アーク・フィールドブック

四万十フィールドガイド・ARK(アーク)のブログ

風と風とが出会うところ

2025-03-09 | ・最新のお知らせ・イベントなど

「風と風とが出会うところ 」2011年早春に書いた記事を再掲です。

 最高気温12度。

 「水と水とが出会うところは、風と風とが出会うところでもある」

まだ春浅い四万十川が僕に教えてくれたこと。

 

 早春のある日(3月9日)。

僕らは、カヌー(カナディアン)に・テーブル・イス・昼食・飲み物を積んで、リバーピクニックに出掛けました。

ひとあし早い春のおとずれを、水の上でも感じたくなったのです。

コースは、津大橋(西土佐網代)~口屋内沈下橋(口屋内村)まで。漕行11キロ。

 

 晴れた川は北風が強く、流れる雲が陽を隠せば、風の冷たさをヒシヒシと感じます。

カヌーを押しスバヤクのりこみ、少し波立つ水面にスイーッと滑りだす。

長靴をわすれた僕は、のりこむ時、うかつにも足を水にぬらしてしまいました。

「うーん、足がひやい・・・。でも、アタマのうえが広いのは、キブンがイイね!」

 

 久しぶりに水面から見渡す川景色は、とてもシンセンに感じられます。

カヌーの上から手を川に浸してみる。春先の水は、まだとても冷たく、20秒ほどで指先がいたくなってきます。

川面の水温は10度くらいか?やせた川の水の透明度は、まぁまぁといったところ。

 

 北風に押されながら、カヌーはゆっくりと川を下ってゆきます。

早春の川岸をいろどるのは、芽吹きたてのヤナギ(春告げ木)の萌葱。菜の花の黄。

あと10日ほどでサクラも咲きはじめれば、まだハダカの落葉樹の芽もつぎつぎとほころぶでしょう。

じこじこと色が増えてゆく春の岸べ。僕らは、明るい春を漕いでゆく。

ガラガラ。ん?音のした方をみる、と白いお尻をふりふりシカが斜面を登っていきました。

 

 6キロほど下って川原に上陸、ランチタイムです。 

メニューは・パン(リエイロさん、サンキュー)・シチュー・コーヒー。

時折ごうごうと吠える風にテーブルごと川に吹き飛ばされそうになり、ややアセル。

昼食後、再びカヌーに乗りこんで出発!口屋内沈下橋まで、あと5キロ。

 

「風と風とが出会うところ 」*拡大すると画像が粗くなります。

 

 「むかい風がきつくなったにゃー」前部漕者の平塚さん。

「きついっすねぇー」後部漕者の僕がこたえる。

もうすぐゴールの口屋内沈下橋。

その手前の長いとろ場の途中で、トツゼン風向きが南にかわってしまいました。

それまでは北風が、僕らの背中とカヌーをぐいぐいと下流に押してくれてたのに。

 

 キツイむかい風にぐらつくカヌー。平塚さんが右ナナメ前方を指差して言う。

「あそこに黒尊の谷があるろ、この向かい風は、黒尊の谷を吹き抜けてきた強い風が

本流にでて対岸の山にあたる。そこで分かれた風の一方が上流(かみ)に吹きつけてるんよ」

四万十川の支流黒尊川の水は、口屋内村で四万十川本流の水に合流しています。

「水と水とが出会うところは、そうか、風と風とが出会うところでもあるんだ・・・」

そんな小さな発見を、僕は少し嬉しく思いました。

 

 ゴール手前のきつい向い風のとろ場を、

わっせわっせと漕ぎ、午後のはやい時間に、口屋内沈下橋にブジ到着。

ふと見上げた川岸には、フジツツジの花も咲きはじめていました。

 

*平塚さん:シマムタ共游国(レンタルカヌー)

*とろ場:水の流れがゆるいところ

*タイトルは、レイモンド・カーヴァー詩集「水と水とが出会うところ」より 

 

カナディアンで、春の四万十川を下るのもおススメですよ。

後部を漕ぐ(わりに手元が忙しい)自信のない方、一人参加の方、ガイドが後部を漕いで下りますよ。ぜひ!

*前部のシートに座り、カメラで春景色をバシバシ撮りながら、コーヒを飲みながら、下れます。


レターフロムS11 春の海脱線バナシに花が咲き

2025-03-09 | レターフロムS

「春の海脱線バナシに花が咲き」レターフロムS11 再掲です

 早春の陽光きらめく3月半ば。

今シーズンの「アーク・シーカヤックツアー」。その下見で、足摺の海を漕いできました。

車にタンデムのシーカヤックを積み、我が家を出発!

