カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

旅路その100・ミノタウロスの皿

2019-11-03 20:09:41 | 旅人の記録
たかあきは霜月の廃墟に辿り着きました。名所は神殿、名物は肉料理だそうです。

 とうに滅びた文明が遺した神殿の壁画には、牛の顔を持つ人々が美しく飾り立てた人間の娘を囲んで饗宴を行う場面が描かれていた。刃物によって解体され供される己自身を娘は恍惚の表情で眺めやり、壁画の脇には我々には完全に解読出来ない文字で娘の容姿と美味に対する賞賛が並べ連ねてあるらしい。
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旅路その99・冬の魚

2019-11-01 19:54:56 | 旅人の記録
たかあきは収穫月の大都市に辿り着きました。名所は公園広場、名物は海鮮鍋だそうです。

 晩秋から初冬の頃、その街の駅前広場には鍋物の屋台が立ち並ぶ。特に人気なのは魚に雪と書く鱈のすり身と新鮮な野菜を贅沢にぶち込んだ辛めの鍋で、別の屋台から購入した握り飯と共に、期間中はそこで食事を済ませると言う地元民も少なくない。ちなみに握り飯は鍋物が冷めるより早く買うのが通の仕事だ。
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旅路その98・魚料理の理由

2019-10-31 19:41:39 | 旅人の記録
たかあきは花月の荘園に辿り着きました。名所は名刹、名物は魚料理だそうです。

 その土地にある名刹で修行するものは魚食が禁じらtれていない。何でも飢えて動けなくなっていた坊さんを見かねた土地のものが焼いた魚を分けてやった時に坊さんが生臭だからと遠慮すると、コレは木の葉だから坊さんでも食えると言い張って食べさせて以来の事だそうだが、色々と微笑ましい話ではある。
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骨董品に関する物語・オパールセントガラスの塩入れとボンボニエール

2019-10-31 19:22:49 | 旅人の記録

 錬金術課題でオパールの游色が煌めく優雅なガラス製の塩入れを完成させた友人が、容器に入れた塩まで虹色に輝くようになるのだが大丈夫だろうかと尋ねてきた。塩味のままなら大丈夫だろうと投げやりに答えると、実は菓子壺に入れた飴玉も虹色になったと言うので自分で処理しろと見捨てた。
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旅路その97・不穏の林檎種(アップルシード)

2019-10-29 20:27:44 | 旅人の記録
たかあきは熱月の観光地に辿り着きました。名所は公園広場、名物は果物だそうです。
 
 駅前公園広場の至る所に植えられた林檎樹の背は高く、たわわに実る果実にはとても手が届かない。これじゃ林檎狩りも梯子に登ってするのかしらと不安がる彼女に、林檎狩り用の樹は背が低いから大丈夫だよと言うと、なら此処の樹も低くすればいいのにと言われてちょっとだけ二人の道行きに不安を覚えた。
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旅路その96・おしまいのはじまり

2019-10-28 21:20:10 | 旅人の記録
たかあきは風月の都会に辿り着きました。名所は特に無し、名物は貝料理だそうです。

 遠距離恋愛中の彼から話があるので此方に来てくれと言われ、確かに話をする必要があると思った私は新幹線と電車を乗り継いで彼の元に向かった。結局彼の用事とは寂しかったから会って話をしたかったのだと笑顔で言われ、嫌いだと何度も言った牡蠣尽くしの料理を勧められた直後、私は自分の話を始めた。

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旅路その95・畑の肉

2019-10-27 22:38:57 | 旅人の記録
たかあきは東国の観光地に辿り着きました。名所は名刹、名物は肉料理だそうです。

 でかくて歴史ある寺があるせいなのか、この街の名物は大豆肉料理なのだそうだ。肉より割高で肉より不味い偽肉料理は俺の口には合わなかったが、半ば嫌がらせで土産品として買ってきた大豆肉は健康に良さげだと言う理由で友人間で好評だった。ちなみにどいつもこいつも大量の肉と一緒に調理したらしい。
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旅路その94・角のない鬼と裂けた果実

2019-10-26 16:43:54 | 旅人の記録
たかあきは実月のド辺境に辿り着きました。名所は神社、名物は果物だそうです。

 実は一般的な母親という存在に心当たりが無いので、とりあえず鬼子母神を信仰している。ちなみに鬼子母神に捧げる果実と言えはザクロで血の味がするとも言われるが、むしろ肉が裂けて開き、その中身を覗かせる様が柘榴を思わせるのではないかと、嘗て自分が負わされた傷跡を見るたびに思うのだった。
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旅路その93・荒野の果実

2019-10-23 19:18:28 | 旅人の記録
たかあきは熱月の廃墟に辿り着きました。名所は個人の邸宅、名物は野菜料理だそうです。

 いずれはこんな場所で朽ち果てたいなどと物騒なことをぬかしながら廃墟に引っ越した奴は、意外に元気そうに見えた。何でもこの荒地の石と石の狭間から芽吹いて鮮やかな葉を茂らせ、小さな赤い実を実らせる植物を常食しているからだと俺にも勧めてきたが、奴の緑色の肌に気付かぬふりをして断った。
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旅路その92・溶ける花

2019-10-22 18:52:05 | 旅人の記録
たかあきは雪月のド辺境に辿り着きました。名所は花畑、名物は砂糖菓子だそうです。

 一年に一度、この季節でないと見る事が出来ないと言う花畑を見る為には激烈に接続の悪いバスか車を使うしかない。何とか辿り着いた村でお客さんギリギリだったねと案内された花畑の美しさは格別だったし、花をモチーフに造られた砂糖菓子の造形や実際に食した時の口溶け感覚も素晴らしいものだった。
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