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カケラノコトバ
たかあきによる創作文置き場です
100「カミガミ」より ・ カミサマガ、タタズム、コノマチ
2014-10-15 19:57:45
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和モノ好きさんに100のお題
人の及ばぬ力を崇め
善き力には感謝を
悪しき力には恐れを抱きながら
それを祀り
日々の暮らしの中で共に生き
平穏を願う人々と
只そこに在る
沢山の「神様」と呼ばれる力が
共に暮らす世界
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099「屋台蕎麦(そば)」より ・ 恩讐の斜め下へ
2014-10-14 19:40:10
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和モノ好きさんに100のお題
主人公は若い狐でね、
旅をしながら幼い頃に両親を撃ち殺した仇を捜しているんだ。
やがて様々な出会いと別れの末に、とうとうラーメンの屋台を経営している仇を見付けて復讐を始める。もちろん只では殺さない。連日のように変化と分身を駆使して屋台のラーメンを絶え間なく注文し続けるんだ。
休む間もなくラーメンを作り続け、材料が尽きてもなお注文を続ける客の存在に肉体的にも精神的にも疲弊した仇が力尽きると、本懐を遂げた狐もまた倒れる。何しろラーメンの油と調味料は大量摂取するには健康に悪すぎる代物だからね、感動的だろ?
「言いたいことがそれだけなら次はもう少しまともな企画もってこい」
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098「胡蝶」より ・ 幻の蝶
2014-10-13 21:22:12
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和モノ好きさんに100のお題
数年前、ひらひらと舞う蝶を追って森を進んでいたら、いきなり視界が開けて沢山の蝶が舞う見渡す限りの花畑に着いた。花は色鮮やかで見たこともない種類のものだったが、両親から「山の物はむやみに手にしてはいけない」と硬く戒められていたので持っていた携帯で写真を撮るだけにした。
家に帰ってから確認してみると何故か花畑の写真の代わりに撮った覚えのない森の木立の写真があって、不思議に思いながら母に話すと「帰って来れて良かったね」と言われた。
そして、もう二度と家には戻らなくて良いと思いながら花畑を探して回っているのに蝶は現れず、僕はただ延々と続く暗い森の中を歩き続ける。
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097「紋」より ・ 家紋の思い出
2014-10-12 22:36:25
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和モノ好きさんに100のお題
中学生の頃、美術の時間に家紋を木板に彫るという課題が出たことがある。
彫刻が得意だった私は早々に作品を仕上げてしまい、その頃親しかった友人が自分の作品にいつまでも愚図愚図と時間をかけるのを内心馬鹿にしていた。だが、作品が完成して高評価を貰ったのは、細く細かい線以外の部分を丁寧に削り落とし、源氏車を浮き彫りにした友人の作品だった。そうやって私は何度も友人に負け続け、耐えきれなくなった時に友人を失った。
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096「さかずき」より ・ 繰り返される最後の宴
2014-10-11 09:37:11
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和モノ好きさんに100のお題
普段は全く飲めない奴が、今度はもう二度と戻れないだろうからと呟きながらコップに注いだ酒を仰いだ。そして、言葉通りに二度と戻ってこなかった。だから俺はそれから毎年奴が行ってしまった日に、俺のコップと、あの日奴の使ったコップに酒を注ぐ。すると奴のコップからはいつの間にか酒が消えるのだ。
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095「お主も悪よのう」より ・ 悪代官様より一言
2014-10-10 21:46:37
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和モノ好きさんに100のお題
菓子折を抱えた漢字Tシャツにポニーテールという姿で現れた奴を取りあえず近所の目に触れる前に部屋に引っぱり込んだ。
以下、尋問と弁明。
「何だそれは」
「山吹色の菓子と悪代官Tシャツ。髪はまあ、髷のつもり」
「…それで?」
「いやその、これなら時代劇ファンのナオンはパツイチでコロイチだと」
「何処の馬鹿野郎から吹き込まれた、そんな神聖モテモテ王国論理」
「特に名を秘すがお前の兄貴」
「オッケー認識したから後で絞める。で、今日は何の用だ」
「結婚してください」
「いいだろう」
そんなわけで私の旦那は悪代官だ、多分。
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094「路地裏」より ・ 喰らう少女
2014-10-09 21:06:03
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和モノ好きさんに100のお題
蝋石で道路一杯に描かれた絵は子供にしては達者なものだった。何を描いたのかと少女に訊くと妖怪だという。何処で見たのかと訊くと此処で見たという。妖怪はどうなったと訊くと食ったという。美味しかったと笑いながら開いた口元には人間の幼児とは思えぬ乱杭歯がぞろりと覗いていた。
「お兄ちゃんは羽根が生えているんだね、鶏肉みたいな味かな」
どんな時代でも子を捨てる大人は存在し、大人の庇護を失った子は実にあっさり死ぬ。恐らくは少女も飢えて力尽きたのだろう。
だが、どれだけ哀れであろうと、むしろ哀れであるが故に、滅する以外の方法は無かった。
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093「もみじ」より ・ うちのゴルゴ
2014-10-08 21:40:01
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和モノ好きさんに100のお題
先代猫の寿命終了と共に深刻化した農作物に対する鼠害防止にと、爺ちゃんが何処からか新しい猫を連れて来た。何となく枯れ葉色っぽい茶虎の鉢割れで、体と態度が異様にデ力く、目付きが無茶苦茶悪いので取りあえずゴルゴと名付けられた猫は一月足らずで近在猫のボスとなり、鼠を駆逐しつくした上に野性動物すら狩猟の対象にしはじめた。それは良いのだが、最近は何故か付近住民に「もみじおろしのゴルゴ」と呼ばれて恐れられているようだ。
お前一体ご近所様の前で何をやったゴルゴ。
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092「夜叉」より ・ 鬼の貌(かお)
2014-10-07 18:30:17
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和モノ好きさんに100のお題
私が初めて鬼を見たのは五歳の時だった。夜中に目を覚ますと客間から怒鳴り声が響いてきて、けれどそれが母の声だと知ったのは、こっそり覗いた客間で声を張り上げる女の顔を見てしまったからだった。翌日から父は姿を消し、二度と戻らなかったが理由は知らされず、私は父が鬼に喰われたと信じた。
あの日、私をあれほど怯えさせた鬼が何処から来たのか知ったのは、背に包丁を突き立て血まみれの姿になって足下に転がるあの人から視線を外して顔を上げた時、鏡の中から今の私を見据える姿と対峙した瞬間だった。
私の心を食い破って表に現れた、哀れで醜い鬼の貌。
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091「駿馬」より ・ 草原情歌
2014-10-06 20:25:10
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和モノ好きさんに100のお題
切りそろえられた木を膠で貼り合わせて胴部を作り、竿部を取り付ける、竿部の先端に鬣を持つ馬の首を彫り、色を塗り、弦を張る。
そうやって出来上がった馬頭琴を弾きながら思うのは、白い馬の哀しい昔話。
殺されてしまった馬の鬣と腱を使って作り出された楽器は、時代を越えた異国でも草原の曲を奏で続けている。
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