カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

幽霊その50・人違い

2022-04-30 20:36:01 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは全てを失った日、病院で、むっちゃ怖い人形の幽霊に出会い、三丁目の田中さんを見ませんでしたかと頼まれました。

 病院で目覚めると眼前に焼け焦げた人形が憤怒の表情で浮かんでいた。家が燃えたのはコイツの仕業かと見当をつけていると私とは違う名前で呼ばれたので、アンタが探しているのは三丁目の田中だと教えたら即座に姿を消した。次の日、三丁目で大火災があったとニュースで知ったが深く考えないことにした。
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骨董品に関する物語・1930年代のイギリスのゲーム"Panto People"

2022-04-29 21:22:48 | 突発お題

 子供の頃、家にはお伽噺をモチーフにした一組のゲームカードがあった。汚すからと滅多に触らせてもらえなかったが、見詰めていると描かれている登場人物が朗々と自分たちの物語を語ってくれるのがとても楽しかった。やがて大人になるとカードはいつの間にか何処かに行ってしまったが、両親は元々あのカードに朗読機能など搭載さていなかったという。
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初夏の創作怪談・溝鼠の話

2022-04-24 13:57:32 | 突発お題

 昔、バイト先の掃除中に棚の下で半ば崩れている溝鼠の骸を見付けた事がある。腐肉の狭間を白い虫が蠢き、箒で突くとあっさり形を変える姿に、最近大振りの蠅が飛び交うのも淀んだような臭いがしていたのもコイツのせいかと、半分以上感覚が麻痺した状態で店長に報告して片付けた。数日後、店長に呼ばれて鼠捕りに掛かって暴れている溝鼠の処分をお前なら平気だろう?と押し付けられそうになったが、自分の職分に鼠殺しは含まれていないので断り、結局その店を辞めた。
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幽霊その49・哀しき玩具

2022-04-23 13:15:17 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは大昔、友達の家で、ぼんやりした洗濯ものの幽霊に出会い、どうか連れて行ってくださいと号泣されました。

 母は子どもの頃、とても大事にしていたぬいぐるみを友達が勝手に持って帰り、親からも我慢しなさいと言われたことがある。もちろん昔から我の強かった母がそれを承知する筈もなく怒り心頭状態で友達の家に押し掛け、飽きて打ち捨てられ、見る影もない姿と成り果てたぬいぐるみを奪い返して自ら綻びを繕い、綺麗に洗濯した。翌日から親と友達一家は数日間、毎晩のように訳の分からない悪夢に魘され続けたそうだ。
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幽霊その48・取り遺されるモノ

2022-04-10 16:39:15 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは友人が亡くなった日、ショッピングモールで、どこかで見たことのある老人の幽霊に出会い、どうか連れて行ってくださいと言われました。

 友人の葬式に向かっている途中で奴の父親に遭遇した。妻と、まだ小さかった息子を捨てて別の女と逃げた男は、自分が死んだことにも気付かぬまま昔住んでいた家と家族を探し回っている様子だったが、もはやあの男にあの家に戻る権利はないし、周囲に悼まれ見送られる奴と同じ場所に逝く事も出来ない。
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骨董品に関する物語・オパールセントガラスのピアス、ペンダント、ブレスレットの3点セット

2022-04-09 18:02:40 | 突発お題

 長い間独身を貫いていた叔父の持つ宝石箱には、虹色に輝く硝子製の花をモチーフにした数点のアクセサリーが入っていた。元々は指輪もあったが、今は冷たい土の下に埋まっている棺の中で眠る婚約者の指に輝いている。もし永遠の愛という呪いに殉じるのなら此れをお前にやろうと伯父は疲れた笑顔で囁く。
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骨董品に関する物語・聖書に由来するマスタードシード / からしの種のペンダント

2022-04-09 18:00:21 | 突発お題

 人間の抱く可能性というのは植物の種のようなもので、菫の種は決して薔薇の花を咲かせない。だが、ただ一粒の芥子の種が異郷で芽生えて根を張り、花を咲かせて種を落とし、再び芽吹きながら広がり、やがてその地を支配するかのように隆盛を極めることもまた、珍しい話ではないのだ。
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幽霊その47・山のスイカ

2022-04-03 17:00:57 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは昨日、山奥で、血塗れの男性の幽霊に出会い、コレを渡して下さいと言われました。

 冬山で遭難した義弟とは仲が良かったので、春になってから現場を尋ねてみた。するとガレ場で光るものがあったので拾うと奴の名前が彫られた指輪だった。もしも、まだ義弟が此処にいるなら姿を見せて欲しいと一瞬だけ思ったが、山岳用語でスイカと呼ばれる無残な姿を晒したくないのだろうと思い直した。
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幽霊その46・佇む少年

2022-04-02 23:05:46 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは昨日、バス停で、かなりグロい少年の幽霊に出会い、あの人に伝えて欲しいとお願いされました。

 バス停近くの道端に菊の花束が置かれていたので嫌な予感がしたら、案の定ひどい怪我をしている半分透けた姿の少年に声を掛けられた。花を供えられている間はここから移動できないという少年の頼みで花束から菊を1輪抜き、少年の案内のまま一軒の家に辿り着いた私は菊の花を置いて、その場を後にした。
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