カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

七十九冊目・『清き復讐のクロニクル』

2018-06-30 19:59:50 | サスペンスはお好きですか?
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 昔読んだ話。深く愛していた夫に裏切られた女が七人の娘に託したのは、この世界の根幹を揺るがす復讐の手段だった。人造の皮膚は容易く人の姿を別人に変えて信頼を奪い、各地にばらまかれた膨大な金塊は貨幣経済を崩壊させ、やがて世界を構築していたはずの秩序は女の望み通りに崩れ去ったのだった。
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七十八冊目・『芳しき偽物の強奪』

2018-06-27 19:48:37 | サスペンスはお好きですか?
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 旧家の財宝を狙う盗賊団が標的にする危険性から、その家の一人息子と年恰好の良く似た探偵助手を入れ替えて生活させていたら、案の定探偵助手が攫われてしまった。そこまでは計算の内だったのだが、盗賊団から『花嫁は有難く頂いた』という返事が届き、探偵は今後に発生するであろう事件に関する対応の変化を余儀なくされることになった。
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七十七冊目・『哀しき王国の秘密』

2018-06-26 20:41:25 | サスペンスはお好きですか?
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 その国はかつて、後継者争いを防ぐ目的から第一王子以外の王の息子は残らず殺される運命にあった。やがて弟殺しの精神的負担に耐え切れなくなった何代目かの王は「檻(カフェス)」と呼ばれる離宮に弟達を幽閉することにした。彼らの殆どは檻の中で不妊の后と僅かばかりの自由を与えられ、政治や世俗に関わることなく刺繍や小物を拵えながらその生涯を終えることになった。
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七十六冊目・『哀しき裏切りの空白』

2018-06-25 19:14:32 | サスペンスはお好きですか?
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 私の過去の記憶には他人の顔が無い。子どもの頃に酷い虐めに遭った時、親友だと思っていた相手が掌を返して虐めに参加してきた時以来、助けてくれなかった両親や先生も含めて全員の顔が無くなった。だから今、私の目の前で、あの時のことをどうか許して欲しいと泣き崩れる相手が一体誰なのかが、どうしても思い出せない。
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七十五冊目・『大いなる名探偵の正義』

2018-06-23 19:56:40 | サスペンスはお好きですか?
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 この国では名前を知らぬものがない程に有名な名探偵は、独自の揺るぎない美学を以て事件に当たるのが常だった。犯人の行動を的確に予測しながら犯行を、ある時は未然に防ぎ、ある時は見逃す。それも全ては事件を最大限まで盛り上げる演出であり、事件に関わった人間は一人残らず彼の脚本の元で役者となる。そして、事件を首尾よく解決した彼を次なる事件に駆り立てるのは名誉欲でも報酬でもなく、より完成された事件の構築欲だった。
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七十四冊目・『哀しき偽物の子守歌』

2018-06-21 19:21:29 | サスペンスはお好きですか?
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 昔読んだ話。幸せだった夫婦の家庭は、泥棒に入った男が夫婦に見つかった際、持っていた包丁で彼らの赤ん坊の首を刺したことで大きく狂った。母は成長した首に創傷を持つ息子に激しく勉強を強要しつつ、息子の名を呼んでは泣き崩れるようになった。母の厳しさを愛だと受け止めながら育った息子は、しかし、やがて残酷すぎる真実を知って復讐に転じるのだった。
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七十三冊目・『汚れし一族の空白』

2018-06-20 19:25:07 | サスペンスはお好きですか?
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 かつては代々血族婚を繰り返してきた地元名士の家系には、たまに色々な意味で手が付けられない人間が生まれることがある。それが本家筋の跡取りだったりすると、周囲は当人が成人するまで黙って暴虐に耐えるしかないのだが、成人後に一時期村を離れた後には、性格だけではなく容姿も、まるで別人のように立派になって帰ってくるのが常だった。もちろん、名士の一族だけでなく村人の誰一人として、その変化について詳しく追及するものは存在しない。
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七十二冊目・『凍えし孤島の悔恨』

2018-06-19 18:36:23 | サスペンスはお好きですか?
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 海で遭難した若者達がようやく辿り着いた雪で閉ざされた孤島は、不可解な因習を守りながら生きる奇妙な村人達が暮らしていた。しかし、よそ者が現れた事によって発生する凄惨な事件の数々に若者達も覚悟を決め、この盛り過ぎたホラー環境設定下で命を賭けた戦いを始める。が、誰が言い出したかは不明だが、武器として用意したのが丸太なのは明らかに問題だった。
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七十一冊目・『迅き親子の悲哀』

2018-06-18 23:17:17 | サスペンスはお好きですか?
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 己が生きた証として、自らの命と引き換えに次代の命を残すと決めた母親と、愛した女性を失いたくないあまりに新しい命を拒んだ父親の間に生まれた子供が、ようやく両親の愛に気付くことが出来たのは、自らもまた新しい命と愛する人の命の、どちらか一つだけを選択するように迫られた時のことだった。
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帳尻を合わせる

2018-06-16 19:30:24 | 雑記
 私には昔から怖い話を読み漁る習慣がある。

 思えば小学生の頃、まんが日本昔話で放映された耳なし芳一の話に酷く怯えて以来、怖い話の蒐集は自分にとって人生における最重要事項の一つと化した気がする。恐らく物語の内容を知ることで恐怖そのものを制御しようと、幼いながらに考えたのだろう。

 やがて恐怖の対象は幽霊や妖怪だけでなく生身の人間にも及び、大きな事故や犯罪、或いは天災などの情報も蒐集するようになって気付いたのだが、人間が尋常とは言いかねる状況で死亡した場合、必ずと言っていいほど人々は不可解な怪異を語るのだ。
 恐らくそれは理不尽に奪われた生命に対する哀悼であり、一歩間違えば己自身が命を奪われていたかもしれないという恐れであり、更には生き残ってしまった事に対する後ろめたさなのだろうと最近は思うようになった。因果は実際のところ、その因縁を知らない人間にとっては理不尽極まりないものであり、そんな理不尽を一番わかりやすく体現したのが、死にきれず現世に現れる被害者の姿なのだ。

 しかし、世の中には極めて些細な事象を基に組み上げられていく「怪談」も決して少なくない。ろくな実体を持たぬまま怪異としての完成度を高めていった物語は、一体どこでその恐怖に対する帳尻を合わせるのだろうか。

 
 

 
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