カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

道端の花

2016-01-29 23:17:36 | 依頼です、物書きさん。
自分勝手に生きているキャバ嬢と地味過ぎて目立たない大道芸人、二人が二人の出会いをやり直す物語

 あっごめーん街路樹かと思ったわと道端の大道芸人を蹴り倒してお店に出勤した数日後。
 何と、その大道芸人が仕立ての良いスーツ姿でお客としてうちの店に来店した。大道芸人もといエリートサラリーマンは路上パフォーマンスをするには地味すぎる雰囲気と衣装だったが、控えめな笑顔を浮かべながら完璧な態度で同行者の接客に励む姿を見て、私はもう一度大道芸人の彼に会いに行こうと決めた。
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あの日の行進曲

2016-01-28 20:32:17 | 依頼です、物書きさん。
大切な人をずっと待っているピアニストと迷子の子どもの中身が入れ替わる話

 あの日出ていったあの人は、結局私を迎えに来てくれなかった。そんな思いを奏でていたらいつの間にか悲しい曲を弾くピアニストとして有名になり、そこそこの名声と新しい家族を手に入れた。そんなある日、息子が家を出た私の後を追い掛けて迷子になり、保護された先に迎えに行くなり泣きながら私にしがみついてきた。
 その時、私はようやくあの日の自分が『あの人』に追いつけたのだと悟ったのだった。
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前門の虎縞、後門の餓狼

2016-01-27 19:35:10 | 依頼です、物書きさん。
盲目の教師とそいつを養うことになってしまった人物によって、命を狙われることになった男の物語

 師匠(せんせい)の目が見えなくなったのはアンタに憑いてたとんでもないモノに気付いてしまったからなんだと、魔除けと称する虎を思わせるメイクを己の顔に施した男は言った。だからアンタはソイツに喰われるか、さもなければオレ達と一緒に師匠の修業先でソイツを祓うか好きな方を選んでくれと言われた僕は、極めて不本意ながら男三人と物の怪憑きのまま旅に出ることになった。
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永遠の螺旋なる再会

2016-01-26 00:11:35 | 依頼です、物書きさん。
前世を覚えているお嬢様と忠犬のように付き纏う人物が恋に落ちていく物語

 貴方は前世を信じる?とお嬢様に聞かれたので、前世も来世も自分には意味が無いですと答えた。例え幾度違う人生を送ろうと自分は必ずお嬢様と巡り会うし、例え結ばれることがなかろうと生涯お側に付き従うと確信しているからだ。それは私にとって永遠の呪いであり、同時に最大の福音でもあった。だが、それがお嬢様にとっても同様であることなど、その時の私には思いも及ばなかった。
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黄粱の一炊

2016-01-25 00:21:44 | 依頼です、物書きさん。
褒められることに不慣れなお嬢様と狐憑きだと噂される巫女さんとの365分の1日の物語

 どうせ私なんかと言うのが口癖のお嬢様が誘われるままに神社で住み込み修行を始め、自分は掃除も洗濯も料理も出来るのだと自信を付けた。そして修行最後の日に一年間の世話になった礼を告げた時、もう大丈夫ですと笑った巫女は、実は彼女がこの神社に来てから半日も経っていないのだと教えてきて、それは本当だった。
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孤独だった週末

2016-01-23 00:04:20 | 依頼です、物書きさん。
無口な文学少女と慰め方すらも一般から懸け離れたサドとの7日間の話

 他に当てがあったらお前になんか頼まないんだがと、あからさまに失礼な言葉と共に兄貴夫婦が旅行中に姪っ子の世話を押し付けてきた。本ばかり読みながら、どうせ両親は私のことが嫌いなんだと呟く姪に、実際そうかもしれんなと同意したら絶句されたが、違うと思うならそう思えと続けると何も言わなくなった。
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私の声が聞こえますか

2016-01-21 20:42:27 | 依頼です、物書きさん。
嘘吐きな写真家とプライドがカス程もない良家の跡取りとの優しい嘘の物語

 心霊写真が写っても仕事にならないし気味悪がられるだけなので、普段は加工ソフトを使って画面に映った幽霊を存在しなかったことにしておくのだが、うちの財産は俺の代で食い潰すというのが口癖の悪友と一緒に映った奴の爺ちゃんは、俺の夢枕に立ってまで奴に自分の存在を知らせ、心を伝えて欲しいと泣くので、とりあえず奴に写真を見せてやった。奴は大好きだった爺ちゃんの姿を見て少しだけ涙ぐんだが、それはそれ、コレはコレと言いきった。

 あとは知らない。
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終わらない物語を抱いて

2016-01-20 20:38:27 | 依頼です、物書きさん。
甘えたがりのウグイス嬢と重度のマニアである図書館司書が始めてしまった夜明けのこない百物語

 図書館に明るい口調で話し掛けてくる女性の幽霊が出ると聞いた彼は、司書の誇りに賭けて自分が彼女を成仏させてやると心に決めた。そして閉館後の図書館に現れた彼女に君の声には深みがないと断言し、動揺する彼女に彼が厳選した怪談を語らせて生の儚さと死者の悲しみを伝えることで、己が本来逝くべき道を示してやろうとした。が、彼女の声はあまりに明るすぎて、怪談は次々とお笑い的な小話へと変化していくのだった。
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冬のある日に

2016-01-19 20:54:23 | 依頼です、物書きさん。
生きることに不真面目な女子高生とその人物を誰より憎む人物による冬が愛しくなる物語

 だってアンタ他人じゃんと義理の娘に言われて何も言い返せなかった時点で、多分俺は娘の父親になる資格を自ら放棄したのだろう。幸せな時もあった、妻に良い父親になると誓った、それらの過去は何の役にも立たないまま、俺は泣いて縋る妻と離婚した。そして今、貴方しか頼る人がいないと泣きついてきた嘗ての娘に、俺は『悪いが他人の君の面倒を見る義理はないよ、さよなら』と答えた。
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愛のない地平へ向かって

2016-01-18 19:50:27 | 依頼です、物書きさん。
歩く不運のような探偵と心の優しいパンクなお兄さんによって、命を狙われることになった男の物語

 道を歩いていたらいきなり見知らぬ連中に手荒な方法で拉致られかけたが、今度は見知らぬ二人組に助けられた。
 いやー全く申し訳ないと、貧相な中年男とトサカ頭の兄ちゃんは揃って俺に頭を下げて事情を説明してくれるのを聞くと、何でもトサカ頭の妹が俺に惚れ、娘が惚れた相手を探偵である貧相な中年男が調査した結果、何でだかよく判らないのだがトサカ頭の両親が俺の抹殺に乗り出すことに決めたらしい。トサカ頭の両親を止められるのは本家の頂点に君臨する曾祖父しかいないので直訴に行くしか俺が助かる方法はないと言われ、そんな訳で俺とトサカ頭と探偵という、男三人連れの不毛な逃避行が始まった。
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