カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

今日のお題は『群れ』『化粧品』『ランプ』です。

2014-04-30 20:15:46 | ついのべ三題ったーより
 古道具屋で購入したランプを磨いていたら、いかにもな格好の精霊が出て来て願いを言えと迫ってきた。とりあえず化粧品をはじめとする日用雑貨の買い物リストを渡したら不満を表明してきたので掃除機で吸って黙らせた。
 後日、掃除機内に溜まったゴミを捨てようとしたら、十円玉サイズに分裂した精霊が群れを成して現れ、口々に願いを言えと迫ってきた。
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今日のお題は『意識』『好き』『グラス』です。

2014-04-29 19:07:57 | ついのべ三題ったーより
 昔は意識を他の器物に移す遊びが好きだった。特に夏場ソーダ水の入った青色のグラスで体感する世界は、硬く澄んだガラスの肌で感じる冷たくてぱちぱちと弾ける泡が清々しくて極上の空間だった。ある日、そんな風に楽しんでいる際中、弟が勝手にグラスを倒して割ってしまった。 それ以来、僕は僕以外の物に意識を移すことが出来なくなったが、砕け散る自分の体から飛び散るソーダ水の感触と、奇妙に歪んで聞こえたけたたましい弟の泣き声は未だに忘れられない。
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今日のお題は『戦友』『名前』『男』です。

2014-04-28 21:29:25 | ついのべ三題ったーより
 スーパーロボット大戦やゴーカイジャーなど、別作品の戦士が戦友として手を取り合って戦に赴き、それぞれ名前を呼び合い必殺技を繰り出すのを見ていると、地球や世界を守ろうとする力がこれだけ存在していたのかと感動してしまう自分がいる。

 それにしても、こういうのは男の子向け作品でのみ成立する世界だろうか?スーパー魔女っ子対戦とかなら出来そうな気がするんだが。
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今日のお題は『銃弾』『一人』『ノイズ』です。

2014-04-27 22:27:37 | ついのべ三題ったーより
 かつてはこの国でも若者が革命を志し、強固な現実という壁の前に砕け散っていった。だが、ノイズに覆われた苦しみの多いこの世界は、実はたった一人でも終わらせる事が出来る。己のこめかみに一発の銃弾を撃ち込めば良いのだ、それで世界は砕け散る。

 などと宣言してきた同僚に、僕は取りあえず訊ねてみた。

「それで、銃はどこから調達するんだ?」
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今日のお題は『流行』『夏休み』『勇気』です。

2014-04-26 21:44:20 | ついのべ三題ったーより
 むかしむかし。母が住まれ育った田舎の川でまだ泳げた頃の夏休み。
 僕は街から祖父母の家に遊びに行き、近所の子たちと仲良くなり、勇気を示してみろと、まともに泳げもしないまま流行だった川流れに挑戦した。そして僕は浮輪に座ったままの姿で大人たちに救出されるまで数キロを流されることになった。
川流れが禁止され、街に帰った僕がさんざん恨まれたと言うのは次の年に知った。
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今日のお題は『頭痛』『緑』『菜の花』です。

2014-04-25 21:18:47 | ついのべ三題ったーより
 春は菜の花を喰らうものだと主張したところ、友人が頭痛にたえかねたような仕草で「お前には菜の花畑の美しさが判らないのか」と呆れられ、その素晴らしさを力説された。

 何でも小学生だった頃の遠足で、バスの窓から見える光景がちょうど♪菜の花畑に入り日薄れ、という唱歌そのものだったとき、綺麗なバスガイドさんがその『朧月夜』を歌ってくれたのが忘れられないのだそうだ。いろいろ突っ込みたいことはあったが戦争をする気はなかったので、取りあえず誘われるままに菜の花畑の見物に行った。

 そうしたら、とうに菜の花収獲の終わった畑が新たな緑色を育んでいた。

「来年また来るか」
「そうだな」
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今日のお題は『タルト』『老婆』『アメンボ』です。

2014-04-24 21:56:53 | ついのべ三題ったーより
 アメンボのような痩身の老婆は、今日も孫の為にタルトを焼く。苺、桃、葡萄、パイナップル、キウイ、マンゴーなど季節ごとに色彩豊かな果物で彩られたタルトは、しかし、彼女の本当の孫が食べる事はない。彼女を訪ねてくる人は、もう一人もいない。
 だから彼女はいつの間にやら出来ていた自宅壁にぽっかりと穿たれた虚(うろ)にタルトを一つずつ放り込むのだ。そこから聞こえる箍の外れた、しかし賑やかな笑い声を聴く為に。
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今日のお題は『勇気』『一人』『模様』です。

