カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

店の名は琥珀亭・走馬燈の果て

2017-05-31 22:01:33 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【根元から折った鍵】というテーマで創作してください。

 あんたの過去視は走馬燈のようなものだと、楽師は神官に向かって宣言する。
 内臓を病に蝕まれたあんたは何とか己の身を永らる方法を見付けようと過去の光景を垣間見ているのだと。
「だが病を癒やす方法は何処にも視えず、代わりに見付けた滅びの光景で現在の苦痛から解放されたかったようだが、あんたを殺すのは俺達でも天使でもなく、あんたの身を深く蝕んでいる病だ」
コメント

店の名は琥珀亭・逆転の構図

2017-05-30 23:45:14 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【白線死亡ゲーム】というテーマで創作してください。

 店長の娘の喉を切り裂こうとしたナイフは、しかし音も無く飛んできた礫に叩き落とされる。次の瞬間、体当たりするような勢いで神官に肉薄して店長の娘を奪い返したのはギルド有力者だった。殆ど同時に現れ、遅くなりましたと叫びながら拘束を断ち切ってくれた楽師に、店長はこれでお前も新婚早々男やもめにならずに済んだなと口元を歪めて呟く。
コメント

店の名は琥珀亭・繰り返される浄化と言う名の悪夢

2017-05-29 19:31:10 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【接続不要】というテーマで創作してください。

「あの時の連中は蘇りの奇跡を求めて貴方の眼前で家族を皆殺しにしたけれど、貴方が示したのは全てを浄化する裁きの光だった」
 だから今、この娘が同じように死ねば世界は再び浄化される筈ですと神官は断言した。ふざけるな!俺からまた全てを奪う気かと叫ぶ店長に、何を仰るのですか、貴方は今までの歳月の中で何度も新しい『家族』と暮らしてきたでしょう。それをまた始めれば良いだけの話ですよと笑いかける。
コメント

店の名は琥珀亭・神官の目的

2017-05-26 21:40:18 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【拝啓、あの日の・・・】というテーマで創作してください。


「やっぱり、生き返りましたね」
 店長が凄まじい頭痛と共に目覚めると、神官は相変わらず笑顔のまま囁いてきた。逃げようにも全身を廃屋の柱に厳重に縛り付けられていて身動きが取れない。仕方ないので、ひょっとしてこれはうちの料理が口に合わなかった報復なのかと戯れ言めいた口調で訊ねると、そんな訳ないでしょうと真面目に返される。
「私はただ、あの日と同じように貴方に天使としての力を行使して欲しいだけです」
コメント

店の名は琥珀亭・消滅への希求

2017-05-25 23:34:12 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【根元から折った鍵】というテーマで創作してください。

 朝起きると娘の姿が消えていたと、開店準備も行わずに楽師共々手分けして街中を駆け回っていた店長に娘の指輪を手渡してきたのは神官だった。慌てて店長が追いかけると郊外の廃屋に誘い込まれ、眠っている娘を見付けて夢中で駆け寄った首に縄が絡み付いた。そのまま笑顔を浮かべた神官は容赦なく縄を引き、首に縄が食い込んだ姿で店長の身体が宙に浮く。
コメント

店の名は琥珀亭・光の娘

2017-05-24 23:09:42 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【白線死亡ゲーム】というテーマで創作してください。

 店長の娘だという彼女は強い光を放っているように見えた。元々生命力が強いのもあるだろうが、最近結婚したばかりだという、女性にとっては最も幸せな時期を暮らしているからだろう。首に提げられた指輪もそれを贈った人の想いを宿して淡く輝いている。これなら立派に贄となるだろうと神官は判断した。
コメント

店の名は琥珀亭・瓦礫に降る雪を夢見て

2017-05-23 23:11:24 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【雪の中のきみを弔う】というテーマで創作してください。

 瓦礫の中で生きているものの姿を探し回り、それが全くの無駄に終わった辺りで季節外れの雪が降ってくる。雪は瞬く間に瓦礫を覆い尽くして凄惨な地獄を白く静謐な空間に変えていった。これがこの地で死ぬ自分に対する最期の慈悲だと思ったその純白の世界が、まさかそんな雪の中に数日間埋もれ続けても死ぬことのなかったこの身に対する、此処より延々と続く事になった呪いの始まりに対する宣告だとは思いもしなかった。
コメント

店の名は琥珀亭・神官の幻視と過去の天使

2017-05-22 19:58:44 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【呼ぶ声は遠く】というテーマで創作してください。

 かつてあれ程までに愛した世界を何故ここまで憎むようになったのかは解らない。ただ、現在の彼にとって世界とは太陽の光も潮風も、空腹を満たす筈の料理でさえ、彼の五感に耐えがたい苦痛をもたらす存在でしかなかった。故に彼は己の過去視の世界に沈んで苦痛を和らげるのが日課となり、世界を深く深く遡るうちに、小規模とは言え王都を一瞬で瓦礫に変えた琥珀色の天使の姿を発見した。
コメント

店の名は琥珀亭・毒と水

2017-05-19 21:28:51 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【白線死亡ゲーム】というテーマで創作してください。

 私は大嫌いなんですよ、この耳を打つ騒音の発生源全てが、この世界から一瞬の内に消えて欲しい程に。

 そんな言葉を囁きながら近付いてくる神官の発する闇と毒に中てられたように店長が動けないでいると不意に、ああ店長ここに居たんですか、などとその場の空気を振り払う呑気な声音が響く。いつもの様に眠たそうな顔で笑いながらその場に現れたのはギルド長だった。
「店長、実は一週間後にギルドの会食がありまして、その時の料理を頼みたいのですよ」
 とにかく詳しい話をと引き摺るような格好で店長を神官から引き離したギルド長は、ようやく自力で歩けるようになった店長に向かって小声で囁いてから、それじゃ宜しくと去って行く。

「あの神官は死神です、くれぐれも気を許さないで下さい」
コメント

店の名は琥珀亭・滅びの笛

2017-05-18 19:32:52 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【白線死亡ゲーム】というテーマで創作してください。

 おや、奇遇ですねと声を掛けてきたのが、先日店で料理を殆ど手つかずのまま残した神官だと気付いた店長は一礼してその場を去ろうとしたが、神官は巧みに店長の進路を塞いで話し出す。曰く、自分は雑踏の騒音に耐えられないのです。特に辺り憚らない笑い声や叫び声を聞くと食欲が消え失せますね。そんな理由で店では失礼しました。そんな神官の弁明に対して、賑やかなのが嫌いならうちの店は向かないなと答えて立ち去ろうとする店長だったが、神官は更にその行く手を塞ぎながら囁きかける。

 ところで、この街はいつ貴方の故郷のように静謐な瓦礫に変えるのですか?
コメント