カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

「昼」「時間」「きれいな城」ジャンル「ギャグコメ」より・王子様の行列

2015-03-31 21:22:37 | 三題噺
 小さなお城に住む王子様は散らかし魔で、昼間どんなに片付けても夕方には城内を滅茶苦茶にしてしまい、家臣たちの頭痛の種でした。

 そこである日、高名な魔法使いが術を振るって散らかしたものが王子様を追いかけるようにしたのですが、これは僕の行列だと喜んだ王子様によって事態は更に悪化しました。
 王子様の友達が「お前、ゴミを連れて歩いてるぞ」と指摘するまで、行列は続きました。
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「砂」「終末」「最初の大学」ジャンル「ミステリー」より・正義の使者(多分)

2015-03-30 20:18:51 | 三題噺
 更に続く船長の話。

「私の通っていた航空大学は私の入学時に新設されたのだが、理事や教授が結託して不正が蔓延っている悪の巣でな。
 この私も叩き潰すまでには卒業寸前までかかった。お陰で就職も外宇宙の探査船しか選べなかったが、まあ天職だと思っているよ」

 ここで我々は船長の母校の閉校理由を悟った。
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「山」「タライ」「真のヒロイン」ジャンル「SF」より・小さな桃源郷

2015-03-29 22:55:25 | 三題噺
 趣味で洗面器くらい大きさの台座に箱庭世界を作った。
 山に囲まれて湖を望む小さな村だが、いつの間にか何処から来たかも判らない住人が住み着いた。
 ジオラマの家に家財道具を持ち込み、湖から水を引いて田畑を牛と共に耕し、洗濯物がはためき子供が犬と駆け回る、そんな桃源郷のような世界で私は村の女神と認識されてるらしく、彼らが作った祠にはたまに小さなお供えが置かれ、私は代わりに木ぎれや役に立ちそうなものをお返しに置いておくのだ。
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「池」「オアシス」「壊れた恩返し」ジャンル「サイコミステリー」より・砂漠の魔法使い

2015-03-28 20:52:29 | 三題噺
 魔力を込められた小さな池は魔法使いの丹精を込めた管理によって豊かなオアシスへと成長し、やがて己の主人である魔法使いの生活を守るべく周囲に蜃気楼の結界を張った。
 そして、張り巡らされた蜃気楼はオアシスと、そこに住む魔法使いの姿を完全に遮断し、故に彼の力を求めて魔法使いを訪ねようとした人間は残らず力尽きて砂漠の砂と化し、偉大なる力を持つ魔法使いはその力を殆ど振るうこと無く、オアシスでたった一人の生涯を終えた。
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「星」「銅像」「業務用の中学校」ジャンル「悲恋」より・彼女の思い出

2015-03-27 19:24:51 | 三題噺
 船長の話は続く。
「そう言えば私の初恋は中等部の同級生なのだが、彼女に相応しい男になろうと実技も筆記試験も全力でぶつかって行ったら、貴方が欲しいのはパートナーではなくライバルでしょうと言われた。その通りだと答えたら彼女との縁はクラス替えで終わってしまったが、まあ良い思い出だよ」

 取りあえず、誰も何も言えなかった。
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「宇宙」「死神」「伝説の高校」ジャンル「童話」より・船長の思い出話

2015-03-26 20:21:34 | 三題噺
 暇だから昔話でも話すか、と言うなり船長が唐突に話し始めた。

「私が航空学校に通っていた頃、お約束だが校内七不思議があって、その中の死神が現れると言う鏡の条件を揃えて試してみた。
 結論から言うと現れたのは悪魔で何か願い事を言えと迫ってきたので、とりあえず私の魂を代償にするなら宇宙人類の平和共存以外に認める気は無いと答えたら凄まじく狼狽されたが、とにかくやれと首根っこを掴んだら泣いて謝ってきた。
 あの悪魔は今でもきちんと仕事をしているだろうか?」

 その場にいた全員が無言のまま、名も知らぬ悪魔に深く激しく同情した。
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「音楽」「ヤカン」「役に立たない中学校」ジャンル「悲恋」より・ヤカン男とウグイス娘

2015-03-25 21:08:03 | 三題噺
 声が大きいだというだけの理由で合唱部に入部させられた僕は、ソプラノパートのリーダーを務める女の子に恋をした。当然のように想いを伝える術もないまま、ただ練習曲を一生懸命歌っていた僕は、ある日彼女が僕の歌を笛吹きケトルのようだと話しているのを聞いて心が折れ、合唱部を退部しようと思ったが、貴重な男性パートを失うまいとしたらしい部長の根回しによって叶わず、三年間を傷心の中で過ごした。
 結局、傷心から立ち直るには年単位の日々が必要だったが、その後無理矢理参加させられた合唱部のOB会で、彼女の言う笛吹きケトルが気を引き締める合図的な褒め言葉だったと知って更に愕然とすることになった。
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「黄色」「サボテン」「魅惑的なカエル」ジャンル「悲恋」より・有る愛の唄

2015-03-24 23:49:01 | 三題噺
 悲しい無理心中の話。

 美しい縞を持つ黄色い蛇に恋した蛙がいた。蛙は蛇が決して自分の想いを受け入れてくれないことを知っていたので、いっそ食べて貰おうと蛇の前に己の身を投げ出した。そして望み通りに蛇に呑まれて全身の骨を砕かれた蛙は、己の持つ毒で愛しい蛇を殺した。
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「鳥」「狼」「ゆがんだ大学」ジャンル「スイーツ(笑)」より・鳥獣戯画

2015-03-23 21:42:27 | 三題噺
 その大学には「鷹の眼」と呼ばれる女と「送り狼」と呼ばれる男がいた。
 「鷹の眼」は狙った相手を一撃必殺の勢いで陥落させ、「送り狼」は地味で粘り強いアプローチの末に良い関係を築くのを得意としていた。
 そしてある日、とうとう出逢ってしまった二人は究極のバカップルと化していちゃついた末に単位未修得で共に大学を去り、色々な意味で伝説となった。
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「林」「タンス」「最強の関係」ジャンル「悲恋」より・いつまでも貴方を愛します

2015-03-22 20:28:54 | 三題噺
 その地方では大地主だった家に生まれた彼女は幼い頃から裕福な生活を送っていて、彼女が嫁入するとき、彼女の祖父は自分の山から切り出させた木で立派な箪笥を作って嫁入り道具に持たせた。
 やがて戦争が始まり、ようやく終わったときに彼女は家族も財産もあらかたを無くしていた。
 それでも残った子供を立派に育て上げ、穏やかな隠居生活を送れるようになった彼女は、ある日骨董好きの孫が見つけてきた懐かしい箪笥に刻まれた良人の文字の前で、本当に久し振りに泣いた。
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