不細工だが愛嬌のあった彼は喜劇役者として成功したが、生涯に一度でもハムレットを演じるのが夢だったので興行主に相談してみた。そして今までの実績から承諾を勝ち取った彼は猛練習の末に演じた舞台で大喝采を受ける。ただし、それは悲劇の王子を喜劇的に演じた名役者としてだ。
繊細な模様の入った素敵な菓子器を叔父は失敗作だと嘆く。そしてボンボンを入れて蓋を閉め、暫く経ってから開くとボンボンは二つになっていた。増えたボンボンを叔父と一つずつ食べながら何が失敗なのかと尋ねる私に、伯父は菓子を入れたままだと世界を埋め尽くすまで延々と増え続けるんだと哀し気に呟いた。
富をもたらす子供を授かりながら、その有難さを忘れて全てを失った昔話の翁のように、俺もまた喪失の時を迎えた。成功に思い上がり父の代から我が家を支えてきた男を周囲の甘言に乗せられ解雇した俺は、やがて芯材を失った襟のように跳ね上がり取り返しのつかない失態を犯したのだ。
たかあきは誕生日に、学校で、恨みがましい男性の幽霊に出会い、恨みを晴らしてくれと頼まれました。
うちの学校の体育用具室には苛められた末に自殺した男の子の幽霊が出ると聞いていたが、本当に出た。しかも恨みがましい呟きから彼を苛めたのは私の母親で間違いなさそうだった。そんな訳で誕生日の今日、家で私を祝ってくれるであろう両親に対して、どのような態度を取ればいいのかと私は悩み続ける。
うちの学校の体育用具室には苛められた末に自殺した男の子の幽霊が出ると聞いていたが、本当に出た。しかも恨みがましい呟きから彼を苛めたのは私の母親で間違いなさそうだった。そんな訳で誕生日の今日、家で私を祝ってくれるであろう両親に対して、どのような態度を取ればいいのかと私は悩み続ける。
たかあきは旅行中、お寺で、怒りに満ちた表情の子供の幽霊に出会い、あの人に伝えて欲しいと泣かれました。
旅行先の寺で見覚えのある人形を見付けたら、案の定知り合いが奉納したものだった。昔から人形に憑いていた子供が、あの子はもう私を要らないんだと泣くのを慰めることも出来ぬまま彼女に伝えたい事を尋ねると、あの子を幸せにするのが私の願いだったけれど、彼女は私を手放すことで幸せになったのだろうかと。
旅行先の寺で見覚えのある人形を見付けたら、案の定知り合いが奉納したものだった。昔から人形に憑いていた子供が、あの子はもう私を要らないんだと泣くのを慰めることも出来ぬまま彼女に伝えたい事を尋ねると、あの子を幸せにするのが私の願いだったけれど、彼女は私を手放すことで幸せになったのだろうかと。