カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

とある蒐集家の棚より・夢見る月光

2018-03-10 22:43:24 | とある蒐集家の棚
たかあきは『月の石』と『皿の上のコイン』に関する物語を創作してください。

 月の石のいいのがありますよと言われた私がいつもの様に数枚のコインを皿に載せると、コインが消えると殆ど同時に銀白色に輝く石が皿の上に現れた。それでは良い夢をと言った商人の気配が消えてから、ひんやりと冷たい石を飲み込んだ私はベッドに横たわり、身体の中で月の光が溶けて消えるまで、その記憶を辿るのだ。
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とある蒐集家の棚より・こいのはてに

2018-03-09 22:25:12 | とある蒐集家の棚
たかあきは『あの日の写真』と『魚の化石』に関する物語を創作してください。

 恋は盲目とは良く言ったもので、あの頃の僕には間違いなく彼女が世界一の女性だった。それなのに、どうしてあの日に酷い振られ方をして数年経った今、一緒の写真には死んだ魚の目をした彼女が映っているように見えるのだろうか。それとも、これは後の彼女に訪れることになった溺死を顕す死相だったのだろうか。判らない。
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とある蒐集家の棚より・形見の香り

2018-03-08 18:44:55 | とある蒐集家の棚
たかあきは『お香』と『万年筆』に関する物語を創作してください。

 父が常に持ち歩いている万年筆は若くして亡くなった父、つまり私にとっては祖父に当たる男性の形見分けで貰ったものだという。重たげな金属軸の万年筆で父が何かを書くと決まって爽やかな香りが周囲に漂うのだが、父に言わせると、これは若かった頃の母が着物を着るときに使う香だそうだ。
 ただし、母は未だに存命なので今ひとつ不可解ではある。
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とある蒐集家の棚より・みどりのいかり

2018-03-07 21:30:05 | とある蒐集家の棚
たかあきは『観葉植物』と『灰皿と吸い殻』に関する物語を創作してください。

 彼とは、何度言っても私の部屋のベンジャミンに煙草の煙を吐きかけるのを止めなかったという理由で別れた。当人の言い訳では私とベンジャミンの仲が良すぎて嫉妬したのだそうだが、お陰で私のベンジャミンは無残に葉が落ちて枯れてしまった。
 それから数年後、私は、煙草の煙が充満しきった部屋で窒息死していた彼が発見されたと聞いた。
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とある蒐集家の棚より・色褪せたものと色褪せないもの

2018-03-06 19:36:20 | とある蒐集家の棚
たかあきは『消しゴム付き鉛筆』と『押し花』に関する物語を創作してください。

 削っていない消しゴム付き鉛筆と押し花栞の入った包みは、確か誕生会前日に友達と大喧嘩をやらかして僕だけ会に呼ばれずに渡し損ねたものだった。歳月が過ぎて友達は元友達となり、押し花の色も随分色褪せた今、僕は鉛筆を削って存分に尖らせた芯の先で、今、僕の目の前にいる友達の顔をスケッチブックに描くのだ。
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とある蒐集家の棚より・紙の帝国

2018-03-02 23:35:39 | とある蒐集家の棚
たかあきは『旧式ゲーム機』と『猫の置物』に関する物語を創作してください。

 ある日、とあるゲームを購入したら、特典でゲーム内の猫がペーパークラフトになったものが付いていた。
 またある日、映画のキャンペーンで作中の犬がペーパークラフトになったものをダウンロードした。
 更にある日、五〇枚以上の紙で作る動く城のペーパークラフトをゲットした。

 全部完成させて部屋に飾ったら、何だか訳が判らなくなった。
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とある蒐集家の棚より・嘘つきの記憶

2018-03-01 19:51:49 | とある蒐集家の棚
たかあきは『あの日の写真』と『消しゴム付き鉛筆』に関する物語を創作してください。

 ある種の人間は己の記憶を常に書き換える。それはノートの内容から必要の無い物や都合の悪い記述を鉛筆や消しゴムを使って書いたり消したりするようなもので、全体からすれば些細な内容であることが多いが、自覚無く行われる為に、他者の記憶との齟齬から軋轢が発生しても決して己の咎を認めないのだ。
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とある蒐集家の棚より・化石の記憶

2018-02-28 19:07:27 | とある蒐集家の棚
たかあきは『マグロのぬいぐるみ』と『魚の化石』に関する物語を創作してください。

 魚の化石を見ながら、ぬいぐるみの紅子さんはどれ位経ったら化石になるのかな?と姪が尋ねてきたので、少し考えてから『紅子さんが堆積した泥に埋もれて化石化して、その地層が地殻変動で隆起して姿を現すまで長くて三億年以上、短くて五千五百万年くらい掛かると思う』と答えたら、そんなに掛かるなら、別に化石にならなくて良いと言われた。
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とある蒐集家の棚より・今、目の前にある問題

2018-02-27 18:55:33 | とある蒐集家の棚
たかあきは『ガラスのコップ』と『空のコーヒーカップ』に関する物語を創作してください。

 今、オレの目の前にあるのが水の入ったガラスコップで飲みたいのはホットコーヒー、お前ならどうすると友人に電話を掛けると、それは心理テストかと聞かれたので現実問題だと答えると、好きなだけ悩めと電話を切られた。そんなわけで今までずっと悩んでいるのだが、あれから一体どれ位の時間が経ったのかが、どうしても思い出せない。
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とある蒐集家の棚より・星のサボテン

2018-02-26 21:08:53 | とある蒐集家の棚
たかあきは『星の砂』と『ガラスのコップ』に関する物語を創作してください。

 カラーサンド代わりに星の砂を使って植えたサボテンは、何故かそのうち図鑑でも見たことが無いような形に育った。
 変種か何かだろうと気にせず育てていたら、そのうち勢い良く開いた蕾から星のような種粒を周囲一面にまき散らした。種粒はその後、凄まじい勢いで繁殖しまくっているのだが、これは世界の終わりの予兆か何かだろうか。
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