バスを待っていると何となく透けた車両が停まった。とりあえず私は乗らずに前に並んでいた透けた人たちを見送って次のバスを待っていたが、何故か一人だけ残っていた透けた人があいつはまだ来ないなどとブツブツ呟いていたので知らない振りをした。この人はあいつが来るまでこうしているのだろうか。
バスを待っていると何となく透けた車両が停まった。とりあえず私は乗らずに前に並んでいた透けた人たちを見送って次のバスを待っていたが、何故か一人だけ残っていた透けた人があいつはまだ来ないなどとブツブツ呟いていたので知らない振りをした。この人はあいつが来るまでこうしているのだろうか。
自らを異教徒と称する祖父は両親が崇める神を崇拝せず、神を称える芸術からも背を向けていた。祖父は優しい人だったので、私はその美しさを理解して貰おうと何度も讃美歌を歌って聞かせたが、祖父は寂しげに微笑みながら儂が進んできた道はその美しさを許容できないと答えるのだ。
当然だが通常は義眼の瞳が焦点を結ぶことはない、だが目の前に置かれた箱に収められた鳶色の義眼は何故か明らかに僕を見詰めていた。薄い硝子製の細工に魂が宿る理由は一つしか考えられなかったので、この義眼の出所、と言うか本来の持ち主については出来るだけ考えないことにした。