カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

『うそ』と【怖い】より・嘘、そして沈黙の果て

2015-09-30 21:19:48 | 物書きさん、お題です
 今まで使った嘘の中で最強の効果を発揮したのは、時と場合を厳選した末になるべくわざとらしい笑顔で『知ってるよ』と呟くことだと奴は言った。ポイントは顔色を変えて詳細を追求してくる相手に対して無言を貫き通すか、ただ一言『教えない』とだけ答えることだそうだ。

 確かに、想像するとかなり怖いが、更に怖いのは最後の奴の一言だった。
「でもさ、下手をすると本当に人死にがでるからオススメできないよ。もちろん嘘だけど」
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『記憶』と【結末】より・断層

2015-09-29 23:09:44 | 物書きさん、お題です
 実は、人間の記憶というのは意外に当てにならないモノなのだそうだ。錯覚や思い違いだけでなく願望や感情によって容易く外界から受け取った事実を変質させてしまい、更に年数をかけた思い込みで自分だけの現実が醸造されてしまうのだとか。

 そうだとしたら、学生時代の懐かしい仲間達に会おうとして理由も分からぬまま避けられる自分は、過去の彼らに一体何をしたのだろうか。
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『ファーストフード店 』と【のんびり】より・渋滞

2015-09-28 23:10:01 | 物書きさん、お題です
 とある週末、ファーストフード店で結構沢山の持ち帰りを注文した。明日から休暇だという頭もあってのんびり待っていたら、いつまで待っても品物を渡してくれない。私の次に注文した親子連れも待ちくたびれていたが、やがて先に会計が済んだのは親子連れの方だった。
 どうやらドライブスルー優先のシステムに大量注文が重なった悲劇らしく10個の種類別バーガーを渡されるのに迅速第一が売りの店で30分以上待たされたとは友人の談だが、この場合、何を何処からどう突っ込めば良いのだろうか。
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『姉』と【飾り(る)】より・花の髪飾りと林檎のブローチ

2015-09-25 22:18:31 | 物書きさん、お題です
 伯父さんからお土産に髪飾りを貰ったら、同じようにブローチを貰った姉が殊更に自分のブローチを自慢するように見せびらかして来た。良いものを貰ったから自慢したいんだなと思って話を受け流していたら姉はいきなり泣き出し、どうして羨ましがって交換しようと言わないと責められ、姉を泣かせたと一方的に母に怒られた。

 だから私は、今でも花と林檎が嫌いだ。
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『初雪』と【笑顔】より・初雪に踏み初めにしは我の跡

2015-09-24 23:42:35 | 物書きさん、お題です
 子供の頃は柔らかく積もった絨毯のような新雪に始めて足跡を付ける時、まっさらの新しい道が自分の為だけに現れたような気がして、とても心が浮き立ったものだ。
 やがて雪が私の周りだけではなく周囲一面にもまんべんなく降り積もり、私と同じように足跡を付ける人がいるのだと知った時、私にとって、雪は「ただの雪と」なり果てた。
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『言い訳』と【仮】より・遅れた代償

2015-09-23 21:51:56 | 物書きさん、お題です
 遅刻した詫びに出来る限りで一番面白い言い訳をでっち上げるようにと彼女に厳命された僕は、彼女の的確且つ容赦のないツッコミに挫けそうになりながらも、数時間かけて一大スペクタクル巨編を組み上げ完結させた。その後、僕の言い訳は彼女の新刊のネタとなり、イベント販売後に一部ファンから熱狂的に支持されたそうだ。

 ちなみに彼女は最近よく聞くようになった「腐女子」だが、僕はその活動に口出ししたことはない。
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『季節外れ』と【冷める】より・愛しの冷やし中華

2015-09-22 22:18:55 | 物書きさん、お題です
 秋になるとひっそりと食堂のメニューから消える冷やし中華は、その儚さから多くの人間に愛され、夏の終わりの消滅を惜しまれてきた。
 そこに目を付けたある食堂の店長が自分の店の冷やし中華を年中メニューに据えてみたが、思った以上に注文する客がいなかった。不思議に思って客に理由を問うてみると、何でも「夏以外の冷やし中華なんて有り難みがない」そうだ。
 まあ、頷ける話ではある。
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『雪』と【哀愁】より・なごり雪

2015-09-21 22:03:56 | 物書きさん、お題です
 彼女と付き合っていたのは、数年前の晩秋から初春の季節だったと思う。お互いの温もりで冬の寒さを乗り越えて来た僕らは、結局お互いの温もりが煩わしい春の季節を共に乗り切ることが出来なかった。
 そしてあの日。
 私が雪女だったら良かったのにねと寂しそうに笑いながら、僕が送った指輪を外して返してきた彼女の背中は、そのまま滲むような春の雪景色の中に消えていった。
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『大人』と【たとえば】より・運命の博打

2015-09-18 23:34:54 | 物書きさん、お題です
 子供が持って生まれるのは可能性では無く、先の見えない現実だと彼は言った。それ故、人生とは獲得したモノ全てを使っても勝てるかどうか誰にも判らない博打だと。
 別にその意見に反発を覚えたわけでは無いが、根本的なものの見方が異なることは明らかになったので、私は彼と同じ道を進むことを止めた。

 あれから随分と月日が経ったが、今は消息すら聞こえてこない彼はまだ己の人生を担保に、運命相手の博打を仕掛けているのだろうか。
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『もういない』と【仮】より・「ドードーのようにすっかり滅びてしまった」

2015-09-17 22:59:25 | 物書きさん、お題です
「ドードーのようにすっかり滅びてしまった」という英語の諺があるそうだ。

 もはや痕跡も殆ど残さずに消えてしまった彼女に対する僕の思いも同じようにすっかり滅びてしまえば良いのに、僅かに残った痕跡が探究心を刺激するのか、僕は未だに自分の中で滅びてしまった彼女の痕跡を調査し続けている。
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