カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

そこに居なかったあの子

2016-02-29 00:43:42 | 依頼です、物書きさん。
下らないことだけに異常に熱心な社会人と自ら首輪に繋がれることを望んだ男が記録した「写真」に纏わる物語

 妙な写真が撮れたと言いながら先輩が僕に差し出してきた画像では、見たことのない女の子がこちらを見て笑っていた。まさかそっちの趣味に目覚めたのですかと問うた僕を当然のように殴り倒してから、先輩は元の風景にこんな子はいなかったと断言する。そんな訳で、僕と先輩はそこに居なかった子の正体を探るべく動き出したのだが、それは同時に誰にとっても癒やしがたい傷跡を辿る道程となった。
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こどものくに

2016-02-27 12:56:11 | 依頼です、物書きさん。
明るく後ろ向きな不良と愚鈍な「かみさま」が理不尽な現実から幸せな夢へ逃げる話

 昔、子どもの為に作られた楽園が当の子どもにとっては全く楽しくないと言う話を読んだ事がある。大金は使い方を判らないまま親に巻き上げられ、勝負事は技量が高レベルに設定されて勝敗が定まらず、最終的に物語では主人公によって壊された、楽園に良く似た嘘で固められた世界に、今は誰も幸せに出来ない無能な神様と、それでも神様を好きな不良が二人だけで遊んでいる。
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括れない理由

2016-02-25 21:06:40 | 依頼です、物書きさん。
膨大な借金を抱えることとなった天才と自称「サンタクロース」の男との優しい嘘の物語

 金で回らなくなった首をいっそ括ってしまおうと準備していたら、いきなり現れた赤い服の老人に頼むから止めてくれと哀願された。何でも俺がこの先発明することになる機械によって、老人達の仕事内容が劇的に簡易化できるのだそうだ。そうしたら夢だった家族と一緒のクリスマスを過ごせるのだとか。
 
 新しい発明はまだ完成していないが、あの時俺が首を括らなかったのはそういう理由だ。 
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言うなれば、ペテン師

2016-02-24 23:52:57 | 依頼です、物書きさん。
ホテル住まいの法律家と自称「天使」の女性が別れるまでの話

 別に自分は金持ちだからホテル住まいをしているわけではなく、むしろ己の命と親父の金が尽き果てるまでの限定生活を楽しむ為にそうしているんだと言うと、でもその生活は貴方の中の倫理感も食い潰しているのよと彼女が答えた。だから私が止めさせると宣言したのち彼女は僕の遺産と共に失踪し、引き替えのように不治だったはずの僕の病は快癒した。
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当たろうが当たるまいが八卦

2016-02-23 00:21:57 | 依頼です、物書きさん。
見るもの全てが8bitに見える占い師と年の離れた親友、彼らが織成す封鎖された遊園地からの脱出劇

 俺の若い頃は』が口癖の占い師をやっている友人に、極上の廃墟写真を撮りたいと言う理由で閉鎖された元遊園地の敷地探索に付き合わされたら、そこは今時〈インベーダー〉の前衛基地だったらしい。喫茶店で随分地球防衛に励んだなと笑いながら、一見すれば可愛らしいとも言える外見で本気と書いてマジの殺しに掛かって来る相手に対してその辺の石や鈍器で応戦する友人を、DS世代の僕は必死に引っ張って逃げた。
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犬がどれ程に吠えようと

2016-02-22 00:17:09 | 依頼です、物書きさん。
夢を失ったボディーガードと無駄にお節介で有能な警察官が別れるまでの話

 長年の友人が己の不手際から護衛していた少女を誘拐されて職も住居も失ったと聞いたので暫くの間俺の家に置いてやることにした。ついでに行方不明となった娘の捜査状況も逐一チェックを重ねるようにしていたら、誘拐は狂言で娘は自分の意思で男と共に暮らすことを選んだと判り、友人は傷心を抱えて帰郷していった。
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ふりむいては、いけない

2016-02-20 00:28:00 | 依頼です、物書きさん。
愛し方を知らない小学生と自ら首輪に繋がれることを望んだ男、彼らが第一発見者になった怪奇事件の物語

 母親が死んで以来塞ぎ込んで暴力的になった息子を持て余しつつも、不憫に思ってなるべく一緒に過ごすようにしていたら、犬の散歩の途中に勝手に他人様の庭に入っていき、慌てて止めようと追い掛けた直後にとんでもない悲鳴を上げて戻ってきた。後で知ったのだが、その時息子が見たとんでもない光景が、今回の事件の発端だったらしい。
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他力本願の哀歌

2016-02-18 21:19:08 | 依頼です、物書きさん。
愛し方を知らない音楽家と一年以上口もきいていない兄、二人が二人の出会いをやり直す物語

 他には何も要らないから音楽の才能だけを下さいと神様に頼んでこの世に産まれて来た俺は、絶望的なまでに関係が破綻した実の兄と刺し違える形で心中することになった。
 だから今度は、特別な才能は要らないから家族で仲良く出来るようにして下さいと頼んだら、それは何より難しいことだと却下された。
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聖家族を捜して

2016-02-17 19:47:01 | 依頼です、物書きさん。
無気力な芸術家と迷子の子どもが、期間限定で仲の良い家族として振る舞う話

 愛を知らないお前が『絵に描いたように幸せな家族』を描けるようなる為に暫く貸してやろうと、兄が自分の息子をうちに押し付けてきた。どうも夫婦で旅行するのに邪魔らしい。当の甥は僕以上に脱力と言うよりは解脱した態度で、親の機嫌を取るよりも叔父さんと平和に暮らしていた方が良いと言い切り、そんな訳で僕たち二人の家族ごっこが始まった。
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壱百壱話目の物語

2016-02-16 00:52:17 | 依頼です、物書きさん。
人生に疲れた芸術家とフェミニストな友人が始めてしまった夜明けのこない百物語

 先日死んだばかりの友人が化けて来て、延々と俺に向かって生前の恨み言を話しはじめた。アイツは相当に悲惨な家庭環境で産まれ育ち、それでも己の才能一つで世に知られる存在になったせいか言動が過激で、故に生前は周囲との無用な軋轢が絶えなかったのだ。
 だから、俺はその恨み言の一つ一つを奴とは違う視点で語って別の話に変えてやってから、最後に『それでも俺はアンタを愛していたよ』と言った。
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