし、現実に引き戻された私はクロの鼻面を撫でてやる。
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仮面

2016-10-26 20:14:22 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『温室』を舞台に、『カンテラ』と『中華鍋』と『芳香』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 帝都某所の温室。
 むせかえるような花と緑の芳香に包まれながら、カンテラの灯火に浮かび上がる植物たちの世話をしながら微笑むのは顔の上半分を仮面で隠した若い男。もうすぐだよ、もうすぐだからと何度も独り言を呟きながら見回す大小様々な鉢植えは種類の如何を問わず全てが毒草であり、中には相当に珍しいものもあった。
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自由

2016-10-25 19:36:11 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『草原』を舞台に、『失敗』と『ノコギリ』と『自由』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 従兄が海外に向かう前日。家の近所にある草原で話をした時、ヤツは姉に関しては失敗したと項垂れてから、次の瞬間に顔を上げると何処か遠くを見るような表情で、しかし次は失敗しないと呟いた。何故なら自分は自由になったのだからと。
 その言葉の意味を当時の俺は随分と脳天気に捉えたが、後々に、それはとんでもない間違いだったと嫌と言う程思い知ることになる。
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漆黒

2016-10-24 06:11:34 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『映画館』を舞台に、『髪の毛』と『オルガン』と『反逆』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 従兄は銀幕スタア並みの整った容姿と蒸気機関に関する膨大な知識と技術、それにオルガンを始めとする大概の楽器を弾きこなす才能の持ち主で周囲に対する人当たりも良かったが、そんな外見に隠された恐らくは癒やしようのない闇と影に、俺と、あと多分俺の家族だけが薄々感付いていて、随分長い間漠然とした不安を抱いていたのだ。
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失踪

2016-10-21 19:24:20 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『真夏』を舞台に、『風来坊』と『ビール』と『窓』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 そんな事を考えている内に俺は心ならずも従兄に対する記憶を甦らせてしまい、昼間の内から酒でも飲みたい気分に陥ってしまう。
 俺達姉弟と従兄がまだガキだった頃のある夏の日、若い男と逃げた妻、そして妻に良く似た息子に対する憎悪を隠さない実兄の元から俺の父に連れてこられた従兄は家で暮らすことになった。
 そして俺達三人がそろそろ一人前の大人として自分の道を定めなければならなくなった頃、従兄は一緒に暮らす前から姉が好きだったと告白した。だが姉にその気はないと告げられ、従兄は傷心のまま海の向こうの国に留学してそのまま数年ほど音信不通になった。
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傷跡

2016-10-20 19:20:00 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『汽水域』を舞台に、『爪痕』と『張り紙』と『鳥籠』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 俺の推理が正しければ、アイツは手がかりさえ見つければ危険も顧みず御嶽丸を使って両親や祖父母の死の原因に近付き、最終的には犯人を暴き立てるつもりでいるのだろう。それが決して癒やされない過去の傷跡に怯えたまま己の裡に引き籠もってしまう事によって得る『安全』とどちらがマシなのかは判らないが、少なくともアイツに取って御嶽丸が色々な意味でジョーカーなのは疑いない事だった。
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散歩

2016-10-19 00:22:09 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『編集室』を舞台に、『紺青』と『刑事』と『落葉』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 自称三文文士の鷹塔が編集部の担当に泣き付かれつつ『不死の兵士』のテコ入れに励んでいた秋のある日。
 修理が終わった御嶽丸は大家がアイツの「蒸気犬は本当の犬のように毛を散らかしたり粗相をしたり無駄吠えしたりは絶対にしません!だから追い出さないで下さい!」という哀願を聞き入れ、何とか事務所に置いても良いことになった。「クロおいで」などと嬉しそうに御嶽丸に声を掛けながら散歩に出ていくアイツは、ついでに先生の茶菓子でも買ってきますよと付け加える程に上機嫌で、俺としてはいきなり天候が崩れて雷でも落ちて来ないかと心配になる程だった。
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恩讐

2016-10-18 00:10:12 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『深い森』を舞台に、『復讐』と『犬』と『司書』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 翌日、先生から御嶽丸の修理は意外に早く終わりそうだと教えて貰った。それで、本当にヤツをうちに置くのかと尋ねられたので当然でしょうと断言してみせる。先生としてはあの事件の記憶が甦るのを懸念しているのかも知れないが、そもそもあの日のことは一日だって忘れた事はない。むしろ、だからこそ私にはクロが必要なのだ。
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