カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

骨董品に関する物語・フルール・ド・リスのシャトレーン

2022-10-16 23:03:18 | 突発お題

 母は普段から緻密な細工の入った金属製の容れ物を腰に下げていたが、そこに何が入っているのかを尋ねても何故か教えてくれなかった。やがて母が病に倒れ、そのまま還らぬ人になってから初めて開いた容れ物には、見覚えのない男性のスペルが刻み込まれた古い鍵と石の外れた古い指輪。
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骨董品に関する物語・サン・ヴァンサンの星

2022-10-16 22:59:04 | 突発お題

 ある日、星型の石を丘の上で拾った。きっと空から降ってきたに違いないと装飾品に仕立てて師匠に見せると、それは星の海からもたらされたものではなく、かつて太古の海に群生していた百合の欠片だと教えられた。星はしばしば人が焦がれる高みではなく、足元に広がる世界で生まれる。
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骨董品に関する物語・薔薇色のボンボニエール

2022-10-05 23:19:31 | 突発お題

 最初に一番好きな味のお菓子を入れると透明な器が薔薇色に染まり、以降に入れるお菓子が全て同じ味になる。そうやって長い間一番好きな味を楽しんできたが、やがて自分の一番好きな味が変わり薔薇色だった器が透明に戻った頃、私は次の相手に菓子器を譲る順番が来たことを悟った。
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骨董品に関する物語・サテュロスとエロースの宝石箱

2022-10-05 23:12:05 | 突発お題

 錬金術アカデミーに通う学生は色々な意味でフリーダムな連中が多いが、課題を仕上げる手段や材料も実に多彩だ。例えば幻獣や天使モチーフを制作物にあしらう学友は自分で捕獲した本物を加工して使用する。それはいいのだが、期末課題の材料を調達しに行ったきり一月ほど戻らない。
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