カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

五十八冊目・『古なる大人の空白』

2018-05-31 20:12:38 | サスペンスはお好きですか?
たかあきは『古なる大人の空白』事件を解説してください。

 友人は昔から妙なものが見えるそうだが、そのような話をすると大概はろくでもないことになるので黙っていると言う。ある日、近くを通り過ぎた知らない人に一瞬だけ凄まじい視線を向けたあと、普通は人間のご先祖が見えるんだけどねえと呟いたので何事かと尋ねたら、あんたの後ろはマトモで優しそうなおばあちゃんだから大丈夫と言われた。

 いったい彼女には何が見えたのか少しだけ気になったが、いつものように何も聞かないことにした。
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五十七冊目・『切り裂かれし追憶の暗夜』

2018-05-30 20:39:22 | サスペンスはお好きですか?
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 その日の晩、僕の家族は祖父母も、両親も、姉も、弟も、産まれて間もない妹までが息の音が止まるまで切り刻まれた。やがて故郷を離れ、施設で暮らすことになった僕は十六歳の誕誕生日に「家族のことを知りたければ会いに来い」と手紙を受け取る。差出人は兄、僕を含めて家族を切り刻んた本人だ。

 僕の家族が殺されなければならなかった理由を知る為に、そして、あの日僕が見た惨劇の真実を知る為に、僕はその申し出を受けることにした。
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五十六冊目・『古き追憶の愛憎』

2018-05-28 19:05:55 | サスペンスはお好きですか?
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 定年退職したその日、妻に離婚を切り出された。あらかたの準備は済んでいるから書類にサインを欲しいと言い放つ妻に、何故いきなりそんなことを言い出したのかと尋ねると、あなたが今まで気づこうとしなかっただけだと笑われた。仕事に人生を捧げて来た私は、それを支える控えめな貞淑な妻と共に平和で平凡な生活を送ってきた。時折は妻の表情が曇ったり、声を荒げたりもされたが、どの家でも普通にあることだと思っていた。
 どうやら私は、妻だと信じていた女と別のものを見ながら別の世界で生きてきたらしい。
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五十五冊目・『か弱き子供の断絶』

2018-05-27 18:46:16 | サスペンスはお好きですか?
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 妻が別の男と逃げた頃、人生が最悪で何も思い通りにならない中、幼い息子だけが私を慕って愛してくれた。だから私は愛する息子を思うさまに踏みにじり、それでも息子が私の姿を求めるのを確認することで何とか生きることができた。それは謂わば、私と息子にだけ通じる愛の形だと思っていた。やがて成長した息子は私に冷ややかな目を向けるようになったが、私はそれでも息子を愛し、ある日包丁で滅多突きにされた。
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五十四冊目・『切り裂かれし復讐の虐殺』

2018-05-26 19:58:43 | サスペンスはお好きですか?
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 突然村を襲った襲撃者は一片の容赦も慈悲もないまま、老人も赤子も一人残らず虐殺して回り、生き残れた村人は偶然に村を離れていた数人のみとなった。彼らは襲撃者と襲撃者に滅ぼされた村を決して忘れず、長い時間をかけて襲撃者の正体を調べた。そして、旅人だった襲撃者の両親が村の人間に生贄として殺され、襲撃者自身も殺されかけたことを知った。
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五十三冊目・『引き裂かれし一族の密室』

2018-05-25 23:31:27 | サスペンスはお好きですか?
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 昔は結構な名家だったらしい僕の家も、祖父母が駆け落ち同然に故郷を離れた今では普通のサラリーマンなのだが、ある日、かつて存在したという遺産とやらを狙った連中に目をつけられて、生活が酷く搔き乱される羽目に陥った。とうとう家族の誘拐未遂まで発生して辟易した僕は、遺産の正体を知るために今は亡き祖父母が逃げてきたという孤島を目指す事にした。
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五十二冊目・『孤独なる一族の誘拐』

2018-05-24 22:24:41 | サスペンスはお好きですか?
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 自分だけの家族が欲しかった彼は、何人もの女性を誘拐して地下室に鎖で繋いで監禁した。まともな食事も与えず電気ショックによる拷問を繰り返し、死んだ娘は切り刻んで「餌」にした。そんな凶行は彼に手懐けられたふりをした被害者の一人が隙を伺って逃げ出し、警察に連絡するまで続けられたのだった。
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五十一冊目・『呪われし絡繰り仕掛けの愛憎』

2018-05-22 21:19:45 | サスペンスはお好きですか?
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 美しく細密な絡繰り人形として生み出された彼女は、主から「殺せ」と命令を受けた。それは絡繰り人形である彼女にとっては唯一絶対の存在理由であり、同時に行動原理でもあったが、彼女の主は「誰」を殺すのかの彼女に伝える前に死んだ。だから彼女は主人が最後に遺した命令を果たすため、己の目に映る生あるもの全てに対して容赦ない殺戮を繰り返すことになったのだ。
 彼女を動かす絡繰りを誰かが打ち砕く、その日まで。
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五十冊目・『汚れし絡繰り仕掛けの記録』

2018-05-19 15:07:41 | サスペンスはお好きですか?
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 かつて東欧には『鋼鉄の処女』という処刑器具が存在していたという。その造形については所説あるが、共通しているのはどのような形式であれ、器具に仕込まれた針が若い娘の肉体を貫いて、生き血を搾り取るのに使われたという伝承だ。それが実際に使われたかはともかく、若返りを夢見て若い娘の生き血で湯浴みしたという伯爵夫人の伝承とともに、悪夢じみた幻想を呼び起こす話ではある。
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四十九冊目・『尊き廃墟のセレナード』

2018-05-18 21:54:52 | サスペンスはお好きですか?
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 のろまで太っていた私は毎日のように苛められていたが、町外れにある秘密の隠れ家に行くと綺麗なお兄さんが優しくしてくれた。お兄さんは何故か私にしか姿を見せず、私の後をついてきた苛めっ子たちは私を嘘つき呼ばわりしたが、引っ越すまでずっと私の安らぎになってくれた。なのに何故、私が再び訪れた隠れ家には服を着た小さな子供の骨が散らばっているのだろう。
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