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カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

竜飼いその46・もののあわれなり

2020-06-30 19:46:30 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は紫暗の共鳴トカゲモドキという品種名です。気性は冷酷で、用途は通勤用です。

 父の通勤竜は外見は完璧なのだが性格的に難しい所があって、何か気に入らないことがあると一歩も動かなくなる。いい加減下取りに出すことを考え始めた辺りでようやく竜が不運を回避しているらしいと気付いた父は方違えを行うことで事態を収拾しているらしいが、きちんと定時までに会社に辿り着けるのだろうか。

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骨董品に関する物語・ドイツの讃美歌集

2020-06-28 17:56:04 | 突発お題

 まだ幼い頃の娘が私の讃美歌集を欲しがった時、これはとても高価なものだから子供に無償ではあげられないのと答えた。すると娘は何処からか四つ葉のクローバーを見付けて来て、これは本に挟んでおくとお金に変わるから代金分が貯まったら売って欲しいと言い出した。結局四つ葉貯金は二枚で終わったが、明日嫁ぐ娘の持参金代わりに讃美歌集と一緒に渡そう。
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竜飼いその45・天翔ける撮影竜

2020-06-28 16:42:24 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は白銀の水晶ムカシトカゲという品種名です。気性はお利口で、用途は飛翔用です。

 うちの飛竜はカメラを装着させて上空から風景を撮影することが出来るが、俺の指示をかなり的確に理解した飛翔路を取るので撮影依頼人の受けがいい。ちなみに体色が氷塊を思わせる白銀色なのでそのまま飛翔させると虹色に輝いてとても綺麗なのだが、以前、未確認飛行物体として通報されてからは仕方なく迷彩柄に塗ってから飛ばしている。
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竜飼いその44・おくることば

2020-06-27 20:43:47 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は若緑の流水竜という品種名です。気性は冷酷で、用途は朗読役です。

 祖父が雇った朗読竜は美しい姿と澄んだ声で流れるように滔々と文章を読み上げるのを得意とする、一見すると完璧な朗読役だったが激烈なまでに愛想というものが無く、何とか距離を縮めようとする祖父に対しても極めて冷淡だった。だから実は祖父の葬式で弔辞を読み上げる竜が感情を制御できずに声を詰まらせるとは思ってもいなかった。
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竜飼いその43・黄金色の家政婦竜

2020-06-23 23:32:02 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は黄金色の鋼鉄ドラゴンという品種名です。気性は利発で、用途は家事手伝いです。

 事故で足を折り家の事が出来なくなったので、仕方なく家政婦を雇うことになったが、なるべく費用を安く上げようとしたら竜を紹介された。まだまだ竜を怖がる人間は多いので良い職場に就くにはある程度家政婦として働いた実績が必要なのだという。そんな理由で家に来た彼女だが、実は足が治った今でも俺の家で働いて貰っている。
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竜飼いその42・竜の瞳を持つ少年

2020-06-22 21:18:59 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は新緑の虚空ムカシトカゲという品種名です。気性は冷酷で、用途は仕事の相棒です。

 コイツはきっと大物になると言って親父が何処からか拾ってきた少年は、自分には竜の血が混じっていると言い張るだけあって、竜の鱗を思わせる緑の瞳を含めた外見の麗しさからは想像もつかない程に冷酷な気性の持ち主だった。それはやがて親父が対立組織に殺された時に遺憾なく発揮され、最終的に二つの組織は少年に屈することになった。
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竜飼いその41・焦げ茶色の運送竜は黒い陰謀を運ぶ

2020-06-21 15:02:46 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は焦茶色の烈火ムカシトカゲという品種名です。気性はお利口で、用途は運搬用です。

 俺の運送竜は飛べないが、移動の安定性が極めて高い歩法を習得しているので壊れ物の輸送に強い。嘗ては何処の運送屋からも断られたという好事家の蒐集品を傷一つ着けず目的地まで運び切った実績もある。だから荷物が壊れていたと文句が入った時は何の間違いだと思ったが、実際は運送のトラブルなどという問題よりも遥かに厄介な陰謀が絡んでいた。
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骨董品に関する物語・月のブローチ三点セット

2020-06-20 19:40:29 | 突発お題

 曾祖母は若い頃、三人の友人と永遠の友情を誓い合って記念のブローチを仕立てたという。三日月を意匠に選んだのは常に変わり続ける、しかし決して変わらないものという意味があったそうだが、三人が離れて別の人生を送る今も、金色の三日月はそれぞれの人生で輝いているのだろうか。
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骨董品に関する物語・バトン ドゥ マジシャン「魔法使いの杖」という名の香水瓶

2020-06-20 19:38:04 | 突発お題

 香りを纏うのは魂を憑依させることだと彼女は言った。それは舞台に登場する化粧や仮面が生み出す虚構の真実と同じく幻想世界に於ける本来の姿であり、故にその香りが消え去るまで彼女は彼女であって彼女ではないのだと。だから彼女は項に香水を吹き付け、今夜も奔放に振舞い続ける。
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竜飼いその40・うちに来た竜

2020-06-20 16:56:16 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は紫暗の流水オールドドラゴンという品種名です。気性は引っ込み思案で、用途はペットです。

 念願のペット飼育可能物件に引っ越したので、どうせなら保護竜譲渡会で飼い竜を探そうと参加した。その中でケージの隅に丸まったまま出てこない竜がいて、大人しいし他に飼い主が見つかりそうにないと思ってうちの子にした。なお、どうやら騙されたらしいと知ったのは、うちに連れて来るなり元気に力強く周辺の物をなぎ倒して駆け回りまくる勇姿を見た時だった。
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