カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

骨董品に関する物語・フリーメイソンの腕章

2021-10-31 13:33:25 | 突発お題

 麗しき花冠の下で交わされた盟約は、固く握られた手が解かれるような当然さで崩れ去った。思いも、それぞれの立場も永遠など望むべくもないまま変転する中、我々は枯れ果てた花冠を蹴散らして幾多の殺戮の末に終焉を迎えた。そこに至るまでの歳月に数百年を要したのは果たして僥倖だったのか、或いは。
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骨董品に関する物語・大型の真鍮の砂時計

2021-10-24 13:18:02 | 突発お題

 奇跡によく似た魔力で契約者の運命を捻じ曲げるのは、悪魔の常套手段だ。人生のやり直しと言う毒の蜜を舐め、同じ場所を道を変えて巡るだけの迷路に誘われた哀れな人間は決して真の場所に辿り着けない。だが、悪魔の示す砂時計を逆さにと願う人間はいつの時代でも後を絶たないのだ。
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骨董品に関する物語・ベツレヘムの星のアクセサリー

2021-10-22 22:09:38 | 突発お題

 本当は見せちゃいけないんだけどねと苦笑いしながら彼は砕けた星の欠片を私に示した。今でこそ溜息が出るような星を刻む彼も修行に入った当初は失敗続きで材料の貝を何度も駄目にしてきたと言う。そんな人前には出せない無数の屑星が、実は彼の星を導き支えてきたことを忘れないと。
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幽霊その34・拾うもの、捨てるもの

2021-10-17 17:56:30 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは大昔、職場で、元気な猫の幽霊に出会い、一緒に逝きませんかと泣かれました。

昔勤めていた田舎町の会社で、敷地内に猫の骸が横たわっていたことがある。仕事が終わったら埋葬しようと思っていたらゴミと一緒に捨てられたという骸の代わりに元気に鳴く化け猫がいた。その後転職した私は化け猫と共に街で暮らし始めたので、あの会社がどのような問題でいきなり倒産する事になったのかについては、よく知らない。
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骨董品に関する物語・ヴァイオリン型のマッチケース

2021-10-12 23:19:19 | 突発お題

 人間が一生の間に感じられる幸福の数は、せいぜいこのケースに入るマッチの本数程度だと彼は言った。たとえこの世界に無数の幸せが存在していようと、それらの全てを感じられるだけの容量など人間には存在しないと。それなら無数の幸せを追わず一つだけの幸せを感じながら生きればいいのではないかと尋ねる僕に、彼はただ嗤うだけだった。
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骨董品に関する物語・携帯式の日時計

2021-10-12 23:16:35 | 突発お題

 曽祖父の遺品である精巧な携帯式の日時計は、どういう訳か地上のどの場所でも正確な時間を差す事がなかった。故に大概の人間は其れを只の装飾品と認識したが、その日時計を形見分けで貰った末の曾孫だけは辛抱f強く使える場所を探し続け、やがて探し当てた。但し見付けたのは彼の玄孫の代になってから、別の惑星でだった。
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幽霊その33・ずれ

2021-10-02 14:47:54 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは先程、スーパーで、血塗れの老人の幽霊に出会い、何処に行けばいいのかと祝福されました。

 立派な鎧姿の爺さんを見た時、このスーパーは古戦場跡に建てられたのかとしか思わなかったが、友人に話したところ敷地の片隅に碑があるだろうと言われた。どうやらスーパーを建てる際に碑を移動して爺さんは置き去りになったらしい。碑の場所まで誘導してやればいいのだろうが、俺にそんな力はない。
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