カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

とある蒐集家の棚より・お望みの結末

2017-11-30 19:42:15 | とある蒐集家の棚
たかあきは『メトロノーム』と『月琴』に関する物語を創作してください。

 失恋の痛手から激しい無差別破壊行動に走るメトロノームを止めるべく俺が用意したのは、月琴だった。
 コイツは普段全く喋らないが、恋歌を奏でさせたら落ちない相手はいない程のたらしで、俺の目論見は見事に成功する。
 そして現在、棚の上では蕩けるような恋歌の緩やかなリズムに併せて控えめに拍子を刻むメトロノームの姿が見られる。
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とある蒐集家の棚より・彼女の持ち込んだ鉢植え

2017-11-29 21:38:24 | とある蒐集家の棚
たかあきは『観葉植物』と『観葉植物』に関する物語を創作してください。

 彼女が僕のアパートに置いた鉢植えは、きりっとした香りのする松葉のような葉を茂らせていた。なのでこれはきっと葉っぱを愛でる鉢植えだろうと勝手に思っていたら、彼女は鉢植えから切り取った枝を料理や芳香剤代わりに使い始めた。更に暫くすると青い花まで咲き始めた。
 だから、随分とお得な観葉植物だねと彼女に言ったら死ぬほど笑われた。
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とある蒐集家の棚より・見えない星を奏でる

2017-11-28 20:22:59 | とある蒐集家の棚
たかあきは『月琴』と『星座盤』に関する物語を創作してください。

 姉の持つ月琴の弦は星辰に対応していて、うまく奏でると星の音色を再現できるのだそうだ。嘘ではない証拠にと姉が爪弾くと、確かに黒曜石の星座盤に嵌め込まれた色とりどりの貴石の星たちがちかちかと瞬いてみせる。
 けれど、父祖の時代から地下街の人工灯の元で暮らしている僕らは、本物の空や星を見たことなど一度も無い。
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とある蒐集家の棚より・華麗なる三角関係

2017-11-27 21:46:19 | とある蒐集家の棚
たかあきは『ガラスのコップ』と『メトロノーム』に関する物語を創作してください。

 メトロノームが懸想したのは青い硝子のコップだった。アイツには方位磁針がいると説明したが聞く耳を持たないので、もう勝手にしろと放っておいたら、どうやら無理心中を図ったらしいメトロノームに延々と錘をぶつけられたコップにヒビが入るわ、発狂した方位磁針が踊り狂うわと余計酷い事になった。
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とある蒐集家の棚より・101回目の失恋

2017-11-24 21:14:34 | とある蒐集家の棚
たかあきは『金属製のハンドベル』と『メトロノーム』に関する物語を創作してください。

 何だかよく分からんが、アンティークのハンドベルが隣に置いておいたメトロノームに惚れたので交際を許して欲しいとがなり立ててきた。あまりに煩いので当のメトロノームに聞けとネジを巻いてから作動させると、返事は一分の隙も無い否定の連続だったらしい。気の毒だが、俺にはどうしてやる事も出来ない。
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とある蒐集家の棚より・最後の挨拶

2017-11-23 18:56:50 | とある蒐集家の棚
たかあきは『白い貝殻』と『旧式ゲーム機』に関する物語を創作してください。

 子供の頃に遊んだゲームでは、ヒロインの女の子がくれた巻き貝が連絡用アイテムだった。やがて彼女との悲しい別れの果てにゲームのエンディングを迎えた僕は、現実の世界であの巻き貝と同じ形の貝殻を何年もかけて必死に探し当て、やがて見付けたそれをゲームと同じように耳に押し当てた。

 聞こえてきたのは、ほんの微かに、けれど間違いなくありがとうと囁きかけてくる彼女の声。
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とある蒐集家の棚より・追憶の日

2017-11-22 20:25:49 | とある蒐集家の棚
たかあきは『猫の置物』と『あの日の写真』に関する物語を創作してください。

 奇跡的に手元に残されたあの日の写真には、私を含めた家族全員が映っている。祖父母に両親、兄二人に姉一人、妹と弟が一人ずつ。そして私が抱いている猫のサバ吉だ。今となっては私以外は誰一人残っていないが、私がサバ吉をモデルに作った写真立てに飾っている写真画面では、皆、この日の午後に何が起きるか知らぬまま幸せそうに笑っている。
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とある蒐集家の棚より・懸想の果て

2017-11-21 20:05:43 | とある蒐集家の棚
たかあきは『方位磁針』と『ガラスのコップ』に関する物語を創作してください。

 何故かは知らないが、その方位磁針は赤く塗られたN極の先端を必ず青いガラスのコップに向ける。
 位置をずらすと面白いように追ってきて、引き離すとやさぐれたようにランダムな動きを見せるので、分かったコイツはお前にくれてやろうとコップの底に方位磁針を置いたら、そのまま針がゆっくり回り出して止まらなくなった。
 ちなみに、1ヶ月経った今でも針の回転が止まる気配はない。
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とある蒐集家の棚より・溢れたワイングラス

2017-11-20 23:03:43 | とある蒐集家の棚
たかあきは『皿の上のコイン』と『ガラスのコップ』に関する物語を創作してください

 彼女は僕の眼前でグラスにワインを注ぐと、無言のまま皿上のコインを一枚一枚グラスに滑り込ませていった。やがてグラスからワインが溢れ出すと、やっぱり無理だったねと呟いて部屋を出て行く彼女を僕は止められない。
 コインは僕の心ない言葉でワインは彼女の心、考えてみれば受け止められないのも無理はなかった。
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とある蒐集家の棚より・伯母からの贈りもの

2017-11-18 20:59:59 | とある蒐集家の棚
たかあきは『ガリレオ式温度計』と『蝉の標本』に関する物語を創作してください。

 その筋では有名な魔術小物製作者だった伯母が私にくれたのは、季節限定の環境音発生装置だった。ガリレオ式温度計の動きに連動した蝉の標本が鳴き声を上げるもので、煩かったら温度計と蝉を離せば黙るよと言われたが、伯母が亡くなった今でも、ヒグラシのゆったりとした鳴き声は毎年私の部屋で染み入るような音色を響かせている。
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