カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

『約束』と【のんびり】より・彼岸にて

2015-11-30 20:31:12 | 物書きさん、お題です
 慌てることは無いのさ、どんな奴でもいずれは此処に来る。そいつらは大概アンタを知らないかアンタが知らない相手だが、勿論知り合いだって来る、必ず来る。

 だから、その時そいつに訊けばいいんだ。どうしてアンタが殺されなければならなかったのかを。何、アンタもこれ以上は死なないんだからさ、それこそ今度は死ぬ気で訊きなよ。
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『裏切り』と【仮】より・友達の彼女

2015-11-27 19:04:24 | 物書きさん、お題です
 友達でも良いから付き合って下さいと言われたので友達として付き合っていたら、周囲にはそういう意味で付き合っていると誤解されることが増えたので、その度に否定していたら彼女に『あたし達付き合っているでしょう!』と罵倒された。
 だから『友達としてだろう?』と言ったら裏切り者呼ばわりされて更に罵倒され、女の純情を踏みにじる奴だと友達も去って行った。
 
 これは俺が悪いのか?
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『他人の視線』と【ふたり(二人)】より・貴女と共に居られなかった理由

2015-11-26 22:35:44 | 物書きさん、お題です
 悪魔に恋人を雌鶏に変えられた男が苦しんだ挙げ句、自分も雄鶏に変えて貰って恋人と仲良く暮らしたという昔話を何処かで聞いた。ひょっとしたら、僕も思い切って雄鳥になる覚悟があれば今でも彼女と一緒に居られたのかも知れないと、その時に思った。

 けれども僕は雄鳥の背では背負いきれないだけの物を既に背負っていた。だからその話は、僕にとって、ただのお伽話。
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『泣き(鳴き)声 』と【下手くそ】より・優しく誘い、君を招くよ

2015-11-25 19:11:20 | 物書きさん、お題です
 うちの娘は親の欲目を抜きにしても顔や性格は悪くないが、残念な程に音痴だ。
 ある日、近所の川縁で見慣れない女の子と遊んでいて一緒に歌い出した時も相手の奇麗なメロディーを見事にぶち壊した挙げ句、自分の音痴を移していた。

 そんな訳で、難所続きと呼ばれる川下りも、この辺でだけはローレライに誘惑されて沈んだ船の話はついぞ聞かない。
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『覗き(見た?)』と【低い】より・柔らかくて暖かかった感触

2015-11-24 20:58:23 | 物書きさん、お題です
 子供の頃、縁日で買ったヒヨコを庭に出して歩かせていたら猫が疾風のように駆け抜け、甲高い一瞬の鳴き声と共に眼前のヒヨコが連れ去られた。泣きながら追い掛けて猫が潜り込んだ狭い縁の下を覗き込んだ後からよく覚えていないのだが、家の軒下で気絶していた私は何故か無傷のまま、それなのに血まみれで発見されたそうだ。ひょっとしたら当時の現場には他にも色々と何かが散らばっていたような記憶が薄らと残っているのだが、それを確認する前に全部親が水で洗い流してしまった。

 それ以来、生き物は何も飼っていない。
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『言葉』と【甘い】より・虫歯

2015-11-23 13:28:21 | 物書きさん、お題です
 甘い言葉には注意した方が良いよと言われた時に理由を尋ねたところ、虫歯になると答えが返ってきた。直後にメールが入ったので私は眼前にいた彼女の存在も忘れて彼に連絡を入れ、そのまま待ち合わせ場所に向かった。

 やがて彼に騙されたと知った私が彼女に泣きつくと、アンタの心は甘い言葉に蝕まれて酷い虫歯になってしまった。正直今のアンタの言動は見苦しいし匂いもきついから距離を置きたいと言われた。
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『将来の夢』より・いつかは憧れた場所へ

2015-11-21 21:34:04 | 突発お題
 自分はAデュマの三銃士が子供の頃から好きで、物書きとしていずれはこのような話を書きたいと常々思っているが、それは別に、フランスの片田舎から一旗揚げようとパリにやってきた若者が三人の友を得て冒険を重ね、やがて銃士隊の隊長になるという話を書こうという意味ではない。それを忘れなければ、多分大丈夫だ。
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『演技』と【謎】より・転がる猫

2015-11-20 22:38:45 | 物書きさん、お題です
 たまにうちの猫が腹を出してひっくり返っていることがあるが、どうやらアレは死んだふりをしているらしいと最近ようやく気付いた。
 というのも、たまたま一緒にそれを目撃した際、妻が飛ぶような勢いで猫に近付いて腹をもふり始めた直後に物凄いドヤ顔になったからだ。ちなみに妻が言うには『猫というのは、例えば豆絞りを被って二本足で踊るなど人間の思う以上の能力を発揮することがあるが、それに気付かぬ振りをしてみせるのがルール』なのだそうだ。
 そうしないと猫、いなくなるか最悪祟るよと妻が言うので、おれは見なかった振りを貫き通すことに決めた。
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『二度目の初恋』と【怖い】より・貴方の為だけに

2015-11-19 19:29:37 | 物書きさん、お題です
 死んでしまった彼女と良く似ている相手に、もう一度恋をした。
 だから、僕は彼女と出来なかったこと、彼女にして上げられなかったことを積極的に行った。メールや電話による連絡を欠かさず、プレゼントと共にコンサートのチケットを送り、家の送り迎えも連日行い、とにかく僕に出来ることは何でもした。

 その結果、二度目の初恋も僕から逃げようとした相手の死と共に終わった。
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『コーヒー(hotでもcallでも可)』より・ラストオーダー

2015-11-18 20:16:10 | 物書きさん、お題です
 猫舌だった私は彼とテーブルに置かれたコーヒー二つを挟んだ姿で話に夢中になり、いつしか冷めてしまったコーヒーを苦笑いしながら一息に飲み干して、彼と一緒にいつもの店を出るのが幸せだと思っていた。

 やがて月日は流れ、彼が長すぎる沈黙の後に別れを切り出してきたあの日、同じように口にした冷めきったコーヒーは、私にとってはただ苦いだけだった。
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