カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

『うそ』と【飾り(る)】より・私の為でしかない嘘

2016-01-02 00:17:55 | 物書きさん、お題です
 私は自分の文章に本当のことを書かない。必ず何処かに嘘を加えるが、それは文章を『物語』として成り立たせる為の調味料のようなもので、例えば塩を入れないとスープの味が引き締まらないなら塩を使う。そんな感覚だ。
 などと言ったら、閻魔大王様も地獄の沙汰で嘘つきの罪に対して情状を酌量してくれるだろうかと一瞬考えたが、まあ無理だろうな。
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『言葉』と【未来】より・薔薇色の日々

2016-01-01 19:11:29 | 物書きさん、お題です
 既に付き合いの跡絶えた相手からの年賀状を整理していると、まだ付き合いがあった頃の相手と自分の記憶や感情が甦ってくる。それはまるで心だけがタイムマシンであの頃に戻ったような感覚で、最終的にどのような結末を迎えた相手であろうと確かにお互い笑い合えた時期はあったのだと私に囁いてくる。
 まあ、二度と相手とよりを戻す気は無いのだが。
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『姉』と【のんびり】より・家族の光景

2015-12-31 18:20:28 | 物書きさん、お題です
 私の姉は小柄で童顔だが三児の母で、上から高三息子中二娘小六娘となっている。
 ある日、私が編んだセーターとマフラーと靴下と帽子を姉にプレゼントしたら、その後うちに遊びに来た時息子がマフラー、娘達がそれぞれセーターと帽子を身に付けていて、三人に一斉に『ありがとう』とお礼を言われた。ちなみに姉は靴下を履いていた。
 一緒にきた旦那さんが何だか寂しそうだったので、今度は腹巻きでも編もうかと思っている。
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『妹』と【奇妙】より・ナゾの預かり物

2015-12-30 00:51:47 | 物書きさん、お題です
 僕の妹は時々何処からか奇妙なモノを拾ってくる。尻尾が二股に分かれた猫などはまだ可愛い方で(実際美猫だった)、ポーカーチップ製の義眼や十三まで文字盤のある時計、挙げ句に虹色に輝く芋虫にしか見えないモノを拾ってきた時にはどうしようかと思った。
 そんな訳で、本来の持ち主が取りに現れるまでの妹特製の期間限定ギャラリーは、今日も色々な意味で大賑わいだ。
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『紅茶( hotでもcallでも可 )』より・導くもの

2015-12-28 10:53:28 | 物書きさん、お題です
 お茶のお代わりは如何ですか?と上品な老夫婦に尋ねられた僕は、それよりあちらで旦那さんがお待ちですよと答えた。穏やかな雰囲気をした老紳士の姿に驚いて駆け寄った彼女は、僕の方に向き直ると微笑んでから老紳士と一緒に姿を消した。幽霊屋敷に現れる老婆の霊は消え、後には遺族によって売却予定の家が残った。
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『ストーカー』と【飾り(る)】より・リアルひとでなしの恋

2015-12-26 02:01:24 | 物書きさん、お題です
 最近身の回りが妙だと思っていたら知らない間にストーキング対象になっていたらしい。相手は私に声を掛ける勇気も無いまま、うちのゴミを漁って私の髪や爪の他あまり詳述したくないモノを集め、自宅の物置に用意した等身大の人形に詰めて、まあ、色々とやっていたらのだそうだ。
 結局、奥さんに見付かってとんでもない騒動になり、巻き込まれた私も引っ越す羽目になった。
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『大人』と【低い】より・彼と彼女の聖夜

2015-12-25 18:07:02 | 物書きさん、お題です
 街に出てクリスマスの喧騒を楽しみたいと人間に化けた彼に、何か外観に違和感は無いかと聞かれたので大人の顔の割には背が低いと指摘したら、今度は竹馬に乗ったピエロのようなスタイルになった。加減が判らないと悩む彼に、私とキスしやすそうな身長差にしてみてと提案したら一発で調節出来た。愛の力は偉大だ。
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『迷子』と【飾り(る)】より・狐道中

2015-12-23 18:17:22 | 物書きさん、お題です
 七五三を思わせる晴れ着姿で狐面を被った子供に、稲荷神社はどこですかと聞かれたので教えてあげた。少し歩いたら髪飾りだけ違う狐面の子供に同じように聞かれたので、同じように答えた。
 そうやって稲荷神社に着くまででに少しずつ姿の違う五人の子供に道を尋ねられたが、残念ながら私が狐だと気付いた子はいなかった。今年の仙弧試験の合格者は少なそうだ。
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『プレゼント』と【謎】より・忘れ形見

2015-12-22 10:51:15 | 物書きさん、お題です
 伯父さんから送られてきた箱には鍵穴が付いていた。この鍵穴に合う鍵を見付ければ箱の中身はお前の物と言うことらしい。そして私は小さい頃、伯父さんの奥さんだった人が病死する前に鍵を貰い、ずっとアクセサリーとして持ち歩いていた。

 箱の中身は指輪と奥さんに宛てた知らない男性からの熱烈な恋文だった。
 私の記憶の中で穏やかに笑う儚げな伯母さんと、そんな伯母さんにべた惚れだった伯父さん。そして、恋文の差出人に何があったのかは知らない。
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『泣き(鳴き)声 』と【ほろ苦い】より・おしまい

2015-12-21 23:25:12 | 物書きさん、お題です
 サヨウナラと私が言うと、俺が悪かったと彼は言った。もう終わりだからと私が言うと、やり直せないかと彼は言った。今更ナニをどうやって?と私が言うと、彼はお前なら大丈夫だと思ったと、ただ泣いた。

 他人に対する思いが割とあっさり砕け散ること、そして砕け散った心は二度と元に戻らないことを、その時初めて知った。
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