カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

旅路その57・遠い海の記憶

2019-07-31 20:39:10 | 旅人の記録
たかあきは初秋の王都に辿り着きました。名所は歴史ある博物館、名物は貝料理だそうです。

 コスモスの咲き乱れる季節に訪れた国立博物館に展示されている巨大な恐竜の骨や化石は、昔の記憶通りに彼らが暮らす古代に存在した筈の温かな海への浪漫をかき立ててくれた。でも、この博物館の素晴らしさを私に教えてくれた、海の幸の中でも牡蠣のアヒージョが好物だった先生はもう何処にもいない。
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骨董品に関する物語・鸚鵡のアクセサリースタンド

2019-07-31 19:45:55 | 突発お題

 その鸚鵡は王様に向かって今は亡き王妃様の声で愛していますと語り掛ける。鸚鵡の入った鳥籠を抱えて遠い国から嫁いできた年若い王妃様は常に寂しげなまま年の離れた王様に笑顔も見せず病を得て亡くなったが、残された鸚鵡は今でも語られることのなかった愛の言葉を紡いでみせる。
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骨董品に関する物語・秘密結社オッドフェローズの印章

2019-07-31 19:43:32 | 突発お題

 子供の頃、うちに届いた緻密な印章の捺された封筒の宛先がお隣さんだったので届けてあげたら、お礼にとお茶とお菓子をご馳走になった。そんなことを印章の模様も含めて父に話したら何故かいきなり血相を変えてお隣さんの家に押し掛けて大騒動になり、数日後にお隣さんは引っ越してしまった。
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骨董品に関する物語・真鍮製のお月様の呼び鈴

2019-07-30 20:07:00 | 突発お題

「この前手に入れたテーブルベルなんだが」
「三回鳴らすとマグマ大使でも現れるのか」
「いや、一回鳴らしたら星が大量に流れて、二回鳴らしたら月が地平線に隠れたんで何だか怖くて三回目は鳴らしていない」
「世界の平穏を考えるなら絶対に二度と鳴らすな」
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骨董品に関する物語・ブロンズのテーブルベル

2019-07-30 20:04:57 | 突発お題

 蚤の市で見付けたテーブルベルを試しに鳴らしたら、お呼びですか旦那様と執事が現れる。まるでランプの精だなと思いながら何が出来るかを尋ねると概ね1DKで暮らす貧乏学生には必要ない業務揃いだったので、このまま部屋に居て貰っても場所を取るだけと判断してお引き取り願った。
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旅路その56・喪われた旅

2019-07-29 21:00:16 | 旅人の記録
たかあきは夏の廃墟に辿り着きました。名所は古墳、名物は野菜料理だそうです。

 私が子供の頃に祖父母が住んでいた村はとうに朽ち果て、残された廃墟はかつてこの地に暮らしていた人々の墓標のように思えた。様々な野菜を育んだであろう畑は丈の高い雑草に覆い尽くされて見る影もなく、自然と言うものの本質が何処までも人間の文化的な生活とやらと相容れないものであるのを雄弁に物語っている。
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骨董品に関する物語・星のグラス

2019-07-29 20:46:00 | 突発お題

 手品師だった伯父は、よく魔法陣の描かれたクロスに星模様の入った細長いグラスを五つ星の形に並べてから水を注ぐとシャンパンに変わるという手品を披露してくれたが、ある日弟が過失でグラスを割ってしまって以来、どんなに頼もうと種明かしどころか手品もしてくれなくなった。
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骨董品に関する物語・すみれ色のロザリオセット

2019-07-29 20:41:44 | 突発お題

 教区の人々に慕われた葡萄酒好きな神父に、人々はお金を出し合って葡萄酒色の数珠を贈った。集まったお金は紫水晶の数珠を買える程の金額ではなかったが、ガラスビーズ製で長めのものと短めのものを揃いで用意することが出来たので、それからの神父は礼拝の時にどちらかを常に身に着けていた。
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骨董品に関する物語・キマイラのコーベル(棚)

2019-07-29 20:40:06 | 突発お題

 誘蛾灯に誘われる蛾のように、異形の者たちは光に誘われながら輝きの下で浮かび上がる異形に知る必要のなかった己の醜い姿を思い知らされ、その身を光で焼き焦がす。だから悪魔は闇に潜んで光を憎み、神の子である人間の心を闇に堕として異形と変え心の慰めとするのだと言う。
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骨董品に関する物語・空色のロザリオケース

2019-07-29 20:38:08 | 突発お題

 太陽にも月にも、お星さまにだって神様や天使は暮らしていらっしゃるのに、どうして空には神様がいらっしゃらないのと尋ねてきた娘に、空は広すぎて一人の神様や天使では治め切れないんだよと答えると、それじゃ空があんなに青くて綺麗なのはきっと寂しいからなんだねと呟いた。
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