カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

第十一景・新春飾り

2018-12-31 20:20:02 | 桜百景
たかあきは、朝の玩具と桜の造花に関わるお話を語ってください。

 手先が器用な姉は、玄関先に飾る豪華な正月飾りを大晦日の朝まで掛かって完成させた。藁と和紙をメイン素材に使ったリースはなかなか見栄えのする良い出来だが、何故かメインで使った飾りつけの花が梅ではなく桜だったので季節柄どうよと少しだけ微妙な気分になった。姉は新春に桜の花を飾って何が悪いと主張しているが、この感覚はどちらがおかしいのだろうか?
コメント

第十景・夢の跡

2018-12-29 10:27:28 | 桜百景
たかあきは、暁の異星と桜の根に関わるお話を語ってください。

 異星のテラフォーミングは地球植物がその惑星の環境に適応できるかが重要な鍵となる。ただし時には過適応と呼ばれる異常繁殖や変異が発生して移民不可能な惑星となる場合もある。そういう意味で、その惑星は地表の殆どを他の動植物を駆逐した巨大な桜樹に覆われ、年中花が咲き誇る不毛の大地と化した。
コメント

第九景・風の又三郎

2018-12-27 23:53:00 | 桜百景
たかあきは、風の家族と桜の幹に関わるお話を語ってください。

 青い胡桃も酸っぱい花梨も吹き飛ばす突風が、どんなに葉っぱを散らそうと桜の幹は揺るぎもしなかった。何だ詰まらないと去っていった風は、その年に沢山の葉っぱを散らされた桜が秋に薄紅の花を狂い咲かせた理由が自分たちであることを、今でも知らないままだ。
コメント

第八景・散る桜花は物哀しく

2018-12-26 21:27:34 | 桜百景
たかあきは、突風の哀しみと桜の狭間に関わるお話を語ってください。

 突然の強い風が音を立てて吹く中、まだ十分に美しい姿のまま、それでも散り急ぎながら宙を舞う桜の花弁は物哀しい。その美しさの先には泥土にまみれて腐り果てる未来しか残されていないのも、これだけ可憐な外見をした花弁が人間の顔にぶち当たると意外なまでに痛みを伝えてくるのも、全てが物哀しい。
コメント

骨董品に関する物語・グランヴィルの「花の幻想」から、ハニーサックル

2018-12-26 21:10:05 | 突発お題

 まだ近所に空き地や緑が沢山あった頃、花の蜜や木の実は学校帰りの良いおやつだった。細長い花弁を摘んで吸うと甘い蜜の味がするからスイカズラだよと図鑑で読みたての知識を妹に披露した日は遠くなったが、代わりに今は自宅庭のスイカズラの花で甘いお酒を作るのが毎年の恒例だ。
コメント

骨董品に関する物語・グランヴィル「花の幻想」から「花の帰還」

2018-12-26 21:04:18 | 突発お題

 彼は世界の果てまで辿り着いた者の魂を天に還すのが仕事だった。ある日、彼の住む荒野に辿り着いた者が落とした土と種から緑が芽吹き、彼はそれを大切に育てた。やがて芽吹いた緑は花を咲かせ種が実り、やがて荒野は様々な花の溢れる緑野となった。その元々は荒地だった緑野を、生者は彼岸と呼ぶ。
コメント

骨董品に関する物語・天使の印章

2018-12-26 21:00:36 | 突発お題

 長年天使の美術品を蒐集していた叔父が蒐集品の殆どを手放すというので最後に見せて貰いに行ったら、記念にと小さな印章をくれた。使い方は紙に蝋を垂らして捺印すればいいと実演してみせた叔父に蒐集品を手放す理由を尋ねると、実は天使の正体が古い空気だと気付いたからなんだと愉快そうに笑った。だから、少しばかり蒐集品の重みを軽くしてみることにしたのだと。
コメント

第七景・装う花と実らぬ種

2018-12-25 20:56:06 | 桜百景
たかあきは、初夏の思い出と桜の枝に関わるお話を語ってください。

 桜の花が散り終えると徐々に大きくなる若葉と一緒に小さな桜の実も膨らみ、色付いていく。ただし、食用のサクランボと違ってこの桜の実は渋くて食べられないだけでなく、土に撒いても殆ど発芽することはない。かつては不稔性と呼ばれた、ソメイヨシノと呼ばれる桜が花の美しさと引換えに失ったものだ。
コメント

骨董品に関する物語・天文書「ロンドンの夜空」

2018-12-25 20:42:55 | 突発お題

 奇妙な雰囲気を持つお客は店内を物珍しそうに眺めまわしてから一冊の天文書を手に取り、中身の説明を求めてきた。倫敦を知らない相手に出来るだけ分かり易く本の内容を話すと、故郷とは随分星図が違いますねと言ってお買上げ頂いた。お金は本物だったので首が前後ろ逆でも気にしない事にしよう。


コメント

骨董品に関する物語・ブルーストライプの香水瓶

2018-12-24 14:55:49 | 突発お題

 最近、若い女性から発する良い香りは桃の果実と同じ成分という話を聞いた。香水は基本的に若い女性は花や果物など軽い植物系、ある程度歳を重ねてからはそれに麝香など動物油脂を加えた重い香りが相応とされるが、基本成分には必ずアンモニアなど排泄物系の不快臭が極めて微量に混入される。
コメント