竜の塔まではどう行けば良いのでしょうか。
そんなことを勇者の格好をした男に聞かれたので、ちょうど目的地が同じだったので塔まで同行することになった。
至る所に伝説の勇者や姫、それに塔に姫を閉じ込めた悪竜の姿が闊歩する祭の街中でも本物らしい鎧を身に付けて立派な鞘に入った剣を帯びた(ただし刀身は木剣にすげ替えてきたらしい)、長身できびきびした動作の男は一際目立っていたせいか道中に何度も写真撮影を頼まれていたが、何と実は本当にこの街の祭の発祥になった『竜の勇者』の子孫だという。
何でも一千年後の再会を約した竜に会いに来たらしいが、まさかここまで塔が観光地化して祭まで行われるようになるとはご先祖様も思っていなかったでしょうねと笑った。
「まさか本当に竜が飛来するとは思っていませんし、そもそもそんなことになったら大惨事が発生しますが、何分にも先祖代々の遺言となっていたので、代表で私が参りました」
そんな風に教えてくれた男に、私はウチに先祖代々伝わってきた『人間の娘に惚れて竜の寿命も力も全て捨てて人間になったご先祖様が、戦いから千年後に因縁の地で勇者の子孫と再会するようにと息子に遺言を残した』という伝説について一体どういう風に説明するべきか悩むことになった。
ちなみに『塔に閉じ込められた姫』も私のご先祖様だが、勇者とご先祖様達の間に何があったかは知らない。