カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

旅路その80・愛に生きるものの試練

2019-09-30 20:07:05 | 旅人の記録
たかあきは西域の宗教都市に辿り着きました。名所は特に無し、名物は野菜料理だそうです。

 神の愛を学ぶ僧侶学校の学生たちは、その生活の殆ど全てを厳しい戒律に従って暮らしている。娯楽らしい娯楽は無いに等しいまま祈祷書の頁を繰り、食事に至っては獣肉だけでなく卵を自由に食することが出来ない。何でも生命を生み出す卵を食事にする事は彼らにとって命を奪うのと同じくらい罪深いことなのだそうだ。
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秋の創作怪談・啜るもの

2019-09-29 22:53:38 | 旅人の記録

 夏が終わったとはいえ紅葉には早い季節に、紅葉と言うよりは赤茶けて枯れた葉っぱの一群を纏った街路樹を不審に思って目を凝らすと、タイヤ位の太さがある芋虫のような何かが枝にへばりついていた。関わると碌な事にならないと無視したが、やがて街路樹は全て切り倒されて別の木が植えられた。
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旅路その79・真昼の光の下の幸せ

2019-09-29 20:47:21 | 旅人の記録
たかあきは冬の宗教都市に辿り着きました。名所は古代から続く遊園地、名物は飴菓子だそうです。

 その宗教都市は戒律でアルコールを禁じている為に酒場と言うものが存在しないことになっている。その為か街の灯が消えるのも異様に早い。娯楽には巨大な遊園地があてがわれ、人々は太陽光の下で友達や家族と共に甘い飲み物と菓子を手にしながら遊具と遊具の狭間を歩き回りながら休日を過ごすのだ。
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旅路その78・甘い囁きよ我を満たせ

2019-09-28 19:55:26 | 旅人の記録
たかあきは初春の学生街に辿り着きました。名所は石碑、名物は飴菓子だそうです。

 学生街の丘には見晴らしの良い公園があって、そこにある石碑の周辺は学生達が思いを伝え合う聖地となっている。面白いのは公園前の店で購入できる菓子で返事をするシステムで、例えばマカロンならOK、ミントキャンディーなら御免なさい友達でいましょう、マシュマロなら最初から想定対象外だそうだ。
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旅路その77・飴買い幽霊の哀しみ

2019-09-26 19:18:47 | 旅人の記録
たかあきは実月の田舎町に辿り着きました。名所は名刹、名物は飴菓子だそうです。

 その田舎町では名物として水飴が売られているが、何でも昔、死んで葬られてから墓の中で生まれた赤子を育てる為に幽霊となった母親が三途の皮の渡し賃である六文を使って飴を贖い、七日間赤子を養っていたという伝説が元になっているそうだ。死人として葬られても尚、例えあの世へ逝く術を失い永遠にこの世とあの世の狭間を永遠に彷徨う魂と成り果てようとも赤子を生かそうとした母親について考えると、瓶に詰められた琥珀色の甘い水飴も何処かほろ苦く感じる。
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旅路その76・研究のち観光

2019-09-25 20:59:17 | 旅人の記録
たかあきは秋の王都に辿り着きました。名所は古代から続く遊園地、名物は野菜料理だそうです。

 名物料理と呼ばれるものは当然だが調理法だけでなく使う材料に内容が左右される。ましてやその材料が特定の土地でしか収穫出来ないとなれば猶更だ。そんな訳で僕は潔く眼前の野菜料理の自力再現を諦め、この地の建国神話にも登場するほど古い歴史を誇る有名な遊園地で遊び倒してから帰ることにした。
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旅路その75・太古の海より

2019-09-23 22:23:45 | 旅人の記録
たかあきは霜月の田舎町に辿り着きました。名所は古い水族館、名物は貝料理だそうです。

 その小さな水族館は知る人ぞ知る穴場で、太古の時代から殆ど姿を変えずにひっそりと海で暮らしてきた巻貝の末裔が現在も水槽で暮らしている。ちなみに古代魚は外見だけでなく体内組織も全く進化しないまま現在に至る故に食べると非常に不味いそうだが、料理人としては少しばかり気になる存在ではある。
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旅路その74・生涯現役料理長

2019-09-22 19:46:08 | 旅人の記録
たかあきは初夏の観光地に辿り着きました。名所はツインタワー、名物は野菜料理だそうです。

 観光地のツインタワーで料理長を務めている、そろそろ老人と呼ばれても仕方ない年齢の師匠は相変わらず無駄に元気だった。最近は歳のせいか様々な野菜料理の研究と開発に余念がないと言うが、それも全ては肉料理をより旨く、より大量に摂取する為の補助的料理なのではないかと勘ぐってしまう。
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秋の創作怪談・廃屋の罠

2019-09-19 19:59:13 | 突発お題

 肝試しと称して曰くつきの廃屋に無断侵入する若者は、ごくたまにだが罠に引っ掛かり、そこを根城にしている連中の餌食になる。大抵は運を食われるだけだが、たまにゴミを押し付けられたり精神そのものをやられたりしてとんでもない大事に発展すると心霊スポットの評判が上がって更に若者が廃屋に押し寄せ、故に連中は餌に困らない。
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旅路その73・東奔西走料理人

2019-09-19 18:32:15 | 旅人の記録
たかあきは真夜中の王都に辿り着きました。名所は石碑、名物は飴菓子だそうです。

 食後に供する最良の甘味を追求するべく西の王都に向かったのは良いが思ったより移動に時間が掛かり、到着時には王城の門が閉ざされ中に入れて貰えなかった。その辺は規則なのでやむなしと石碑に刻まれた開門時間を確認してから壁外の宿屋に泊まったが、近ごろ王都で話題の飴菓子とは如何なるものなのだろうか。
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