30分ほど南へ走り、中村市内を抜け、R321サニーロードでさらに南へ。土佐清水足摺港を目指す。

 

 左は土佐湾の蒼い海。

明るい春の陽射しとぬくい風が心地イイ、窓を全開にしてのんびりと走る。

海辺の景色がよく、信号も交通量も少ないサニーロードは、気持ちの良いドライブ&ツーリングが楽しめる。

カーステレオから流れるのは、イーグルスの「Take It Easy」。ゴキゲンだね。

 

 道沿いのヤシャブシが、もう芽吹き始めてる。

四万十川沿いでは、やっとヤナギが芽吹き始めたというのに。

冬の土佐清水は、中村よりも気温が2度程高くぬくいのだ、ということに納得。

チャリに荷物を積んだ学生達を何組も追いぬいてゆく。

足摺の岬の先端には、四国八十八ヶ所巡りの金剛福寺があり、国道沿いを歩くお遍路さんの姿も多い。

歩いてゆくお遍路さんに僕は、年上の友人アントニオとふう(大型犬:ロットワイラー)のコトを思い出す。


2021年1月18日。アントニオ(僧侶 望月崇英)は、逝去いたしました。

 

銀座で托鉢 震災犠牲者を弔い続けた僧侶 新型コロナで突然の死 <あの日から・東日本大震災10年>:東京新聞 TOKYO Web

東京・銀座で托鉢(たくはつ)を続け、東日本大震災の被災地で死者を弔い続けた一人の僧侶が、新型コロナウイルス感染症で亡くなった。66歳。...

東京新聞 TOKYO Web

 

 一昨年の夏。

アントニオは、愛犬「ふう」と荷物を我が家にあずけ、1ヵ月半かけてお遍路さんルートを歩いた。

僕は、1ヵ月半も大好きな「ふう」と暮らし、遊べ、とても楽しかったし、

お遍路さんを終えたアントニオの話は、めちゃめちゃオモシロイものであった。

・ものすごい大金持ちの、会社社長お遍路さんと知り合った話。

・会社をリストラされ、借金に悩み、死のうと思って四国に来たが、

でも、ふと気づくと、もう4周もお遍路ルートを歩いてるお遍路さんの話。

・お遍路さんを接待してくれる、やさしい人々の好意を悪用する、悪徳お遍路の話など・・・

 

 アントニオは、ARK(アーク)の名付け親でもある。

屋号を決めかねていた僕は、彼に相談した。

すると、当時、米軍基地で働きながら坊さんになるために修行中だった彼は言った。

「ARKがいいんじゃないのー!佐野さん。サンスクリット語で、まあカンタンに言うと、

すべての生命の始まりを意味する言葉だよ。ちなみに、ノアの箱舟の名前がNoah of arkだったと思うよ」

鼓膜にビンビンと響くでっかい声で 教えてくれた。

「ARKかぁー」

僕には、大き過ぎ立派すぎる屋号だ、と戸惑うが、

「佐野さーん。名前は育てて行くものだからダイジョーブだよ!」といわれARKに決定した。

なにがダイジョーブなのか、いまいちよくわからないけど・・・

でも、なんか困ったことや、つらくて落ちこんでいるときは、

アントニオの「ダイジョーブだよ!佐野さん」の一言で元気になってしまう。

ホント不思議な人だ。

 

 話が脱線してますが・・・脱線ついでにもう少しアントニオ(一応日本人)の事を書いちゃいます。

僕が彼に初めてあったのは、四万十に移住する前に勤めていたフィールドワーカーを養成する専門学校。

その実習場がある長野県黒姫だった。

夏の盛り、実習場のミーティングルームで彼を紹介された(ふうも一緒に)。

日に焼けたシワだらけの顔は、彫りが深くまるでネイティブアメリカン。

その顔をクシャクシャとさせて、ニカニカ笑いながら「よろしくー!」と挨拶された。

僕はその時、直感で「この人はなんだか絶対、オモシロアヤシイぞ!」と思った。

いつもひょうひょうとしジョークばかり言ってる彼は、自分の事はあまり喋らない。

けど、仕事&プライベートで付き合っているうちに、そのユニークな経歴がだんだんわかってきた。

 

           

    ふうとアントニオ                サンキュー!ブラザー

 

 ブラックミュージックをこよなく愛する彼は、

本場アメリカでミュージシャンになろうと、大学をやめ、まずはハワイにわたる。

その後、ニューヨークへ。音楽活動&いろいろな仕事をしながら約20年NYで暮らす。

その間に、オートバイの冒険家と知り合い、冒険家の北極、南極、ヒマラヤ、パリダカールなどの遠征に同行する。

僕が彼に出遭った時は、もうニューヨークを 引き上げようか?という時期であった。

 

 アントニオはなにかの専門家ではない。

けれど、冒険家はいろいろな制約(予算や人選など)があるにもかかわらず、

チームの一員として(専門外の)彼を極地に連れて行く。

その理由は、(肩書きなんかじゃわからない)彼に触れた人にだけわかる、不思議な魅力のせいだろうと思う。

 

