カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

店の名は琥珀亭・『店の名は』(完)

2017-06-23 19:56:15 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【へたくそな口笛を捧ぐ】というテーマで創作してください。

 天使が舞い降りると言われる春の祭で有名な港町には昔からずっと評判の食堂兼酒場があって、初代の店長は驚く位に長生きした末に沢山の孫と曾孫と玄孫に囲まれて大往生したが、現在は六代目の若夫婦が元気良く店を切り盛りしていて相も変わらず客が絶えることはない。

 その店の名は、琥珀亭と言う。
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店の名は琥珀亭・事の顛末

2017-06-22 21:11:03 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【オーバーヒートへのカウントダウン】というテーマで創作してください。

 翌日、夜明け頃にこっそり家を出た筈の店長は道に並んだ大勢の街の人々の姿に愕然とすることになった。悪びれもせずに楽師が見送り希望者を募ったらこうなったんだと笑い、行かないでと子供に、私が釣り合う歳まで待っていてとギルド有力者の妹に、そして何より逃げられると思っていたのと凄む娘にたかられた挙げ句に根負けした店長が逃亡の断念を宣言すると、周囲から一斉に歓声が上がった。
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店の名は琥珀亭・さよならは言わないで

2017-06-21 22:22:13 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【嘘つきの純情】というテーマで創作してください。

 そろそろ、この街でも俺の歳を気にし出す奴が出るだろうし、奴がまた俺を殺しに来て町が破壊されたら洒落にならん。幸いこの街の近くには幻獣界の入り口があるからほとぼりが冷めるまで匿ってもらうさと軽く答える店長。何処にそんなモノがと尋ねる楽師に、お前の前に拾った狼がちょうど故郷に帰る途中の幻獣だったんだよと呟いてから店長は明日の早朝出て行くと宣言した。
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店の名は琥珀亭・始まりの天使

2017-06-20 20:42:32 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【へたくそな口笛を捧ぐ】というテーマで創作してください。

 姫の国を滅ぼしたのは今で言う国教教会の僧兵どもだが、その中に『天使』と呼ばれる凄まじい力を持った少年兵が居て、俺はそいつに憎まれていると店長は言った。当然楽師はその理由を尋ねるが、始めに顔を合わせた時に憎悪に満ちた表情で父さんと叫ばれた。心当たりは無いから人違いだろうが、それ以来出会う度に何度も殺されているぞとは店長の談。
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店の名は琥珀亭・居られない理由

2017-06-19 19:51:21 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【指の意味】というテーマで創作してください。

 お前もどうだと飲ませたワイン一杯であっさり撃沈した娘を寝かせてやってから、結局その国は姫が継いでから三代程で滅びたと話を続ける店長。
 しかし、その全てを見届けたなら一体何歳なんだと楽師が問うと、店長は指を何度か折るように数えてから諦めたように忘れたと答える。それが街を出ていく理由かと更に楽師が問うと、店長はまだあるし、実はそれの方が深刻だと答えた。
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店の名は琥珀亭・少年の決断

2017-06-16 21:07:37 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【呼ぶ声は遠く】というテーマで創作してください。

 その後、居合わせた店長に対して『我ガ主ノ匂イガスル』と呟いた黒い犬が幻獣だと判明して、一同は重大な決断を迫られた。つまり兄王子派と妹姫派が血眼になって捜している少年を何処に匿うか、果たしてこの地上に安全な場所は存在するのか。
 結局、父親を殺した人間に対する恐怖と嫌悪を拭い去れなかった少年は、例え人の姿を失い獣の姿に変わり果てるとしても幻獣界で暮らすことを自ら望んだ。
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店の名は琥珀亭・獣の忠誠と慈愛

2017-06-15 19:40:29 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【雪の中のきみを弔う】というテーマで創作してください。

 あの話ならまた聞きたいと部屋に居座る娘の前で、店長は仕方なく話を再開する。

 姫の屋敷には大きな黒い犬が飼われていて、父親を殺され自身は何処かに連れ去られそうになった小さな息子を守って侵入者を皆殺しにしたまでは良かったが、その後も泣きじゃくる息子から離れず、現場に到着した国境警備兵にまで牙を剥いて唸るばかりだった。
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店の名は琥珀亭・飛び入り歓迎(多分)

2017-06-14 20:35:42 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【台所戦線おそらく異状なし】というテーマで創作してください。

 それでお姫様一家はどうなったんですか?と楽師が訊ねると店長はいきなり腹が減ったと言い出し、仕方なく何かないかと台所に向かった楽師は暫くしてからワインとチーズを抱えたまま店長の娘に首根っこを掴まれた姿で現れた。ひとを仲間外れにして男二人で宴会とはいい度胸だと凄む娘に、お前には以前話したことがある昔話をしていただけだぞと答える店長。
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店の名は琥珀亭・幸せだったはずの姫君

2017-06-13 20:54:19 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【放物線を描く花束】というテーマで創作してください。

 当時その国は聡明で妹思いの兄王子が王位を継ぐと決まっていたので、妹姫は気兼ねなく身分の低い宮廷画家と結婚して息子にも恵まれ、田舎の荘園で平和に暮らしていた。ところが兄王子の急逝に伴い、本来は玉座など望まなかった妹姫に第一王位継承権が転がり込み、結果として兄王子派と妹姫派の激しい対立を招き、それは日を追う毎に収拾が付かぬほど激しくなっていったのだった。
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店の名は琥珀亭・幻獣王の伝説

2017-06-12 18:55:06 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【午前零時に浪漫を語る】というテーマで創作してください。

 それじゃ、ひょっとして店長は本物の幻獣王を見たこと有るのかと楽師に問われ、何度も見たぞとあっさり答える店長。
 最初は王都を一瞬で瓦礫に変えた力の正体を見定めて貰う為に、やがて幾つかの事件を解決する助力として。

「まあ、恐らく一番の事件は拗れた王位継承問題の末に殺されそうになった少年を、幻獣王が養い子としたことだろうな」
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