カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

第四十一夜・幻の牡丹花

2017-07-31 23:02:40 | 百人一首と色名で百物語
たかあきで『あらしといふらむ』と『牡丹色』を使って創作してください。

 昔、当時は珍しかった緑色の花が見られるというので牡丹園に行ったことがある。広大な敷地に整然と植えられた牡丹樹を彩る薄紅や赤紫、それに純白と、重なり合った花弁が造り出す豪華絢爛な花々に暫し我を忘れて見惚れながら最後に辿り着いた特設スペースで咲いていたのは、小振りで弱々しい薄緑の花が一輪。
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友人がこっくりさんをやらなくなった訳

2017-07-30 17:00:44 | 雑記
 友人から昔聞いた話。
 当時流行っていたこっくりさんを数人で行っていたら何故か帰ってくれなくなり、半泣きでどうしたら良いのか尋ねると近所の公園にある四阿のベンチに書かれた字を消してくれと答えが返ってきたので全員で公園に向かい、ベンチの字を一生懸命捜したけれど、結局それらしい字は見付からなかったそうだ。
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第四十夜・向こう側の門

2017-07-28 21:47:57 | 百人一首と色名で百物語
たかあきで『夢の通い路』と『空色』を使って創作してください。

 高い熱を出して眠っている時、たまにだが何度も同じ場所をくぐろうとする夢を見る。周囲は白っぽい光に満ちた雲が渡る空で、手足を動かしもしないで流れるように進む身体は奇妙なまでに軽い。そして多分そこは門なのだが、まるで傷が付いたレコードを再生するように入っては弾かれるのを繰り返し、だから私は未だ向こう側に行ったことがない。
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私が石を滅多に身に付けない理由

2017-07-28 00:09:50 | 雑記
 今でも謎なのだが、昔、友人から水晶(多分練り水晶)の丸いペンダントを貰って身に付けていたことがあって、三年ほどですっかり曇ってしまった、と言うか中に細かい気泡が沢山入ってしまった。くれた友人に再び見せたらこれは良くないから処理しようと言った次の日に行方不明になった。友人は「逃げたな」とか言っていたが何だったんだ一体。
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第三十九夜・古い歌にあるように

2017-07-27 23:52:38 | 百人一首と色名で百物語
たかあきで『雲の通い路』と『桃色』を使って創作してください。

 ふと見上げた黄昏時の空の薄紅色が凄く奇麗で、あんな上品な色彩と軽い質感の衣を纏うのはどれだけ美しい乙女なら相応しいのだろうなどと考えてしまった僕に、傍らの友人がぽつりと「乙女の姿暫し留めん」と呟いてきて、何だか凄く納得した僕は無言のまま、友人と二人で昏くなるまで空を眺めていた。
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第三十八夜・幻に浮かぶ街

2017-07-26 21:49:38 | 百人一首と色名で百物語
たかあきで『名にし負わば』と『煉瓦色』を使って創作してください。

 整然と並んだ和洋折衷の洒落た街並みには所々に街路樹が立ち並び、広い道路を馬車や荷車が賑やかに行き交っている。夢で見たそんな景色がどこであるのか見当も付かなかったので友人に尋ねると、それは多分銀座煉瓦街だろうと言われた。現存しないその街は大火によって建設され、震災によって壊滅したと言う。
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第三十七夜・琥珀色の太陽の輝き

2017-07-25 22:52:33 | 百人一首と色名で百物語
たかあきで『雲の通い路』と『山吹色』を使って創作してください。

 子どもの頃に空と太陽の絵を描こうとして本物を眺めたら、青空に浮かんでいるのはどう見ても赤ではなく金色の光球だった。だからそうやって描いたら先生に「太陽は赤い色だよ」注意された。本物を見たと言ったら更に「肉眼で太陽を見てはいけないよ」と注意された。ちなみに、同じ事をゴッホがやって、やはり同じ結果になったと僕が知ったのは大人になってからだった。
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第三十六夜・つれなく見えし浅葱色

2017-07-24 20:29:55 | 百人一首と色名で百物語
たかあきで『つれなく見えし』と『浅葱色』を使って創作してください。

 当たり前だけど、新政府の敵となった新撰組は戦前の読み本では純粋な悪役だったんだよ。鞍馬天狗なんかそうだよね。その立場が逆転ないし相対化されたのは司馬遼太郎「燃えよ剣」の大ヒットによるものだってのは有名だよね。まあ僕は「新撰組血風録」の方が好きだけど、何しろあの話、結局は前髪を落としてない若衆がその妖艶さと肉体で次々と隊員を狂わせていって、でも最終的には若衆よりも更に深く激しく狂っている沖田に粛正されると言う……

「ちょっと待て、お前確か中学生だろう、一体何だその読書傾向と感想内容は」
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第三十五夜・亜麻色の乙女を夢見て

2017-07-22 00:01:47 | 百人一首と色名で百物語
たかあきで『光のどけき』と『亜麻色』を使って創作してください。

「亜麻色の髪の乙女」なる単語を子供だった僕が知ったのは、外国の有名な詩からでも、それを元に作られた日本の歌曲からでもないが、そこに描かれた乙女の姿に対して初恋にも似た憧憬を抱きながら暮らしてきたのは確かだ。だから勝手に豪奢な輝きを想像していた実際の「亜麻色」が実は艶のない金髪だと知った時の衝撃は相当だった記憶がある。

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第三十四夜・苺月と梅干し婆さん

2017-07-20 19:53:58 | 百人一首と色名で百物語
たかあきで『月宿るらむ』と『桜色』を使って創作してください。

 ストロベリームーンを「苺月」と言うと可愛いよねと笑った彼女の言葉に、僕は久し振りに「苺のように可愛らしいお婆ちゃん」という英語の翻訳絵本で見た言い回しを思い出していた。ちなみに僕の実際の祖母は梅干しのような偏屈婆さんで甘いよりは酸っぱい思い出が多い人だったが、祖母が生前漬けた梅干しは未だに我が家の家宝だ。
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