 アントニオ&ふうと山や渓流釣りに行き、キャンプをするのは最高に楽しかった。

釣った魚を焼き、焚き火をかこみながら彼が話す、NY時代や極地遠征した時の楽しかった話や悲惨な話の数々。

それは、一冊のオモシロ本が書けそうなくらい魅力的なものだった。

「若きの日に旅をせずば、老いての日になにをか語る」。僕は、ゲーテ(だったかな)の言葉を思い出す』

 

        

       海の駅

 

 さて、この辺で話をぐぃーんと元に戻してと・・・

土佐清水足摺港にある海の駅で僕は、「マリンショップ・シーサークル」の三谷さんと落ち合った。

三谷さんには、シーカャックのインストラクターとしてお世話になったり、

アークの「シーカヤックツアー」に協力してもらっている。

 

 今年の4月8日で、足摺~高知のフェリーが休止(先だって、佐伯~宿毛フェリーが休止になったというのに!)。

しかし、足摺~高知のフェリーが休止になったおかげで、

今までフェリーの発着場とし使用してきた海の駅の建物の

一角をシーサークルが、ダイビング&シーカャックの施設として使用出来るコトに。

海の駅ベースで・シーカヤックを使った湾内の体験コース・湾外コースなどのメニューが行えるようになった。

今回は、「湾外・キャンプ1泊ツアー」のコースを2人で漕ぐ。

*その後、佐伯~宿毛フェリーは、04年12月15日~再開が決定。パチパチ!

         

    ひさしぶりの海にわくわく          春の海をゆく

 

 海の駅を見学し終えた僕らは、駅の少し西にある港からタンデムカヤックで出発!

水と簡単な食料をつんだ2人艇、前を三谷さん、僕が後ろを漕ぐ。

出発すると、おだやかだった波が、やや高くなってきた。

海の水の透明度はよく、浅いところでは珊瑚がクッキリと見える。

水温19度。西の風。

 

 晴れわたる春の空、みわたす限りの大海原、まるみをおびた水平線。

でっかい空と海の景色をゆけば、気持ちもノビノビとしてくる。

いつもは、山に囲まれ、空がちいさい川を漕いでいる身には。

「そういえば、あのジョン万次郎の数奇な冒険人生は、この海からはじまったんだよなー」

 

 潮やコースタイムを確認しながら西へすすみ、千尋崎の先端をまわりこんだ。

高くなってきた波、複雑な潮の流れに注意し、岬の先端をまわる時は少しだけ気合を入れて漕いだ。

岬をまわり込むと波はおだやかになり、風や波によって浸食された奇岩が見えてきた。

休憩のため千尋崎のビーチに上陸。森に囲まれた小さな湾、小さな砂浜。

海の水は透明で、珊瑚の間をあざやかなブルーの小さな魚が泳ぎまわっている。

夢のように美しい場所に、おんちゃんが2人・・・似合わないのだ。

 

 そこからさらにもう1漕ぎし、弁天島の右側の砂浜に上陸。

砂浜を上がったところが、爪白キャンプ場(竜串)。ツアーはここでキャンプ泊。

芝生のキャンプ場を囲むのは、小さな岬をめぐる遊歩道。シュノーケリングに適したキレイな海。

訪れる人も少なく、静かだ(なにしろ遠いからねぇ)。料金も1泊350円と安い(シャワー有り)。

この爪白キャンプ場は、僕のお気に入りのキャンプ場。

竜串の海が気に入った僕は、ひと夏テントを張って過ごしたことも(四万十川のほとりに移住する前)。

 

 この春イチバン静かで美しい海。

ツアーのゲストにも、気にいってもらえる海とコースだ、と思えた春の海の下見なのでした。

 

       

   キレイやねぇ・・・            静かで美しい海辺         

 

*ARKのシーカャックキャンプツアーは、ツアー初日の朝、海の駅に集合。

基本的には千尋崎を回るコースを漕ぎ、途中で休憩&シューケリング。

爪白キャンプ場にテントを張りキャンプ(漕行約7~8キロ)。

夕食は近くの竜串荘で、「飲み放題食べほーだい」を利用。

翌日は弁天島上陸、もしくは近くでシュノーケリングか海遊びで過ごし、昼過ぎに解散(予定)です。

 

*荒天の時、千尋崎の先端の海の状況が悪いときには若干のコースの変更があります。

*料金は 大人1人 22000円(保険 ガイド料 カャック&キャンプ道具込み)

*シュノーケル3点セットは別料金でレンタルできます。

このツアーは5月半ば以降~利用できます(要予約)。

*現在、このツアーはおこなっていません(リクエストがあれば検討しますが)。