カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

店の名は琥珀亭・奏でる

2017-03-31 23:32:09 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【指の意味】というテーマで創作してください。

 秘訣と言われても、と楽師は戸惑いながら続ける。彼にとって三線の弦を弾いて音を出すというのは自分の声を出すのと同じ位に自然なことで、故にどうやったら三線を弾けるかという問い掛けは言葉をどうやって覚えるのかと同じ位に答え辛いのだそうだ。
 ただし、上手く弾けるようになるには練習以外の対応は存在しないとの事。
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信じようと信じまいと

2017-03-30 21:09:16 | 雑記
 嘘のような本当の話。
 帰宅途中に前方の車が猫を引っかけた。どういう弾みか猫は半回転して歩道に移動し、更に半回転してから凄い勢いで車道とは反対方向に逃げていった。その車はすぐ先で信号待ち停車をしていたのだが、ちょうど後ろにいた私に「今の何ですか?」と聞いてきたので「猫です」と答えたら物凄いヤッテシマッタ感溢れる表情になった。とりあえず「逃げていきましたけどね」と付け加えたら安心したようだ。
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店の名は琥珀亭・恐らくは唯一の

2017-03-30 21:06:03 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【へたくそな口笛を捧ぐ】というテーマで創作してください。

 圧倒的な料理の腕と純粋な腕っ節、そして女子供と動物に対する猛烈な受けの良さを誇る店長だが欠点が全くない訳では無い。音痴なのだ。楽器が弾けないのは元より鼻歌や口笛すらまともな音階を紡げない。勿論子守歌など歌える訳もなく、小さかった娘が眠れない夜にねだったのはいつだってお伽話だった。
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金魚繚乱を読んだ

2017-03-29 23:56:28 | 雑記
 外面はともかく内面は腐り果てた性根の主人公が求めて止まなかった理想の金魚が、彼が掛け合わせに失敗した出来損ないの金魚を集めておいた生け簀から産まれたという展開を読んで、醜の極みが美の極致に最も近いとは、実は皮肉でもなんでもなくこの世界の摂理なのではないかと考えてしまった。
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店の名は琥珀亭・監督の黄金郷

2017-03-29 23:39:07 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【幸福の絶頂に椿が落ちる】というテーマで創作してください。

 別に信じなくて良いけどと前置きしてから、監督は赤い花が咲き誇り、黄金が房となって実る国が自分の故郷だと話し始める。贅沢さえしなければ何不自由なく暮らせるその国を監督が出た理由は、ただ外の広い世界を知りたかった為だけだったという。
 そして、かつて憧れた外の世界の広さと残酷さを嫌と言うほど思い知った今、故郷への道は既に閉ざされているのだそうだ。
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店の名は琥珀亭・楽師の託宣

2017-03-28 23:55:39 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【白線死亡ゲーム】というテーマで創作してください。

 街に馴染んで口数が増えた楽師は、たまに何気なく呟いた託宣めいた言葉が一時期評判になったが、ある日店長の娘に「本当の親子のようだ」と口を滑らせて殴る蹴るの暴行を受けて以来、口数が極端に減った。店長が「アレは寝言のようなものだから相手にするな」と説明すると大概の相手は納得して引き下がるのたが、それでも商業ギルドからやってくる怪しげな客の姿は絶えない様子だ。
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店の名は琥珀亭・美しきつまみ食い

2017-03-27 22:12:55 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【箱の中に詰めたもの】というテーマで創作してください。

 店長が箱の中にお菓子を入れておいたら見付けた娘がつまみ食いした。あからさまな隙間にヤバさを感じて花を詰めておいたら今度は楽師がつまみ食いをして何とか誤魔化そうと奇麗な石や貝殻を代わりに並べてみた。何も知らない店長は注文通り商人ギルドの実力者の妹に箱を渡し、別の意味で好評を博した上に余計な誤解を生むことになった。
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店の名は琥珀亭・白き獅子の養い子

2017-03-24 23:40:24 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【午前零時に浪漫を語る】というテーマで創作してください。

 昔々、ある国のお姫様が絵描きに恋をした。お姫様には優しい兄さんがいて、お姫様と絵描きの仲を祝福してくれたが王様になる前に死んでしまい、お姫様と絵描きは引き裂かれて子供も殺されそうになった。その時、お姫様の祈りを聞き届けた国の守護獣とされる白き獅子が自分の城に子供を連れ去った。
 だから、子供は今でも白き獅子の元で暮らしているという。
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店の名は琥珀亭・そこのけそこのけ奴らが通る

2017-03-23 23:54:55 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【接続不要】というテーマで創作してください。

 餌をやっている訳でもないのに懐かれるんだとは店長の言葉だが、そうだとしたら猫にもモテモテなんだなとは周囲の共通意見だった。実際、たまに道を歩く店長の後を鳴きながら付いていく猫、猫を追いかける幼児、幼児の背中を見守る母親、母親に纏い付く幼女という行列で街の通りが訳の判らない事になる事もあった。
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店の名は琥珀亭・眠れぬ夜のお伽話

2017-03-22 23:00:52 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【午前零時に浪漫を語る】というテーマで創作してください。

 どうしても眠れない夜は店長のお伽話を聞くのが娘の楽しみだった。普段は無口な店長がぽつりぽつりと話してくれる様々な物語の中でも特にお気に入りは幻獣の王を国の守護像として祀る古い王国の話で、今は無いその国の人々が織りなす様々な物語は楽しいけれど店長の語り口は何処か寂しげで、彼女はずっとそれが不思議だった。
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