カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

店の名は琥珀亭・雲霞の如く幼虫(おさなむし)

2017-02-28 18:54:53 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【箱の中に詰めたもの】というテーマで創作してください。

 娘が小さい頃、プレゼントと称して拾ったドングリを箱一杯に詰めて店長に贈ってきた事がある。ドングリは下手に食べると味覚をおかしくするんだよなと思いながら棚に置いたきり何となく存在を忘れた頃、この箱の中見は何だったろうかと店長が開けたら物凄いことになっていて、取りあえずドングリを長期保存する場合は絶対に煮沸処理が必要だと思い知った。
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店の名は琥珀亭・宗門争いは釈迦の恥

2017-02-27 19:24:17 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【ドアの向こうで叫ぶ】というテーマで創作してください。

 祭の練習が始まる季節になると、たまに国教教会の新入り神官が監督や先生の所に怒鳴り込んでくることがある。
 主に祭の謡が異教徒の経文にしか聞こえないという難癖だが、監督は慌てず騒がず舌先三寸を駆使して若造を丸め込み、それでも駄目な場合は先生が人の良い笑顔を浮かべながら琥珀亭に誘導し、普段は粗食で暮らしている欠食神官にたらふく馳走を食わせた上で酔い潰す。

 店長は迷惑そうだが、それは年ごとの恒例行事とも言える光景であった。
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覚醒の感覚

2017-02-26 23:59:04 | 雑記
 子供の頃の話。

 親戚の家に泊まった日の翌日、目覚めた部屋が何処かを全く認識出来ずに混乱したことが何度かある。半覚醒状態の頭で感じた、自分が見知らぬ異世界に放り出されたような得体の知れない違和感と不安は意識が明確になるに従って徐々に薄れ、やがて消えたが、未だに忘れられない感覚として身体の中に残っている。
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回想の光景

2017-02-26 23:57:53 | 雑記
 まだまだ寒い時期なので思い出した。

 中の綿が硬くなった冷たい布団と、毛玉がフェルト化した柔らかくも暖かくもないアクリル毛布、所々糸のほつれたタオルケットにくるまって丸めた身体の、殆ど感覚の無い程に冷え切った足首から先の痺れ。

 きっとまた、春になったら忘れる。
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店の名は琥珀亭・犬の託宣

2017-02-24 23:27:44 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【オーバーヒートへのカウントダウン】というテーマで創作してください。

 監督は毎日のように飼い犬を連れて港町を散歩しているが、たまにこの犬が通りすがりの街の人間に奇妙なほど懐くときがある。
 そんな時は決まって監督が「キミは何か良いものを持っているようだね」と引っ張っていき、大概はその年に行われる祭で奏でられる何らかの楽器奏者に任命されるのが常だった。ちなみに、今のところ単純に犬が気に入って懐いただけらしい琥珀亭の店長以外に「外れ」だった楽器奏者はいない。
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店の名は琥珀亭・青と碧の重なる街にて

2017-02-23 22:03:09 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【空を指差しきみは笑った】というテーマで創作してください。

 少しだけ昔。
 まだ琥珀亭の店長でなかった頃の店長が娘を連れて港町を訪れた時、空が奇麗だけど海はもっと奇麗だねと笑った娘と入った食堂で荒くれ同士の喧嘩に巻き込まれ、全員にお帰り願った手腕と料理の腕を買われて店で働き始め、数年後、店長夫婦が引退すると共に店を譲り受けて現在に至る。
 街の人々が知る店長の過去は、それが全てだった。
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店の名は琥珀亭・風に舞う雪

2017-02-22 20:03:21 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【雪の中のきみを弔う】というテーマで創作してください。

 港町は滅多に雪が降らないが、たまに青空の下、遠く聳える山から風に運ばれてきた雪片が舞い散ることがある。風花と呼ばれるそれを随分と懐かしそうに見上げながら、雪は積もると後々が面倒だが降っているときは奇麗なモノだと呟く店長の言う雪が、一体何処の国のどの地方に降っていた雪であるのか、港町で知る者は誰もいない。
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店の名は琥珀亭・あの日置き去りにした

2017-02-21 22:12:55 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【ドアの向こうで叫ぶ】というテーマで創作してください。

 夜明け前に目覚めた店長が何となく一人で港を散歩してから店に戻ると、いきなり娘に会心の一撃を食らわされた。何をすると抗議するより速く二撃目が襲い、いなくなったと思ったじゃ無いかと大泣きされた。あまりの騒ぎに集まってきた近所の人々に平謝りして帰って頂いてから、前科持ちの店長は悪かったと娘を抱きしめる。
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店の名は琥珀亭・一線を越える

2017-02-20 21:08:53 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【白線死亡ゲーム】というテーマで創作してください。

 店長を本気で怒らせてしまったと慌てた監督は、普段から無駄に回転の良い頭脳と舌先を駆使して、別に店長が力ある民の末裔だとか教会で捜している天使だとか、そんな訳でもないなら気にしなくていいじゃないか、などとなるべく有り得ない冗談を並べ立ててその場をやり過ごそうとしたら、冗談が悪質な上に反省の色が無いと一ヶ月の出禁を喰らった。
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店の名は琥珀亭・遠き獣の王

2017-02-17 21:26:08 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【拝啓、あの日の・・・】というテーマで創作してください。

 暖炉の上に飾ってある絵、アレは幻獣王だろうと監督が店長に言う。以前、ギルドマスターの書斎で見付けた教会禁書の一節によると『世界を造りし力より産まれたあらゆる獣の王、地上の生き物で最も似たる姿は白き鬣の獅子である』と記載されていたが、店長はそれを知っているのかと。
 監督の問い掛けはあくまで純粋な好奇心から来るモノであり、教会の連中に注進するような意思は全くなかったのだが、店長の、それ以上言うなら、あんたをうちの店に永久入店禁止処分として二度と料理も食わせてやらんという宣言は真剣そのものだった。
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