カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

幽霊その59・泣き続ける少年

2023-02-04 15:42:28 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
青猫亭たかあきは昨日、学校で、見知らぬ少年の幽霊に出会い、三丁目の田中さんを見ませんでしたかと号泣されました。

 僕よりやや年少に見える子供は、校門の前で道が判らないと泣き続けていた。恐らくは何度帰り道を辿っても家に辿り着けないのだろう。無理もない、少年の服装から察するに彼はもう十年以上、彼が生きていた頃とはすっかり変わってしまった道を、今はもう存在しない自分の家を目指しているのだろうから。
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幽霊その58・佇む人

2023-01-29 19:19:26 | あなたが出会った幽霊に託されたもの

 バスを待っていると何となく透けた車両が停まった。とりあえず私は乗らずに前に並んでいた透けた人たちを見送って次のバスを待っていたが、何故か一人だけ残っていた透けた人があいつはまだ来ないなどとブツブツ呟いていたので知らない振りをした。この人はあいつが来るまでこうしているのだろうか。
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幽霊その57・愛憎の彼方へ

2022-07-03 12:49:29 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
 たかあきは失恋した日、コンビニで、かなりグロい女性の幽霊に出会い、家族に会いたいとお願いされました。

 ちょうど失恋で落ち込んでコンディションが最悪だったせいか、普段は視得ない相手と目が合ってしまった。かなりのダメージを負ったらしくドロドロの格好をした相手は確か近所のお嫁さんで、亡くなったという話は聞かないんだがと思って帰ろうとしたら付いて来た。結局お嫁さんは婚家に戻ったが、あのお嫁さんが生きていようと既に死んでいようと、きっとあの家ではこれから凄惨な修羅場が訪れることになるだろう。
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幽霊その56・愛別離苦

2022-06-04 21:30:32 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは失恋した日、スーパーで、ちょっと溶けた感じに見える猫の幽霊に出会い、あの人に伝えて欲しいと誘われました。

 どんなに頑張っても上手くいかなかった恋愛に終止符を打った日、それでも普段通りにスーパーで買い物をしていたら少し前に虹の橋を渡った筈の友人宅で飼われていた猫に遭遇した。俺はもう逝くから飼い主にもう心配するな、猫缶も買わなくていいと伝えるように頼まれた今は、猫ですら愛着を断ち切って進んでいくのだと感心するしかない。
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幽霊その55・棚に飾られた少女

2022-05-06 22:39:06 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは先程、骨董品店で、恨みがましい幼女の幽霊に出会い、一緒に逝きませんかと号泣されました。

 その少女は、骨董品屋の硝子棚に飾られた陶器製の人形に憑いているというよりは既に一体化していた。もはや自我もかつての記憶も人形に溶け込みヒトとは言えない存在となった状態の少女は、それでも最後に残った欠片ばかりの意識の中、いずれは訪れる筈の己が解放される日を、ただひたすらに待ち続けていた。
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幽霊その54・座る女

2022-05-05 11:45:59 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは大昔、バス停で、むっちゃ怖い女性の幽霊に出会い、放っておいてくださいと頼まれました。

 若い頃、通勤に使っていたバスは右後部の二人掛け座席を利用する人が殆どいなかった。まあ普通の人には見えないとしても怨念溢れる表情の女性が窓際に座っている以上無理もないことで、私もなるべく避けていた。ある日、賑やかな男性が恋人らしい女性とその座席を利用してはしゃぎ回ったた時は降りる迄冷や冷やし通しだった。もっとも彼女は翌日も憤怒溢れる表情でバスに乗っていたので何だか複雑な気分になった。
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幽霊その53・通りすがりの案内者

2022-05-04 15:42:55 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは今この時、遊園地で、哀しげな男性の幽霊に出会い、あなたに取り憑いていいですかと嗚咽されました。

 連休中に遊びに来た遊園地で、一緒に歩いていた母がいきなりベンチに座り込んだ。気分でも悪くなったのかと思ったら通りすがりのサラリーマンに憑かれそうになったそうだ。家庭をないがしろにした後悔から成仏できなかった男は光を示すと礼を言って消えたらしく、素直な相手で良かったと母は平然と言ってのける。なお、もしそうでなかったら消えて貰わなければならなかったと続いた言葉は聞かなかったことにした。
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幽霊その52・佇む老婆

2022-05-03 21:52:33 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは旅行中、道端で、恨みがましい老婆の幽霊に出会い、放っておいてくださいとお願いされました。

 誰にも姿を気付かれぬまま路傍に立ち尽くす老婆は凄まじい怨念を放っていたが、それは無差別ではなく老婆の知るであろう何かに向けられたものであり、老婆はそれが現れるのをただ待っているようだった。だから私は過去に何があったかは考えず、もちろん老婆と意思を通じようとも思わぬまま、黙ってその場を後にした。
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幽霊その51・恐らくは小袖の手

2022-05-02 20:25:44 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは昨日、廃墟で、知り合いの洗濯ものの幽霊に出会い、恨みを晴らしてくれと聞かれました。

 この辺では有名な幽霊が出るという廃墟に無理やり連れて行かれた友人は、事故死した姉の形見だった大事なジャケットをはぎ取られた姿で帰ってきた。あそこにはもう行きたくないと泣くので俺が取りに行ってやったら、ジャケットはズタズタに破かれて破片が散らばっていた。どうやら友人を護った結果らしく、もともと此処にいた筈の質の悪いヤツは気配もろとも消えていた。
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幽霊その50・人違い

2022-04-30 20:36:01 | あなたが出会った幽霊に託されたもの
たかあきは全てを失った日、病院で、むっちゃ怖い人形の幽霊に出会い、三丁目の田中さんを見ませんでしたかと頼まれました。

 病院で目覚めると眼前に焼け焦げた人形が憤怒の表情で浮かんでいた。家が燃えたのはコイツの仕業かと見当をつけていると私とは違う名前で呼ばれたので、アンタが探しているのは三丁目の田中だと教えたら即座に姿を消した。次の日、三丁目で大火災があったとニュースで知ったが深く考えないことにした。
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