カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

断髪

2016-12-30 08:26:45 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『本の中』を舞台に、『髪の毛』と『自由』と『麺類』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。


 昔のアルバムに残された写真では、セピア色の中で子供の頃のアイツが何の屈託もなく笑っている。物心ついてからずっと髪を伸ばしていたアイツは、いつだって飾りを付けた髪を奇麗に編んだり結ったりしていた。だから俺はあの日、まさかアイツが俺の言葉通りに髪を切るとは想像しておらず、その決心に呆然とするしかなかった。
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純白

2016-12-29 21:04:26 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『吹雪』を舞台に、『座布団』と『自由』と『司書』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 奴が家から出ていった日は結構な新雪が周囲に降り積もっていて、だから奴の背中を見送る俺はその白さに一瞬だが奴の行いを忘れ、俺達とは関わり合いのない場所で自分の座る場所を見つけて勝手に幸せになってくれれば良いと思った。それくらいの権利は奴にもあるのだと、あの時は本気で思った。そして今、そんなことを一瞬でも考えてしまったことに関して後悔しかない。
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跡地

2016-12-28 21:43:18 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『地下鉄』を舞台に、『パズル』と『苦悩』と『奪取』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 前回アイツが連れて行かれた帝都郊外の館は、想像通りもぬけの殻だった。焦る気持ちを抑えて廃墟と化した敷地内を探索してみると、地下室に通じる崩れ損ねた通路を発見したので周囲を探ってみると、どうもそこは何かを栽培していた跡地らしい。奴は昔から毒草に詳しく、ソレを使うことにも長けていた。そしてあの日、アイツを除く俺の家族を皆殺しにした。
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緋色

2016-12-27 23:49:54 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『水中』を舞台に、『椅子』と『ワイン』と『芳香』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 奴の処に行きますのでクロを連れて迎えに来て下さい。俺はそんなメッセージを握り潰してあの馬鹿が!と呻いた。かつて自分がどんな目に遭わされたのかを忘れているらしいのは幸いだが同時にそれ故の暴挙だろう。かつて奴によってびしょ濡れのまま血を流して気を失っていたアイツの身体の冷たさを思い出し身震いする俺。
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孤島

2016-12-26 21:43:45 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『お城』を舞台に、『渡り鳥』と『カメラ』と『凍結』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 クロにそっくりな蒸気犬、黒雪丸と一緒なら自由に歩いて良いと言われたので遠慮なしに探検を敢行することにしたが、男が暮らしている西洋の城を思わせる豪奢な造りの舘は海上に浮かぶ小島に建てられていて、周囲には他の島影一つ見えない。建物は森に囲まれているが、下手に森の奥に行こうとすると黒雪丸が唸って行く手を阻んでくるのだった。
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虚実

2016-12-23 22:27:24 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『映画館』を舞台に、『自転車』と『傘』と『記者』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 以前、映画『黄金魔人』の原作者である鷹塔に何故少年探偵役の俳優が女の子なんだと尋ねたところ、配給会社の意向だと断言された。実際君の助手は女の子だろう、最近はそういうのがウケるんだよ、それに今後の展開次第では隠された謎が明かされる事も考えられるからと笑った。今思えば殴ってでも止めさせておくべきだった。
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開戦

2016-12-22 21:04:30 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『荒野』を舞台に、『恩讐』と『笑顔』と『彼岸花』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 先生は何処にと尋ねると、男は笑顔のまま留守みたいだねと答えた。だから私は先生がこの場にいたら全力で止めていたであろう、微笑みつつ男の手を取って従うという行動に出た。従う振りをして相手の懐に飛び込み、事件の全容を解明すると同時に無くしてしまった記憶の欠片を取り戻すのだと。勿論、後から考えると馬鹿げた冒険心だった。
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親迎

2016-12-21 22:00:13 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『黄昏』を舞台に、『銀色』と『謎解き』と『芳香』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 いつの間にやら街に黄昏が蔓延る時間となっていたが、自分の記憶がどれだけ虫食い状態になっているかを初めて自覚した私は呆然とするばかりだった。だから再び部屋の扉が開いた時にもどうせ先生だろうと無視したが、次の瞬間に鼻腔が捉えた香りで反射的に顔を上げる。すると先生とよく似た顔をした男は笑顔で私に向かって手を差し出しながら、迎えに来たよと言った。
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喪服

2016-12-20 22:33:11 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『本の中』を舞台に、『爪痕』と『大皿』と『百合』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 しばらく放っておいてくれませんかと先生を追い出した私は、更に欠けた記憶を辿っていく。父さんが趣味で撮っていた沢山の写真は家が燃えた時に無くなったと思っていたが、実は先生が渡された分だけは残っていたのだ。写真と照らし合わせた記憶は次々と姿を失い、例えば百合を抱えた喪服姿にも覚えがない。と言うより、どう見ても両親と祖父母の葬式が行われた年頃の姿をした私のこの写真は一体誰が撮り、何故此処にあるのだろうか。
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鬱屈

2016-12-19 21:42:11 | 字書きさんにお題出してみったー
たかあきさん、『図書室』を舞台に、『茶碗』と『斜面』と『孤独』の内二つをテーマにして話を書いてみませんか。

 何を調べているか知らんがあまり根を詰めるな。
 そんなことを言いながら書斎に入ってきた先生が手にした盆には冷たいカルピスが乗っていた。けれど、小さい頃から私が好きだったものを先生が知っている事が今は酷く気に障った。この人に取って私は今でも、そして恐らくはこれからも小さな姪でしかない。もし先生に好きな女性が現れたら結局は二の次にされる、その程度の存在なのだとしか思えなかった。
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