カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

竜飼いその78・若葉を見送りながら

2020-09-26 20:49:58 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は若緑の疾風トカゲモドキという品種名です。気性はお馬鹿で、用途は子守りです。

 うちの子守り竜は子供が言う事を聞かないと転がって動かなくなる。単に事態に対応出来なくなってフリーズ状態に陥るのだが、子供は竜が死んでしまったと大泣きして仲直りする。そんな騒々しくも微笑ましいやり取りは子供が成長して孫が生まれた後も、竜が寿命で本当に動かなくなってしまうまで続いた。
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竜飼いその77・飛べない竜と消えた兄

2020-09-25 21:07:26 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜はどどめ色の幽玄オールドドラゴンという品種名です。気性は従順で、用途は移動用です。

 うちの飛竜は体色が天然迷彩の上に羽音がほとんどしないせいか極めて気配を消すのが巧い。ただ、気性的に戦闘向きではないので猟に出る時は常に騎乗した兄が獲物を仕留める役目を果たしていた。だからあの日、何故兄だけが戻って来なかったのかは恐らく二度と飛べなくなった飛竜だけが知っている。
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竜飼いその76・土色遊戯

2020-09-23 23:37:00 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は焦茶色の虚空トカゲモドキという品種名です。気性は乱暴もので、用途はペットです。

 うちの竜は近所にある緑地公園を散歩中、よく地べたに転がってじたばたと暴れる。傍から見ると聞き分けの無い駄々っ子のようだが、何かあっては大変だと医者に見て貰ったところ異常はなく、恐らく単に土の感触が好きなのだろうと言われたので、散歩の後はそういうものだと潔く洗うことにしたら、何故か余計派手に転がるようになった。
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骨董品に関する物語・ヴィクトリア朝の涙壺・その2

2020-09-18 21:20:06 | 幻想世界の竜飼い

 奔放の限りを尽くした夫の元で病み衰えた彼女は、ある日とうとう臨終の時を迎えることになった。そうなって初めて夫は妻に対する嘗ての熱愛を思い出して赦しを請うたが、彼女は微笑みながら貴方を決して赦しませんと涙の詰まった壺を渡した。それが愛なのか呪いなのかは娘の私にも分からない。
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骨董品に関する物語・十二星座の図版

2020-09-18 21:18:01 | 突発お題

「一体、何だって昔の人間は夜空の星を勝手に繋いで星座なんてものをでっち上げたんだろうな」
「そうせざるを得なかったからだろう。考えてもみろ、夜毎に輝く星々の光に意味を見出せなかった人間が闇の深さに耐えられると思うのか。人間には『意味』が必要なんだよ。勿論俺にも、お前にもな」

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竜飼いその75・甘美なる琥珀の竜

2020-09-17 21:03:17 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は紫暗の鉱石トカゲモドキという品種名です。気性は穏やかで、用途は食用です。

 友人は琥珀糖という半透明な鉱石を思わせる砂糖菓子を作るのが得意だが、何故か完成してしばらくは竜が鳴いているような音を立てる。理由については昔同じ名前の竜がうちにいたからだと思うと友人は言い、分かったような良く分からないような気分になるが、琥珀糖は美味なので気にしないことにした。
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竜飼いその74・竜の恩返し(バレバレ)

2020-09-16 22:32:51 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は真紅色の疾風ドラゴンという品種名です。気性は温和で、用途は家事手伝いです。

 街外れで紐に絡まっていた赤い色の飛竜を助けたら、数日後に赤毛の娘がうちに一晩泊めて欲しいと尋ねて来てそのまま居座った。家事を手伝ってくれるから居てくれるのは別に構わないのだが、たまに尻尾や角が露出しているのを指摘したら、やはり正体を知られた以上此処にはもう居られませんと帰ってしまうのだろうか。
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骨董品に関する物語・揺り籠のペンダント

2020-09-13 21:15:50 | 突発お題

 子供のいない夫婦が小さな揺り籠のペンダントを手に入れた。ある日妻が何の気なしに揺り籠の蓋を開けると黄金色に輝く赤子が納まっていたので反射的に蓋を閉めた。やがて子供を身ごもった妻が再び蓋を開けた時に赤子の姿はなくなっていて、やがて私が産まれたと母は微笑んで言った。

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骨董品に関する物語・天然水晶とスターリングシルバーのペンデュラム

2020-09-13 21:11:15 | 突発お題

 これで宝物を探そうと目を輝かせながら鎖の付いた水晶を私に見せてきた彼は、神妙な表情で鎖を垂らして水晶の動きを目で追う。すると水晶は揺れ出し、やがて大きく回り始めた。けれど、何かがあるとその場を掘ってもワクワクするようなものは何も見つからず、その度に落胆する彼だったが、私と一緒に宝探しをすると何故か必ず水晶が回るのだ。
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骨董品に関する物語・十九世紀フランスの宝石箱

2020-09-13 21:08:58 | 突発お題

 例え道端の石ころであろうと、自分が似合うと思うのならこの宝石箱に収めればいいと母は言った。ただし、このちっぽけな棺にも似た空間に相応しいのは決して埋葬される事の無い不死と永遠を体現するもの、時を経ても尚その姿を変える事を拒むもの、人の暦では測れない時を刻むものであると。
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