2014-04-23 21:21:02 | ついのべ三題ったーより
 雨模様の中、どうしても会いたいと言う彼女の望みを叶える為、僕は勇気を振り絞って外出の用意をした。昨今の酸性雨は本気で命に関わるというが、彼女が以前プレゼントしてくれた耐雨スーツを着用したので大丈夫だろう。
 そのスーツに欠陥があった事も、彼女に別の男がいた事も、僕は知らなかった。
 全ては、馬鹿だった僕の肉体が崩れ去る前の話。
 
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罪、そして沈黙

2014-04-19 21:50:16 | 即興小説トレーニング
 誰かが呼んでいる声が聞こえたような気がしたが、気のせいだと思い直す。
 そもそも、もう周りには誰もいない。みんな死んでしまった。殺されてしまった。

 世界に牙を剥いた時点で、結末は定められていたのだろう。だが、度重なる裏切りと喪失から来る絶望は彼が他の道に進むことを許さなかった。曰く、自分を変えられないなら世界を変えるしかない。
 もちろん狂気の沙汰だ。そして当然ながら世界はそれを許さなかった。
 悪質極まりないテロリスト、平和の破壊者、そんな風に呼ばれても仕方のないことを彼は彼の作り上げた息子たちとともに行ってきた。それについて弁明する気はない。

 再び誰かの声が聞こえてくる。しかし、それは既に意味を成さない音階の羅列としか彼の脳には認識できない。

 世界は必ずしも陽の当たる場所だけで構成されているわけではない。それ故、彼も闇世界における一定のルールを守れば存在を許された。だが、それがどれだけ脆い物であるのかを知ったとき、彼は全てを失っていた。残ったのは僅かな研究施設とデータ、そして彼の精神を灼き尽くそうとする負の感情だけだった。それ故、彼は手元に残った僅かなカードを駆使して世界に復讐を果たすと誓った。
 彼の存在を認めようとしなかった世界を、未来を、人類社会を蝕んでいく毒を生み出し、拡散させる。電脳世界におけるウイルスが高度にシステム化された社会にどれだけの害悪をもたらすかは言うまでもあるまい。そうして世界は立ち枯れるのだ。壊れてしまえば良い、滅んでしまえば良い。

 意味を成さない音階の羅列は、更に激しく響き渡る。相変わらず何を言っているのかは分からないが、ひどく悲しい響きだ。

 自分はもう狂っているのだろうと、彼は思った。ただ、それならいつから狂ってしまったのか、それが分からない。物心ついた頃には既に両親も親類縁者も周囲には存在せず、他人の中で育ちながら見つけた親友とは袂を分かつことになった。そのまま巡った世界各地では、自分自身を含めた人間の愚かさをたっぷりと味わい、今思えば自身の愚かさを引きずったまま世界に牙を剥き、幾多の戦いの末に全てを失った。ただ、後悔だけは首尾一貫して存在しない。彼は他に自分が進むべき道を知らなかったのだ。

 相当に体が弱っている筈の指でも全く速度が落ちぬタイピングで最後の仕上げを行うと、次の瞬間彼はおびただしい量のどす黒い血を今まで使っていたキーボードの上に吐き出し、そのまま崩れ落ちる。これで彼は全ての時間を使い果たし、代わりに世界のカウントダウンが始まったはずだった。

 薄れゆく意識の中で、彼は先ほどから自分を呼んでいるのが今はもうこの世界に存在しない息子たちの声であることを理解した。だが、相変わらず彼らが何を言っているかは分からず、その姿も朧のままだった。もしも息子たちが自分を迎えに来てくれたのだとしても、恐らく同じ場所に行くことは出来ないのだろうと思うと、彼は本当に久しぶりに泣きたくなった。だが既に声はおろか、涙の一滴も絞り出すことは出来ない。

 済まない、済まないと、彼は謝り続けた。世界の未来に対してではなく、息子たちのいる場所にすら行くことが出来ないことに対して。

 
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今日のお題は『時計』『書簡』『キャンディ』です。

2014-04-16 20:18:23 | ついのべ三題ったーより
 私が漫画好きだと知っている姪っ子から届いた書簡には「キャンディ☆キャンディ」という漫画を知っているか?面白いのか?とあった。
 流石に一回り以上歳が違うと、お互いに持っている時計の進み具合も違うものだと感心しつつ、小学生にあの作品が絶版になった経緯をどう説明したものかと本気で悩んだ。
 現実は、いつだって厳しい。
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