春の創作怪談・警告音

　子供の声って警告音なんだって。
　危険な状態をいち早く認識させるために、特に女性にとって正気を保てないレベルで不安を掻き立てるんだって。
　でも警告音って多用すると誰も相手にしてくれなくなるんだよね、いい気味。

　そう笑った彼女が一体何をしたのか、私にはとても訊けなかった。

竜飼いその8・通過儀礼と言う名の喜悲劇

たかあきの竜は若緑の共鳴デミドラゴンという品種名です。気性は穏やかで、用途は食用です。

　確か好物だろうと友人が食用亜竜を土産に持ってきた。生きているのを絞めて捌く趣味はなかったので断ったら息子が飼いたいと言い出した。　
　最近はこういった形で食用竜を愛玩動物として飼育するケースが増えているらしく、きちんと世話をすると約束させてケージを用意したが、結果はどうなることやら。

竜飼いその7・兄の黒竜と兄弟竜

たかあきの竜は漆黒の鉱石竜という品種名です。気性は温和で、用途は飛翔用です。

　黒竜は不吉だという理由で処分されかけていた竜の幼体を貰ってきた兄は、飛べない竜は蛇にも劣るが空を駆ける竜の色など大した問題ではないと言いながら訓練を続け、やがて立派に成長した黒竜は大会において実に優雅な飛翔形態を披露したが、優勝したのは兄の黒竜ではなく真珠色をした兄弟竜だった。

竜飼いその6・冒険者たち

たかあきの竜は紺青の疾風デミドラゴンという品種名です。気性は温和で、用途は移動用です。

　今回訪れた遺跡都市は朽ちかけた複雑な通路と概ね一方通行のワープホールが移動手段で、お世辞にも人間の単身移動に適しているとは言えない。幸い僕の亜竜は標準石を体内に宿したナビゲータータイプなので道に迷うことなく進めるが、恐らく普通の亜竜ではこの遺跡都市を自在に進むことは難しいだろう。

竜飼いその5・ままは、もういない

たかあきの竜は碧空の鉱石デミドラゴンという品種名です。気性は聡明で、用途は子守りです。

　私の母親はお世辞にも子育ての適性があるとは言い難く、また本人もそれを自覚していたので、裕福だった父は高額な子守り竜を雇うことにした。おかげで私は大事に育てられ、相応の常識と躾を身に着けた大人になれたと思うが、子離れの時期が終わった子守り竜は私の事を忘れて新しい家で新しい子供を育て始めたと言う。

竜飼いその4・僕と水晶と家庭の事情

たかあきの竜は紫暗の水晶ドラゴンという品種名です。気性は臆病で、用途は通勤用です。

　騎乗用の竜は臆病なくらいが良いというのが父の持論だったが、外観は綺麗でも人慣れしない竜を連れて来られた母はブチ切れて大喧嘩になった。そんな訳で竜の世話は本来の主人である父やその伴侶である母ではなく僕に回ってきたが、餌をやったり鱗を磨くのは苦にならなかったので当然のように父以上に懐かれ、色々と問題が発生した。

竜飼いその3・最強ホームヘルパー

たかあきの竜は紫暗の共鳴ムカシトカゲという品種名です。気性は少し意地悪で、用途は家事手伝いです。

　角や尻尾がある以外は人間と殆ど変わらない外見の竜をホームヘルパーとして雇った。
　口は悪いが良く働いてくれると同僚に話したら信じられない騙されていると難癖をつけてきた上に家に押し掛けてきたので竜に接待して貰ったら、何故か二度とこちらに近付いてこなくなったので竜にボーナスを弾むことにした。

骨董品に関する物語・オットーハップのミュンヘンカレンダー

　物語として紡がれた架空の歴史の一幕に刻まれた三つ首の犬を模した紋章は、地獄の番犬(ケルベロス)の名前を持つ治安部隊の象徴だった。
　彼らは時代の要請によって異形のモノとして生み出され、やがて時代の推移と共に不要とされ、最期には時代に抗いながら滅びの道を辿る事になった。

竜飼いその２・うちに来た竜

たかあきの竜は紫暗の薫風トカゲモドキという品種名です。気性は聡明で、用途は愛玩用です。

　竜を飼いたいと言ったら妻は良い顔をしなかったが、それに関しては想定の範囲内だったので、とりあえずは拝み倒して既に竜を飼っている友人宅を二人で訪ねた。
　友人自慢の肩乗りサイズ竜は非常に賢く愛想も良かったので何とか飼育許可は下りたが、その後迎えたうちの竜に妻はすっかり夢中となり、夫の僕は寂しい限りだ。

竜飼いその1・職業竜使いの苦悩

たかあきの竜は玉虫色の鋼鉄ムカシトカゲという品種名です。気性は冷酷で、用途は通勤用です。

　うちの龍は基本的に気難く騎乗竜としては人気が低い品種だが、輝く様な体色から周囲に羨ましがられることが多い。
　ただ如何せん気難しく契約者である俺以外には懐かないので終いには契約解除目的で俺まで命を狙われたが、激怒した竜は犯人を正当だが陰険かつ丁寧極まりない手段で返り討ちにしてくれたので、俺もこいつは絶対に怒らせないようにしようと心に誓った。