カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

作品その2・師匠の教えと商売

2018-07-31 20:00:51 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『金剛石』と『夢香草』を材料に『天空の一角獣』を錬成しました。用途は薬用です。

 師匠はたまに、とてつもなく高価な素材を僕に渡して錬成を促してくる。そして躊躇う僕に分量と手順さえ間違えなければ純度が高い物質ほど失敗が少ないんだと断言してみせる。そんな訳で何とか錬成した一角獣の角と呼ばれる万能薬は、虚弱体質の子供を持つ親バカの貴族に売りつけると言っていた。
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作品その1・僕の師匠

2018-07-30 23:33:01 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『陶器の破片』と『月光』を材料に『雨粒の金羊雲』を錬成しました。用途は食用です。

 錬金術師を名乗る人間は何種類かに分類されるが、大体は王立学校で学問を修めた正式術者、ふいご屋と呼ばれる詐欺すれすれの商売術者、術者を自称しつつ独自の学問に励む市井の人間のどれかだ。そして僕の師匠はこの全部に当てはまるという謎の人物で、たまに僕も商売で謎の物質を錬成させられている。
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百冊目・『焦がれし伝説の断絶』

2018-07-28 14:17:20 | サスペンスはお好きですか?
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 私の叔父は怖い話をするのが得意だった。ある日、知っている中で一番怖い話をしてくれるというので期待して聞いていたら、話が一番盛り上がった辺りで何故か用事が出来たと帰ってしまった。その晩、叔父は急に亡くなったので私はその話の最後を知らないままだが、だから多分、今もこうして生きていられるのだと思う。
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九十九冊目・『芳しき一族の舞台』

2018-07-26 19:25:51 | サスペンスはお好きですか?
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 この国を代表して式典を執り行う一族は、常にその姿を国民の目に晒し続けなければならない。それはつまり一歩屋敷の外に出れば、いや、屋敷の中ですら人目を気にしながら過ごさなければならないことを意味する。国民の羨望と尊敬の視線に対して、彼ら一族は決して心を許さぬまま隙の無い笑顔で応えるのだ。
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九十八冊目・『死に至りし孤独の構図』

2018-07-25 21:48:31 | サスペンスはお好きですか?
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 昔読んだ話。彼女は非常に変わり者で、その島ではとうに廃れた歴史的なスタイルでの暮らしを頑なに貫いていた。当然ながら友人どころか近所付き合いすら無いに等しい中、沢山の猫と共に暮らしていた彼女はやがて人知れず亡くなり、ひっそりと葬られたが、彼女自身が幸福だったか、あるいは不幸だったかは、もう誰にも分らない。
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九十七冊目・『孤独なる古の暗夜』

2018-07-24 22:17:58 | サスペンスはお好きですか?
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 逢魔が時に「誰が彼ぞ?」と問われる物の怪である彼は、遥か昔から人間に名前を呼ばれたことがなかった。ある日、彼を退治に来たという男が彼を名前で呼んだが、それは彼の名ではなかったので男は彼に倒された。彼の名を知るものは存在せず、故に誰も彼を倒せない代わりに誰一人彼の名を呼ぶことはない。
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九十六冊目・『広き大都会の楽器』

2018-07-23 20:02:04 | サスペンスはお好きですか?
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 街は楽器に満ち満ちている。
 甲高い音、掠れた音、ブレスの後に響く重低音。様々な音階は決して私を飽きさせることなく、更なる楽器の演奏にと駆り立てるのだ。ただ不満があるとすれば、私が奏でる楽器は例外なく極めて短い間しか音階を奏でることが出来ず、演奏後は完全に壊れてしまうことだろうか。
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九十五冊目・『引き裂かれし一族の部隊』

2018-07-21 18:01:25 | サスペンスはお好きですか?
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 その国の陰の部分、後ろ暗い仕事を長い間担ってきた一族は、用済みになったという理由で里ごと焼き滅ぼされた。奇跡的に難を逃れた里長の息子は、自分の里を切り捨てた国に対して憎悪を募らせながら成長し、やがて復讐を始める。だが、国の為にと里を滅ぼした真の裏切り者は父の弟、彼が慕っていた叔父本人だった。そして叔父と共に里を捨てたかつての仲間によって編成された特殊部隊は、彼を国の敵と定めて命を狙われることになる。
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九十四冊目・『遠き王国の凶行』

2018-07-20 20:19:02 | サスペンスはお好きですか?
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 昔読んだ話。主人公の母は北の国の有名なオペラ歌手だったが、同時に王の愛人でもあったので王妃の命令で殺され、主人公も命を狙われる身となる。自国から逃れ、様々な出会いと別れの末に世界的な大歌手となった彼女は王家に復讐するために北の国で歌うが、そのステージで待っていたのは、彼女を含む誰一人として思いもよらないような奇跡だった。
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九十三冊目・『現れし出来心の記録』

2018-07-19 19:57:16 | サスペンスはお好きですか?
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 特に深い意味もなくやってしまった行動が他人を酷く傷つけることがある。本当にこちらとしては軽い気持ちで弄っているつもりだったが、弄られていた当人は違ったのだと何年もたってから気付かされた。そして、どれだけ許しを乞うても何度引っ越しても、俺の元には奴を死に追いやった俺に対する糾弾が忘れた頃に届く。
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