カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

とある蒐集家の棚より・灰とダイヤモンド

2017-12-30 08:44:12 | とある蒐集家の棚
たかあきは『星座盤』と『灰皿と吸い殻』に関する物語を創作してください。

 双子だった叔父さん同士はとても仲が良くて、病気だった下の叔父さんが死んだ時、僕が欲しかった金属製の星座盤は上の叔父さんのものになった。
 下の伯父さんから貰った星座盤を大事にするよと微笑んだ上の叔父さんは程なくして事故で死んだが、その時、星座盤は叔父さんの書斎で灰皿として使われていた。

 上の叔父さんがどうしてそんなことをしたのか判らぬまま、今、星座盤は僕のものとなっている。
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とある蒐集家の棚より・共振の記憶

2017-12-29 08:32:29 | とある蒐集家の棚
たかあきは『金属製のハンドベル』と『金属製のハンドベル』に関する物語を創作してください。

 大きめのハンドベルの隣には小さめのハンドベルが常に置いてあって、どちらか片方だけでも鳴らされると、もう一つもそれに併せるように澄んだ音を響かせるのだった。ある日、子供がこっそり小さめのハンドベルを家に持ち帰り、それを見付けた親と主に返しに来るまで、どちらのハンドベルも一切の音を鳴らさなくなった。
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とある蒐集家の棚より・それぞれの世界

2017-12-27 20:58:42 | とある蒐集家の棚
たかあきは『蝉の標本』と『アンモナイトの標本』に関する物語を創作してください。

 棚に並んだ蝉とアンモナイトの標本はお互いに仲が悪く、蝉が頭上一杯に広がる真夏の青い空と突き刺さるような陽光の素晴らしさを謳うと、アンモナイトは太古の暖かく緩やかな流れが支配する海底の平穏を主張する。当然だが彼らは己の知る世界だけが、生あるもの全てがいずれ戻るべき約束の場所だと信じて疑わない。
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とある蒐集家の棚より・夢見るアンモナイト

2017-12-26 21:06:03 | とある蒐集家の棚
たかあきは『アンモナイトの標本』と『メトロノーム』に関する物語を創作してください。

 貝は死んでしまったら貝殻という別の生き物に生まれ変わるのだと母は言った。そして海の底には貝殻たちが暮らす暖かな場所があって、そこで貝殻たちは昔と同じように規則正しくその年輪を刻んで大きくなっていき、やがて化石になるのだと。そうだったらどんなに良かっただろうと、母が死んだ今でも思う。
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とある蒐集家の棚より・水に咲く薔薇

2017-12-25 21:42:02 | とある蒐集家の棚
たかあきは『皿の上のコイン』と『押し花』に関する物語を創作してください。

 貯金箱から取り出したありったけの硬貨を数えてから強く握り締めて店に行った僕は、ずっと欲しかった紙で出来た平たくて青い花を買った。そのまま急いで家に帰ると、蓋の付いたガラス瓶に花を入れて瓶を水で満たしてから用心深く蓋をして逆さに置く。平たかった花がふっくら開くと、そこには青い薔薇の姿が現れた。
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とある蒐集家の棚より・金魚香

2017-12-24 20:59:44 | とある蒐集家の棚
たかあきは『お香』と『金魚鉢』に関する物語を創作してください。

 私の部屋にある金魚鉢は敷砂の代わりにお香立てが置かれていて、そこにお香を立てて火を灯すと、やがてほのかに色付いたお香色の煙が金魚の形となって鉢内を泳ぎ回るのだ。金魚はお香が燃え尽きると姿を崩してただの煙に戻るが、その間はお香の香りが部屋中を漂い不思議な気分にしてくれるのだった。
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とある蒐集家の棚より・青い秘密

2017-12-23 16:06:51 | とある蒐集家の棚
たかあきは『お守り』と『押し花』に関する物語を創作してください。

 青い花が好きだと言った私に、あの人は、空のように青い色をした花は珍しいんだよと笑いながらお守りをくれた。
 あの時はまさか、あの人が私を裏切って私の親友と死を選ぶなんて思いもしなかった。

 一人遺された私がお守りを思い切って開けて見ると、入っていたのは変色しかかった青い紫陽花の押し花。
 その花言葉は「あなたは冷たい」だ。
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とある蒐集家の棚より・冬虫夏草

2017-12-22 20:55:04 | とある蒐集家の棚
たかあきは『蝉の標本』と『皿の上のコイン』に関する物語を創作してください。

 庭の木の根元を掘っていたら、何だか得体の知れないものが生えた蝉の幼虫を見付けた。きっと冬虫夏草と呼ばれるアレだろうと思い、綺麗に洗って皿に乗せておいたら、いつの間にか一緒に載っていた硬貨に寄生して更に訳の判らない形になった。今度は何に寄生するだろうと楽しみにしていたら父さんが酷く真面目な表情で何処かに持って行き、そこで燃やされたらしい。
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とある蒐集家の棚より・銀河通信

2017-12-21 21:13:07 | とある蒐集家の棚
たかあきは『星座盤』と『黒電話』に関する物語を創作してください。

 その星座盤を回すと、たまに使われていない黒電話が鳴ることがあったので、ちょうど休暇に入って暇だった僕は黒電話の傍らでゆっくり星座盤を回し、ベル音が鳴ったら受話器を取る実験を繰り返した。その結果、特定の星座が窓に表示されると、対応するように星を打ち鳴らすような澄み渡った音が受話器から聞こえてくると分かった。
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とある蒐集家の棚より・ねこだまし

2017-12-20 20:42:20 | とある蒐集家の棚
たかあきは『消しゴム付き鉛筆』と『猫の置物』に関する物語を創作してください。

 僕が使っている鉛筆には消しゴム付きのキャップが嵌めてあって、鉛筆を使う毎に揺れる。机の側に置いた猫の置物はそれが気になるらしく、こっちが気付かないと思って前足を伸ばしたりするので、一度顔の前で大きく手を打ったら物凄い表情のまま固まってしまい、実は今もそのままの姿で飾られている。
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